アマン、ガマン、ゲロッポのお話 3
その夜はガマンの棲み家の岩穴の中で眠ることにしました。
ガマンが虫や小さな「へびいちご」を捕ってきてくれました。大きな岩の窪みから夜のお空が見えています。お空にいっぱいのお星様が輝いてとっても素晴らしいながめでした。
『僕、水中雨蛙のガマン。よろしくな』『あたし、アマガエルのアマン。ひとりぽっちなの、ごめんね』。二匹のアマガエルはお互いのことを話しました。夜の岩陰で一晩中話していたのです。お月様が隠れて、星もお山の向こう側に落ちて行きました。そのうち太陽が山の反対側からゆっくりと顔を出してきます。 アマンちゃん
『アマン、森を越えて田んぼに行こうよ』『田んぼ?こわい・・・わたし』『こわくないさ。そこにトノサマガエルのゲロッポ小父さんが棲んでいるんだ』『ゲロッポ小父さんって?』。
『大人のトノサマガエルさ。とっても良い方だよ』『行ってみようかしら』。二匹のアマガエルは川を泳いで岸にはい上がり、そして緑の森を越えて進んで行きました。しばらくすると広々とした田んぼが見える小高い場所にやって来ました。
トノサマガエルのゲロッポさん
『アマン、向こうに水車小屋が見えるだろう』『水車小屋って?』『ほら大きな木で出来た輪っぱのような、あれさ』『アマン、初めて見たわ。とってもきれいなお水が流れているわ』『あの水車のそばにゲロッポ小父さんは住んでいるのだよ』『ワア〜すごい!とってもきれいなところね』。
その頃、トノサマガエルのゲロッポは朝の食事をしていました。水車のそばに飛んでくる、ハエや蚊を食べていたのです。『ゲロッポさん、お早うございます』『おお、その声は水中アマガエルのガマン君じゃないか?』『はい、ガマンです』『こんなに朝早くから一体どうしたのだ?』。
ガマンは昨日、川の中でアマガエルのアマンを助けたこと、そして今朝早く森を越えてここにやってきた事を話しました。『この子がアマガエルのアマンです』。そう言ってガマンはゲロッポさんにアマンを紹介してくれました。
ゲロッポさんは、アマンとガマンを水車小屋に招き入れました。大きな石の壺(つぼ)のような物があって、水車の廻るのと同時に太い木で出来た杵(きね)のような物がドスンドスンと降りたり上がったりしています。
何とも言えない香ばしい匂いが小屋一杯に漂っています。入り口付近にはとってもきれいな水が流れ、スミレの花が咲き、芹(せり・注1)が揺れているのです。
ゲロッポさんが言いました。『お前達お腹が空いているのだろう』ガマンもアマンも朝から川を泳ぎ、森を越えてここゲロッポさんの棲む水車小屋までやってきたので、お腹がグ〜、グ〜と鳴っていたのです。
ゲロッポさんはその音を聞いていました。そして二匹のアマガエルに小さなアブ(注・2)のようなものを与えました。ガマンはいつも水辺に飛んでいるカゲロウなどを食べています。アマンはというと、小さな蚊やブヨしか食べた事がなかったので、アブには驚いたのでした。
大きな灰色をした目がにらんでいるようで、いくらお腹が空いていてもすぐに食べることが出来なかったのでした。
注1:<セリ(芹)>
これは春にめぶく草です。春の七草の一つです。皆さんは食べたことはありませんか? いいかおりがする草です。春の小川にゆれているセリをみたら、「可愛い」と思ってきっと好きになるでしょう。小さな白い花が咲きますよ。
注2:<アブ(虻)>
これはハエのなかまの昆虫です。人間の腕などにとまって血をすったりするのもいますから、気をつけて下さい。
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