2012年3月11日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ ・言葉のアーカイブス<標高307m>

アマン、ガマン、ゲロッポのお話 5

『粉挽き爺(じい)さんがくるぞ、わたしの棲み家に来ていなさい』。ゲロッポ小父さんが粉挽き爺さんと呼んでいるのは、この水車小屋の持ち主のお爺さんなのです。


今日は朝から野良仕事をしていて、これからこの水車小屋でゴットンゴットンと搗(つ)いているお蕎麦(そば)の粉を袋に詰めるようです。ゲロッポさんはこのお蕎麦の粉がとっても良い香りがするので、お爺さんが袋に詰めるのをいつも待っているのです。

そしてお爺さんが帰ったあとで、少しこぼれたその粉をちょっぴり舐(な)めるのが楽しみでした。今日はこの粉を、アマンとガマンにも舐めさせてくれるのです。

水車小屋の木の戸が開きました。サ〜ッと冷たい空気と一緒に太陽の光が差し込んできました。スミレの花の香りも一緒に連れてきていました。さっき生まれたばかりの「あかねちゃん」が、もう小屋の周りを飛んでいるのが見えています。

ひらり、フワリと自由自在にお空を飛び回るのをアマンはじっと、うらやましそうに見つめていました。


ミヤマアカネ(あかねちゃん)です こんにちは!


外はもう夕方になっていました。さっきまで働いていた粉挽き爺さんも、ソバ粉を袋に詰めては、荷車に積みこんでそして長いクワを担(かつ)いで帰って行きました。怖(こわ)いような長い長い影を引きずりながら・・・。

ガマンがそっと耳元で言いました。

『今夜はゲロッポ小父さんちに泊めてもらおうよ。アマン、いいかい?』『私はいいけど、小父さんは?』『僕聞いてくるよ、ちょっと待っといで』。そう言ってガマンはゲロッポさんのところに行ってしまいました。
アマンはひとりぼっちで、睡蓮の花のそばで待っていました。その時、後ろの方でガサゴソと変な音がしました。昨日アマンを食べに来た、恐ろしい青大将がやってきたのでしょうか?

アマンは睡蓮の葉の裏にそっと隠れました。水辺の葉っぱを揺らせながら長い耳がピンと伸びているのが見えています。灰色のとっても柔らかそうなビロードのお耳でした。耳が森の方に向いたかと思うと、今度は水車小屋の方に傾きました。

そこには赤い目をした小さな野ウサギ(注:1)が座っていました。キョロキョロと辺りを見回して、アマンのいる睡蓮の花の横で小さなお口を小川につけるようにして水を飲んでいます。もう少しでアマンの体にウサギさんの長いひげが当たるようでした。

その時アマンの目とウサギさんの目があったのです。『こんにちは』。とアマンは恐る恐る言いました。ウサギさんは少し驚いて飲んでいたお水を吹き出しました。『こんにちは、ゴホゴホグ〜』。ちょっと喉を詰まらせながら答えました。



勉強のお部屋(注:1)<野ウサギ>

皆さんはウサギさんのことは良く知っていますね。そうです、お耳の長い、目の赤い、足の速いそしてちょっとひょうきんなお顔のお口に、歯が二本伸びていますね。あの歯で木の実などの堅いからを割って食べるのですよ。茶色や灰色の柔らかい毛がとってもあったかそう。

日本の野や山に生活しているウサギはノウサギ類と言います。アナウサギと違って巣穴を掘らずに生活もしますよ。生まれたばかりの赤ん坊はもう眼が開いて、柔らかい毛が生えて歩くことも出来るのですよ。

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