2012年3月9日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ ・言葉のアーカイブス<標高305m>

アマン、ガマン、ゲロッポのお話 4

アマンとガマンはその日、トノサマガエルのゲロッポさんの棲む水車小屋の横を流れる小川に来ていました。沢山のお花が咲いて蜜蜂(ミツバチ)たちがブンブンと羽音をたてながら、花から花へと飛び回っています。お花の甘い蜜を吸っているのです。


近くの水辺では、睡蓮(すいれん・注1)の葉にきれいなトンボがとまっているのが見えました。それは今生まれたばかりのミヤマアカネの赤ちゃんでした。

みなさんは「ミヤマアカネ」を知っていますか?アカトンボの中で一番美しいトンボと言われています。でも最近「あかねちゃん」は私達の周りからだんだんいなくなっているのです。
私達の周りが、「あかねちゃん」が棲(す)めないような環境になってしまったのかも・・・。

「あかねちゃん」は、四枚の羽根の先が褐色の帯で飾られています。今生まれたばかりの「あかねちゃん」は、ちょっと乳(ミルク)色をした羽根を、いっしょけんめい動かせています。

初夏の風と太陽が、その羽根をだんだんと透明な色に変えてくれます。そうして「あかねちゃん」は赤ちゃんから幼稚園の子供のように育っていくのです。睡蓮(すいれん)おばさんに、優しく、じっと見守られながら・・・

『お〜い、お前たちあまり深いところには行くなよ』。と、ゲロッポ小父さんの声が聞こえました。水車小屋に水をくみ上げる小川ですが、そこには深い場所も、流れの速いところも、渦がグルグルと巻いているこわ〜い吸い込まれそうなところもあるのでした。

ガマン君が小さなカゲロウを捕まえて、食べてしまいました。アマンは今まで葉っぱの上で、小さなアリさんや蚊を食べた事はありました。その時ガマン君がまた捕まえたカゲロウをアマンにもくれました。

スミレの花の上にその虫はそっとのっかっています。細い足、長い触覚、薄い水色の羽根。か弱い体ですが、とっても美しいのでした。その時、カゲロウの触覚がぴくっと動きました。なんとまだ生きていたのです。



アマンは驚きました。近づいていた顔を離して後ずさりをしました。アマンは口からピュッと水てっぽうのように水滴をカゲロウにかけました。


カゲロウはその冷たい水滴に驚いて、気絶していた体をぷるっとふるわせました。そして風にのってふわっと飛び上がったのです。細い透明の羽根を動かせて、アマンの背中にそっととまりました。

アマンはカゲロウのとっても柔らかい羽根で体をなでられて、ちょっぴり眠くなってくるようでした。それはカゲロウさんがお礼を言っているようでした。その時ゲロッポ小父さんの呼ぶ声が聞こえてきました。

<すいれん(睡蓮:注 1)>

皆さんはハス(蓮)を知っていますか? ハスとすいれんの違いは、その葉にあります。ハスの葉には切れ込みがありませんが、すいれんの葉にはカニさんのツメのような切れ込みがあります。ハスと違うもう一つは、水を弾くハスの葉と違ってすいれんの葉は水を弾きません。どちらもきれいな花が咲きますよ。

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