2012年11月13日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 4 <標高491m>



北の地方ではもう雪が降ってストーブの暖かさが部屋の中で睡魔を誘っていることでしょう。神戸海岸通り旧居留地 煉瓦路西入る、ここ『ジャズパブ維摩』にもいよいよ北風の吹く季節がやって来ました。

そろそろ街では、歳末商戦が始まる頃になった。神戸の街ではあのいまわしい阪神淡路大震災の後、傷ついた人々の心の癒しと、速やかなる復興を願って、『ルミナリエ』が始められた。この時期、光のシャワーの中を歩む人々は五百万人を越える。この『ルミナリエ』は年末の神戸の街によく似合っていて素晴らしい。

そしてクリスマスがやってくる。大震災で壊れていた、神戸大教会も来年には再建されクリスマスのミサはさぞ荘厳にして、信者の皆様の歓びで包まれる事でしょう。『維摩』のある旧居留地は、繁華街から少し離れているのでその賑わいは直接伝わっては来ない。船の汽笛と、霧が流れていく囁きのような波動が部屋の隙間から忍び込んでくるだけである。

チロチロと青白い炎を上げながら燃える薪の火に、厳しい冬の訪れを感じて、ホットウヰスキーに浮かべたチョウジの香りが脳細胞の一つ一つに酒精を運んで来る。今日は12月24日、クリスマスイブである。朝から北の六甲連山には雲が厚くかかって、冷たい六甲おろしが元町からこの煉瓦路までビルの間の風道を吹き下ろしてくる。

ジャモウはストーブの横で、眠ったままウンともスンとも言わない。そんな午後、冷たい風に押されるかのようにドアーが開いて、作務衣姿の庵主様が入って来られた。その瞬間、ジャモウの耳はピンと立ち、長い髭が震えた。そしてもう起きあがっている。

『いらっしゃいませ、今日はお早いですね』『ああ、ちょっと用事があってね。途中寄り道をしておった』『外はお寒いでしょう?』『いっしゅはん、今夜はまっこと雪になるぜよ』。庵主様は、父方が四国高知の出であるとの事で会話の中に土佐弁が混じることもままあるのだ。

『ホワイトクリスマスを迎えるわけですね』『ずいぶん昔のことじゃが、学生の頃あれは原田の森の上筒井学舎でのイブの礼拝、懐かしい良い時代じゃったな』。そう言いながら、庵主様は膝をなめ回しているジャモウを撫でている。まるで自分の孫をいたわるかのようにである。

『寒いよ〜〜、ううさむ』。と大きな声でドアーを開けたのは、ハヤマさん事、疾風真麻さんである。『いらっしゃい、どうしたのこんな時間に』『阪急六甲の近くの孤児院で今夜クリスマス会なの』『へえ〜、ハヤマさんえらいんだ』『あっ、今晩は庵主様、お久しぶりです。毎年の事なんですよ』 と疾風真麻は、ほっぺたを真っ赤にして子供のように笑った。優しさと清らかさを兼ね備えた素敵な女性である。今夜その孤児院でクリスマス劇を上演するのだと言う。

『いっしゅうさん、今夜の劇、ネコが出るんだけどジャモウ借りれないかしら?』『ジャモウを!そらあかんわ、こんなグウタラ猫、なんの役に立つかいな』『そうお・・駄目え?ジャモウ君だめだってよ!』 とジャモウの耳元で話す。

『ワイも孤児やで、なにするのか知らんけど、なんな様なら行ったろか』と言っているのだが、それは誰にも聞こえない。『いっしゅうさん、ジャモウまんざらでもない顔しとるぜよ』『庵主様そんなん、わかるんですか?うっそう〜』 と大げさな身振りは、ハヤマさん一流の宝塚バージョンである。


Imagined by Jun

2012年11月12日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・森の友人を訪ねて <標高490m>

【信越国境を越えて】


JR信越本線の妙高高原駅を越えて少し走るともうそこは長野県に入る ここは『国境の街』である むかし東海林太郎の歌った歌に出てくる『凍り付くよな国境(くにざかい)』なのであります
ブルーベリーや野菜作りのボクの師匠 S氏の友人で 一人森の中に住んでキノコの栽培をしているW氏を訪ねました


約1000坪の敷地はクヌギ、ミズナラ、ほうの木、柳、落葉松などで覆われています ここらで冬は4mの雪が積もりますから W氏は12月には新潟市内の実家に帰って行きます
とても山道には車も人も入れないからです













その日は雨上がりの朝でした 『こちらに来て下さい』とのW氏の案内で森を歩きますと 倒木にたくさんのナメコが出ているではありませんか 『一雨の後のナメコは ほらこんなに美しいのです まるで宝石のように光って』とW氏

ナイフを借りて一つづつ丁寧に切り取っていきます 少し根を残しておくとまた出てくるとのことでした
なかなか手に入らない新鮮ナメコを沢山頂いてきました 丹波の黒豆仕立ての味噌を使ったみそ汁に入れて食べましたがその『ぬるしこ感覚』は一生忘れる事の無い美味さでした 日本の国って良いですね〜 しみじみそう思いましたよ

(庵主の日時計日記:自然と私)より

2012年11月11日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・妙高高原混声合唱団定期演奏会 <標高489m>

【妙高高原混声合唱団定期演奏会 第2部報告】

第2部はゲストによるピアノ演奏より始まりました
古川 真侑さんによる 
1.『ピアノのために』より「プレリュード」 作曲:ドビュッシー
2.『無言歌集』作品19-1 「甘い思い出」    作曲:メンデルスゾーン

古川 彩音さんによる
1.『星の伝説』「オルフェウス」       作曲:古川 彩音
2.『ロマンス』変二長調 作品24-9       作曲:シベリウス

古川 奏音さんによる
1.『あの空の彼方へ』                             作曲:古川 奏音
2.『アラベスク』ハ長調 作品18         作曲:シューマン

ピアノ連弾 古川 彩音 奏音さんによる
〜ラフマニノフ〜 連弾のための6つの小品  作品11より
1.『スケルツ
2.『スラヴ


妙高高原混声合唱団の当日披露した歌曲
指揮:古川  郁   ピアノ:池田 祐子
第1部
1.峠の我が家          アメリカ民謡
2.むかしむかし         作曲:不明
3.『リボンの歌』〜オーロラ〜  作曲:黒沢 吉徳
4.合唱組曲 くびき野より「春」 作曲:富澤 裕
5.県民の歌より「故郷の春」   作曲:岩河 三郎

第2部
混声合唱組曲 「母の手」より
1.たんぽぽ           作曲:大田 桜子 作詞:星野 富弘
2.いのち
3.母の手
4.木のように

ご来場の皆様のご支援とご協力を得て 今年も定期演奏会を開く事が出来ました 団員一同心より感謝申し上げます
これからも皆様に喜んでいただけるよう頑張ります なにとぞ宜しくお願い致します 雪のシーズンが始まります どうかお体を大切に又のお目もじを楽しみに致しております

2012年11月10日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 3 <標高488m>


世の中、以前に比べて住みにくくなったというのが、ここに来る連中のトータルな意見であります。中でも『庵主様』、月に二、三度顔を見せるが、何をして生活しているのかは誰も知らない。本人がよく『年金生活者の我々は』、などと枕詞を使うので、みんなそう思っているだけで本当のところは未だに誰にもわからないのです。

今夜も7時半を過ぎた頃でした。杖をついてふらりと入って来ました。『庵主様こんばんは』とハヤマさんが挨拶をしている。『どうされたのですか?杖なんか持って』『アホ、杖じゃなか、マウンテンストック! ん〜ん これでもドイツ、レキ社の優れ物じゃで』『杖とどう違うんですか?』『杖はただの棒じゃ、これはシャフトの中に、スプリングが仕込んであって、歩いていて、疲れがうんと少ないのじゃ』

『ああ、山に登る人が持ってるあれ?』『そうじゃ、ワシにとっては、階段も坂道も山みたいなものじゃよ、まったく』。

『庵主様、お元気でしたか?』『いっしゅうさん、元気でしたよ、気持だけはね』『その後お体はどうなんです?』『はい、小康状態を保っとります』『そりゃ、まずまずですね。お寒いからお風邪にはご注意を』。
庵主様はおしぼりを手に取って額のあたりを拭いておられる。

『なに差し上げましょ』『ジンをもらおか』『どうなさいます』『ストレートで』。
『ええ〜っ、ジンストですか?』『そや、パンストとは違いまっせ』『いややわ、庵主様』。ジャモウがムクッと起きあがって、庵主様の膝のところに近寄って行く。じゃれつくように、体を擦りつけている。庵主様の紺色の作務衣がジャモウのヨダレで濡れて光っている。

『こらジャモウ!』と私が叱るが、離れない。それもその筈、庵主様のお家にも猫がいるらしい。それは本物のシャムネコらしいのだ。それも血統書付きの雌猫。ジャモウがじゃれつくのも、無理はない。そんな時・・・

『じゃまするぜ』と一人の男。ヤンピー(山羊皮)のブルゾン、白いマフラーを小粋にまいて、革の長靴を履いている。カウンターの隅に腰掛けておもむろにタバコに火を付けた。私はメル・トーメの『ナイト・アンド・デイ』をピックアップした。
『ようこそ、お酒は?』『ビールを』『領事館ビールでよろしいでしょうか?』『いいな』。余りしゃべらないニヒルな雰囲気である。ジャモウはもう庵主様の雌猫の臭いをかいだのか、安心してまどろんでいる。ダッチウエストの優れものが、良い火を揺らしている。

『失礼ですが、こちらの方ではございませんね』『ああ、気仙沼です』『遠いところから、ようこそ。庵主様、こちらの方、気仙沼からお越しだそうで』『ほう、そうですか。こんばんは、私も昔、気仙沼に二年ほどおりましたよ・・・良いところでした』。

庵主様がそう言った時、その男の顔に一瞬、なにか分からないが、戸惑いの影のようなものが過(よ)ぎった。その男はそれ以上しゃべる事なくビールを飲み、タバコを吸っている。ジャモウがのっそりと起きあがり、背を伸ばして弓反ると、おもむろにその男の傍に近寄っていく。ジャモウは人見知りが激しく、そう簡単には人間に寄りつかないのだが・・・。

特に三味線屋の辰兄いの傍へは、全くと言っていい程である。それは殺されていった三毛猫の断末魔の叫び声が彼には聞こえるとでも言うのだろうか。ところが庵主様には、まるで猫がアケビに酔うように擦り寄っていく。シャムの雌猫は絶大なる影響力を発揮するものである。その時のジャモウは、発情している事さえあった。それを見て、疾風真麻さんは、『キャー』といって赤面したのであった。

『お前そんな、年か!?』と言って辰兄いが揶揄した。ジャモウは、いつまでも庵主様の膝を離れなかった。私は、庵主様こそ日々その雌猫を『猫かわいがり』しているのだろうと思った。いやはやまことに霧に包まれたようなお人である。

白マフラーの男は、ジャモウを気にもかけず飲んでいる。私は明石蛸の薄造りとわさび醤油を酒の肴に出してみた。男はそれをじっと見ていたが、舌の上にのせて大きく頷いた。小一時間ほどいただろうか、金を置くと軽く会釈をして逃げる様に出て行ってしまった。

さあ、ちょっと人生の裏街道を歩いているような、こわもてのお兄さんが登場です。庵主様と気仙沼の関係は?その白マフラーの男の引きずっている影とは?『ジャズパブ 維摩』に港町神戸のクリスマスが近づいています。



2012年11月9日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・妙高高原混声合唱団定期演奏会 <標高487m>


【 第33回 妙高高原混声合唱団定期演奏会第1部のご報告 】

『妙高高原音楽の夕べ』と題して 混声合唱団の定期演奏会が11月8日 妙高高原支所にて夜6時30分より開催されました
午後から雲も切れ 暖かい日差しが周りの紅葉を一層際立たせていました 今回は賛助出演として男声合唱 メイル・クワイア 3 1/2の皆様方と 私どもの合唱団指揮者 古川 郁先生のご令嬢 三姉妹によるピアノ演奏が素晴らしい華を添えて下さいました 心より感謝申し上げます


妙高高原支所より遥か妙高山を眺めますと 谷筋には雪が積もりいよいよ本格的な冬の到来を感じる夕方でした


第一部は混声合唱団の出演で幕を開けました 平日の夜にもかかわらず多くの方々のご来場を得 厳しかった練習の苦労も吹き飛んでしまいました
各パートの持ち味を生かして精一杯歌ったつもりですが果たして如何だったでしょうか?

メイル・クワイア3 1/2         指揮:福田 伊治

1. いざ起て戦人よ       作曲:グラナハム  作詞:藤井 泰一朗
2. 里の秋           作曲:海沼 実   作詞:斉藤 信夫
3. 男声合唱組曲「旅」より 旅立つ日(アカペラ)作曲:佐藤 眞 作詞:田中清光
4. からたちの花        作曲:山田耕筰   作詞:北原 白秋
5. バイカル湖のほとり ロシア民謡 訳詞:中央合唱団 編曲:小山 章三
6. アヴエ・マリア   公教会祈祷文(ラテン語) 作曲:アルカデルト
 
男声4部合唱 メイル・クワイア3 1/2の演奏は 重厚なハーモニーに聴くもの全てが痺れたことでした 混声合唱とはひと味もふた味も違ったハーモニーの素晴らしさに酔いしれました 友情出演まことに有り難うございました

次回は第2部のご報告をアップする予定です
(庵主の日時計日記:歓びの発見)より

2012年11月7日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・JR大阪駅周辺 <標高486m>

【生まれ変わったJR大阪駅】

阪急電車 大阪梅田駅からJR大阪駅に広がる一大商業エリアは素晴らしい景観に生まれ変わっていました
従来からある大丸百貨店の近くには三越伊勢丹が進出していました。人気のルクア大阪 ヒルトンプラザウエストや阪神百貨店 ヨドバシカメラなども元気いっぱいでしたよ


センスの良い店が並んだ回廊を歩いてJR大阪駅の方に向かいますそこにはアトリウム広場や時空の広場が訪れた人たちに非日常の世界を提供してくれるのです まさにサプライズの連続でした



JR大阪駅をまたぐように大阪ステーションシテイーがあります イベントが開催出来る空間と ライブショーなどの舞台もあり中心にはカフェテリアが出来ていました



JR大阪駅を見下ろすかたちで レストランの野外席に座ってみました ひっきりなしに出入りする列車や電車を眺めていると 乗降客ひとりひとりの行動が 人生の『一瞬の今』を切り取っているかのような『厳粛な営み』に感じられたものでした 

(庵主の日時計日記:歓びの発見)より

2012年11月5日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 2 <標高485m>


『いっしゅはん』、辰兄いは私の事をこのように呼ぶ。『ジャモウはいつ来てもワイには懐きよらんな』『そらそうやろ、三味線屋ちゅうの、よう知っとるさかいな』と私。『せやかて、こいつは三毛とはちゃうで』『三味線ちゅうのは、シャムではあかんのかいな?』『あきまへんな。三味線の胴には三毛がピカ一や、それも雌の腹の皮でっせ』。

ジャモウは二人の会話に耳をピクピク動かしながら聞いていたが、どうやら安心したのか眠りについたらしい。クヌギの薪束の上に小さな毛布を敷いてもらって彼はシシリーの港町の夢でもみているのだろうか。
『いっしゅはん、デーク・エリントンのA列車で行こう頼むわ』。彼のお気に入りの一曲である。ジャモウがうっすらと目を開けて、『またか』というような仕草をしたが、辰つあんは気付いていない。

『酒は?』『ハイボールやってんか』私が準備する間にいつものパイプを取り出して、もうくゆらしている。ジャモウは不思議と煙草の匂いは嫌がらない。それよりも、まとわりついてくる煙を追う仕草さえ見せる。
ひょっとしたらシシリーの港のバーもこんな感じだったのではと、あらぬ幻想を抱いて私は一人頷くのである。

Good Evening.ハ〜イ』と言いながら、薔薇の花束を持って入ってきたのは、自称タカラジェンヌ『疾風真麻』(はやかぜ まお)さんである。『いっしゅうさん、こんばんは。あれもうやってんの、辰兄い』『悪かったなあ、ハヤマさん』。辰兄いは疾風さんの事をこう呼んでいる。
『は〜い、マスター。プ・レ・ゼ・ン・ト』。と言って、深紅の薔薇を恭しく差し出す。まるで、ヴルサイユの薔薇の芝居のようにである。『メルシ、オスカル・ジェルジュ』とすかさず辰兄いが受ける。
三人が揃って笑ったものだから、ジャモウが驚いて頭を擡げてこちらを見た。『ごめんね、ジャモウちゃん。ほら君にもおみやよ』。と言ってハヤマさんは、ポケットからビーフジャーキーを取り出して鼻先に持って行く。

ハイボールが出来たところで、ハヤマさんは辰兄いにもジャーキーを渡す。『おおきに、しゃあけんどワイは猫と一緒かいな』『辰つあん、猫と仲良うしいや。来世の事もあるんやで』『いっしゅはん、怖いこと言っこなしや』。いつの間にか『A列車で行こう』が終わって、また維摩に優しい、静けさが戻ってきていた。

疾風さんは、なにか台本のようなものを取り出して読んでいる。辰兄いは、パイプのボウルの中をダンパーで押さえながら、競馬の出馬表に赤鉛筆を走らせている。私はドアーを少し開けて煉瓦路を眺めた。

暗い路地に街灯がポツンと一つ灯っている。潮の香りとともに、船の汽笛が聞こえて来る。明日も天気だろうと勝手に決めて店に戻った。ジャモウはまだ、ジャーキーにじゃれついている。

二人目のお客さん登場。疾風真麻さん、いい娘ですよ。是非一度会いにいらして下さいよ。ああ、その時、ビーフジャーキーをお忘れ無く。皆さん今日も一日ご安全に。維摩(ゆいま)、主人敬白。