2012年4月20日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ ・言葉のアーカイブス <標高331m>

アマン・ガマン・ゲロッポのお話 14

イモリの奥ちゃんは、この近くに住むリンゴ農園の淳爺(じゅんじい)がお庭の池で飼っているのですが、今日はお天気が良いので、細い水路を泳いでここバイカモの揺れる水辺のリリーパッドにやってきたのでした。

淳爺のところに来たのは、今からもう17年も前のことでした。その頃はまだイモリの赤ちゃんでした。山の奥にある小さな滝に棲んでいたのです。

大水がでた明くる日、そのイモリは滝の底の方からそばの砂山にほうり出されたのでした。良い気持ちで日向ぼっこをしていたイモリをヤマメ釣りにきていた淳爺がひょいとつまみ上げて、腰に下げた魚籠(びく)(注1)に入れました。

こうしてイモリの赤ちゃんは、淳爺に連れて帰られお庭の池に放されたのでした。淳爺は山の奥で捕まえたので、イモリの奥ちゃんと呼んで可愛がってくれました。

そうしてもう17年が経ったのです。小指の先ほどのイモリの赤ちゃんも今では、なんと15㎝をこえるような立派な大人のイモリに生長したのです。自分ひとりだけでどこにでも行けるようになりました。この前は水路を泳いで、ゲロッポさんちの水車小屋にも行ってきたのです。

いまイモリの奥ちゃんは、アマンやガマンをじっとながめていました。お友達になりたいな〜と思っていたのです。それもそのはず、イモリとカエルは同じ仲間なのですから。

勉強の部屋:(注1)魚籠(びく)

「びく」とは釣ったり捕まえた魚を入れておく籠(かご)のことです。昔の人はこれを竹であんで作りました。なぜ竹で作ったかと言うと、竹は風通しが良く、中の魚が傷んだり腐(くさ)ったりするのが防げたからです。色んな形の「びく」が作られてきました。そして今では竹でそれらを作る人(職人さん)が少なくなってきました。現在は、山梨県や岐阜県、岡山県で細々と作られています。



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