『にちこんわ、アケオメ』
なんかよく分からない挨拶をして入って来たのは、自称株式請負人こと、浜ちゃん。辰兄いが特別に最敬礼をしている。という事は浜ちゃんの指南が功を奏したのだろうか。
『辰っあん、あの会社化けましたやろ』『お蔭さんで、あんな事になるとはな〜』と、辰兄い。皆さんも覚えておいでかどうか、『日本皮革なんちゃらかんちゃら』ちゅう会社。そや、あの三毛猫の毛皮扱うとる、そうです、そうでおます、ジャモウの大嫌いな会社です。
『そんでどれくらい儲けましてん』
と浜ちゃん。『一本や』と辰兄い、『へ〜立派なもんや、俺なんざ、自慢や無いけど年がら年中潜水艦や』。彼らの符丁で、潜水艦、水面下。しょっちゅう波の底、沈みっぱなし、赤字ちゅう事です。
『浜ちゃん、ところであの雪女その後どうなったんや?』と私。『ああ、あのイブの大雪の夜、ここを二人で出ましたな』『三宮まで行けたんかいな?』『だいぶ積もってましたから大変でしたわ。なんとか駅前通りまでたどり着いて』『そりゃ良かった』『電車乗って花隈まで行きましてん』『そんで?』『雪女が寒いちゅうもんやから、ホテル・エレガンシアにそのまま』『ええんかいな・・・』『もうどこでも良かったんですは。きつい雪で』『そうか、ほんで、どうなってん』。興味津々であった。もっと話聞こうと思った時、あの白マフラーの男がドアーを開けた。
『今日からですか、いいですか?』『いらっしゃい。お久しぶり』と私。去年の年末やってきた時腰掛けた場所に座る。『どうです、薦被りでも』『有り難う、じゃ一杯』。
そう言って男は桝に口を付けた。
しばらくして白マフラーの男は一枚の写真を取りだした。『マスター、最近こんな女見かけないかな?』。
なんとその写真は、昨年のイブの夜、倒れるようにして入ってきた「雪女」に相違ない。しかし私はその事について、今はなにも触れなかった。
この白マフラーの男は、確か気仙沼から来たと言っていた。そうするとあの「雪女」も気仙沼と関係があるのだろうか。あのイブの夜、「雪女」の腕に残っていた血の痕と関係があるのだろうか。ひょっとして浜ちゃんが何か知っているかも知れない。後で聞いてみようと思っていたが、年始の慌ただしさの中で忘れてしまっていた。
正月の七日、『維摩』は殊の外賑やか。近くの中華街からも、シュウマイやブタマンを蒸す時のなんとも言えん、ええ匂いがしてきます。
この日は土曜日、すぐ近くの日本中央競馬会の場外馬券売り場(ウインズ)も大勢の人で混雑していたようで。この後やってきました新在家甲六師匠、えらいニコニコ顔で、『どなたはんも、おめでとさんです。今年もよろしゅう』
と最敬礼。手には中華街で仕入れた包みをどっさり抱えている。
どうやら競馬が当たったような。辰兄いの『株』、甲六師匠の『馬券』。なんとも目出度い年の初めではありました。ではまた後日。
みんな楽しそう。おいら、ジャモケマール(ジャモウ語でお腹が空いたよ)
ジャモウに何かが起こりそうな年初でありました。
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