2013年1月11日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 17 <標高530m>



さて今日の綺麗どころは、「お雪」さん。服を持っていないとかで、私が近くの百貨店に連れて行って一応一揃えのハイキングの洋装を整えた。

頭にすみれ色のスカーフをしつらえた彼女は、まるでアルルの娘のようであった。その美しさに見とれたのは、株屋の「浜ちゃん」でありました。どうやら彼は、「お雪」さんに、ほの字のようです。去年のイブの夜がそうさせたのかも知れなかったのです。

ただ、あの晩の二人は綺麗な関係であったのは「雪女」から直接聞いていたから確かであろう。そうなると、「浜ちゃん」のプラトニックラブになる。いずれにしても今年は春から縁起が良い。

庵主様とジャモウを乗せて、大きな四駆は今海岸通りを出発して行った。私たち一行は、それぞれリュックを背負い、バッグを肩に掛けビール、酒、焼酎、ウヰスキーを忍ばせて修法が原へ向けて歩き出したのでありました。持ち寄りの食材は、庵主様の車が運んで行きました。

普段運動していない私などは三十分も歩かないうちにもう息が切れて、休憩する体たらく。辰兄いなどは、休憩をいいことにもうビールを飲んでいる始末。

さすが女性は元気である。ハヤマさん、お雪さんも足取りはしっかりしている。体にピッタリのスラックスが老いた私の目にさえも刺激が強い。甲六師匠も、浜ちゃんもきっとそうに違いないと思って二人を見ると、もうワンカップをあけて飲んでいます。果たして現地までたどり着けますやら。

そうこうする内に大きな池が見えて来ました。修法が原に到着です。桜はまだ三分咲きか。沢山の家族連れや、会社の花見客がもう早くからブルーシートを敷き詰めて一等場所を確保しています。

先に行った庵主様一行が、池がよく見える桜の木の傍に座っています。ジャモウは庵主様のお膝の中でなにやら銜えているような。そう、ジャーキーをもらってご機嫌である。全員揃ったところで乾杯をした。神戸奥座敷の修法が原には春風が流れて、それはそれは気持ちの良いお天気でありました。

 今日は、長屋の花見です。みんなそれぞれ食べ物、飲み物は持ち寄りです。ちょっとその中味を覗いてみましょうか。まず辰兄い、ここは奥さんがなかなか料理上手ときている。三段重ねのお重がデンと置かれています。

中にはカマボコ、玉子の厚焼き、椎茸煮、きずしなどがビッシリと入っている。もう一つのお重には、バラ寿司。上に錦糸玉子がまんべんなくふりかかっていてなんとも春らしい。もう一つのお重はなんと、赤飯。さすが辰兄いの奥さん、実家が京都の料理屋をしていただけの事があります。

落語家の新在家甲六師匠は、なんとサンドイッチ。そりゃ独身であればやむを得まい。ただお酒の肴に、『いかなご』のクギ煮とはさすが神戸の生まれ。ここいらでは早春の声を聞く頃、淡路島周辺でとれる、小さな『いかなご』を甘辛く煮詰めるクギ煮が有名である。神戸地方の名物でしょう。各家庭でそれぞれ秘伝のたき方があるようです。

この季節、クギ煮を肴に、『にごり酒』を飲むのはまさに春をそのまま飲み干す様で、関西地方に生活をしていて喜びを感じるひと時である。株屋の浜ちゃんはと言うと、大きな入れ物に一杯の『おでん』をご持参。

一緒に住んでいる年寄りのお婆さんが作ってくれたとか。彼の母親ではないとの事。そこらへんは良く判らない。でも何くれと無く浜ちゃんの世話をしてくれているとかで両親のどちらかの母親であろう。マホービンに熱いお酒を入れてきたのも、婆さんのお世話らしい。

さて疾風真麻さんはというと、やはりそこは若い女性。野菜サラダをたっぷりとご持参。それにフルーツなどもあしらえて結構ヘルシーであります。そしてお酒は、ワインときております。

『維摩』のチイママ、お雪さんはさすが気仙沼のお女(ひと)。どこで手に入れたのか、気仙沼の地酒『喜祥』。気仙沼名物『ふかひれ風松前漬』『粒ウニいか』など、神戸では味わえない選りすぐりを持参。

これにはマスターの私も驚いた。『維摩』にも是非置いておきたい逸品ではありました。まだまだ沢山の美味い物、おいしいお酒が並ぶことでしょう。


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