アマン・ガマン・ゲロッポのお話 19
『ガマン君、ホロップさんのお家は遠いの?』『そうだな〜、あの太陽があっちの山の大きな木にさしかかる頃に着くくらいかな』。アマガエルたちには時計などありません。
だからこんな見方になるのでしょうね。『それじゃあ、ガマン君のお腹が二回グウッ〜となった時ね』『なんだよ、そのお腹のグウッ〜というのはさ?』
『ガマン君のおなかは朝起きた時、必ず一度鳴るは。そしてお昼に二度目。夕方になった時に三度目のグウッ〜が聞こえるの』アマンはそう言ってケロコロロと笑いました。ガマン君は恥ずかしそうに頭に手をやっています。こうして二匹のアマガエルたちは、森の奥、ホロップ(野ウサギ)さんの樅(もみ)の木のお家を目指したのです。
周りはすっかり冬の景色でした。山の上は雪で真っ白です。でもアマガエルたちは水の中に入り、泳ぎ、また歩いて、山の大きな木の上に太陽がさしかかったころ大きな樅の木の家の前までやってきたのでした。
その樅の木はびっくりするほど背が高く、周囲は向こうが見えないくらい太く、大きかったのです。横に張り出している長い枝には、樅の木とはちがった草や木が生えているのでした。その木の年齢は、アマンやガマン君のお爺さんの又お爺さん、そのまたお爺さんの年齢よりもずっと老人でした。
よく見ると木の根っこにぽっかりと穴が空いています。ここがどうやら入り口らしいのです。ガマン君がおそるおそる中を覗(のぞ)いています。でも中は真っ暗でした。しばらくすると、ガマン君の目がその真っ暗になれてきました。
『こんにちは、だれかいませんか?』『ホロップさん、こんにちは』。アマンも穴の中にむかって大きな声で呼びかけました。
その時、奥の方からノソリノソノソと出てきたのは、ホロップさんのお父さんウサギのようでした。腰のあたりに手を当てて、少ししんどそうでした。ゲロッポ小父さんが言っていた、あの台風の日の出来事で腰を痛めたのでしょう。
『こんにちは、ボク水中アマガエルのガマンと言います』『私はアマンです。ホロップさんとはお友達です』『私はパグです。ホロップは今、木の実を掘りに出掛けとるよ。もうすぐ帰ってくるじゃろうよ』。とお父さんウサギのパグさんは言いました。
『そこは寒いじゃろう、さあ早く中に入りなさい』そう言ってパグさんは腰に手を当てながら奥に入って行きます。アマンとガマンもその後をついてピョコピョコと入っていったのです。
その家は広い部屋がいくつもありました。暖かいワラが敷き詰めてある部屋。沢山の木の実が置いてある倉庫のような場所。奥には大木の幹から自然に流れ出ている水飲み場のある部屋などでした。
この木のてっぺんには、ふくろうのチャバさん一家が棲んでいるのです。かすかにチャバさんの鳴く『ホッホホッホ』という声が聞こえています。なんだかまるでお伽(とぎ)の国、ファンタジーの世界(注:1)に迷い込んだかのようでした。
澄んだ水の流れている部屋にアマンとガマンは案内されました。この樅の木に降った雨が木の幹を伝って流れて落ちてくるのです。この部屋はその水が集まってまるで泉のようにあふれているのでした。
勉強の部屋 :ファンタジーの世界(注:1)
わかりやすい言葉で言うと、空想的な世界とか素晴らしい夢のような世界といった意味でしょうね。まあお伽噺(おとぎばなし)や、メルヘン(童話)の世界と言ってもいいでしょうね。と言うことは、この「アマン・ガマン・ゲロッポのお話」もファンタジックな世界なのですよ。