2012年5月30日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・言葉のアーカイブス <標高361m>


アマン・ガマン・ゲロッポのお話 28

その時ツバサ君の大きな目が一瞬きらっと光りました。雲の中に何かをとらえたようです。ガマンにはまだ何も見えていませんでした。



『アッ、あれはコットンさんだ!』『ツバサ君、アマンも見える?』とガマンが叫んでいます。ガマンには、まだアマンの姿は見えませんでした。ガマンの目から涙がいっぱい流れました。アマンが死んでしまった。あの大好きなアマンが・・・・。

その時ツバサ君が羽根を大きく拡げて、コットンさんに居場所を教えています。遠くからその様子を見つけたコットンさんは、空のかなたから一気に、谷間目掛けて急降下しました。

コットンさんが近づいて来るにつれて、何かを足につかんでいるのが見えました。小さな手と足が風の中でヒラヒラしているのが段々大きくなってきます。やがてそれがアマンだと分かるところまできた時、ガマン君は飛び上がって『やった〜!!』と叫んだのです。

アマンはもう何がなんだか分かりませんでした。コットンさんの足の水かきがうまく風をよけてくれました。そしてやっとの事で谷間の安全な木の枝に連れて帰ってもらったのです。『コットンさん、ありがとう』アマンは泣きながらお礼を言いました。ガマンも一緒になって泣いています。

ツバサ君ももう少しであの凄い風に巻き込まれて、空のはるかに上の方まで飛ばされてしまうところでした。大きな目がまだクルクルと回っていました。

『さあ、樅の木まで帰ろう!』とコットンさんが言いました。『アマンとガマンは私の背中に乗りなさい。そしてツバサは私の後に付いてくるんだ』。白雁のコットンさんは、まるでグライダーが空中を滑っているように悠然(ゆうぜん)と飛んで行くのでした。

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