2011年7月26日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・リーフノベルズ <標高90m>


【夢と現(うつつ)は紙一重】その.1

ここは一体どこなんだろう。車でやってきたが道がだんだん狭くなってくる。ちょっとした山の中の感じやないかいな。

『ねえ、大丈夫?変な所へきたようよ』と横に乗っている由美がのたまう。『わかっとる!わしも来とうて来とるんやないで、走っとたら勝手に来てもたんやないか』『そやけど、ナビ付いとんのとちゃうの』『ナビかて分からん事もあるんや。こんなやいこしい道、ナビにもないで』と意味不明な会話が続く。

そうこうする内に、拓けた場所に出た。下界が遥か彼方に広がっている。

『ちょっとあんた、あれ梅田とちゃうん?』『あっ、ほんまや、あれ大丸や』『ほなここは・・・、方向からすると宝塚沿線やね』『ああ、そうや。あすこ見てみ、あれ今造ってる中山寺の納骨堂やないか?』『うわあ、綺麗やね。極彩色やわ』

なんで中山寺なんでしょう。まして納骨堂? まあ、まだ生きておりますからそこいらに入る予定はないのですが、どうもその辺が良くわかりません。

『ちょっとあんた、あすこ見て』と由美が指でさし示す。『なんや?あのマンションかいな』『そう、あの横が森になってて、静かな格好ええマンションやね』『それがどしたん』『ううん、ちょっと言うてみただけ』『なんやいな、奥歯に物の挟まったような言い方しいないな』『あんなマンションに住めたらええのに・・と思て、ちょっと』『住んだらええやないか。そやけど空いてるやろか、とりあえず見にいてみよか』

そう言って山を下ってやって来たのです。まるでヨーロッパにあるような感じの町の一角にそのマンションは建っているのです。

「アプルーゼ・夢」とエンブレムがはめ込まれています。入り口にオーナーの連絡先が書いて貼ってあります。早速電話を入れてみました。上品な女性の声で用件を尋ねられました。

『ちょっとこのマンションを見せてほしいのですが・・・』『はい、ようこそいらっしゃいました。すぐそちらにまいります』と返事があって五分ほどしたら、大きなベンツに乗ったオーナー夫婦がやってきたのです。

『このマンション空いていますか?』『はい、ちょうど一戸だけ空いているのですよ』『あの三階の南の角、一番見晴らしが良く、静かなお部屋です』由美はそれを聞いて顔を紅潮させています。

『見せて頂けますか?』『はい、どうぞこちらへ』オーナーに案内されて二人はその部屋のドアーを開けた。京阪神が一望、海まで見えています。心地よい風が頬を掠めて流れてきます。周りは森の木々に取り囲まれていて新鮮な空気が殊の外美味しいのです。

『あんた、ここに決めよ。うちもう感動やわ』『そんな事すぐに決められるかいな、資金もいるねんで』『そんなんどっちゃでもええやん、うちもう決めた!』『オーナーさん、この物件おいくらで?』と、おそるおそる聞いてみた。


(大阪弁で読むリーフノベルズ、次回のアップをお楽しみに)

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