2011年7月27日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・リーフノベルズ <標高91m>

【夢と現(うつつ)は紙一重】その. 2




『そうですね、まあ一番良いお部屋ですので500万円でいかがですか?』『500万円?一桁違ごてんのとちゃいますか?』『それでいいんです。最後の一部屋ですから、なあお前』と奥さんに言う。『どうぞ良かったらお買い求め下さい』

『ほな、すぐ契約させてもらいますわ』と私。なにか不安だったが、オーナーがそれで良いと言うのだから、即手続きとなった。今日からでも入れるとの事で、寝具も新品が一揃え残っているのを使わせていただけるとの有難い話。

電気、ガス、水道もスタンバイOK。キー手渡してオーナー夫妻は帰って行った。私達二人はまるでキツネに摘まれているかのような気分で、取りあえず大きなリビングのソフアーに座り込んだ。

『おい、そこの冷蔵庫開けてみ、なにか入ってるかも知れへんで』『ほんまや、あんた、ビールもお酒も、なんや色んなものが入ってるしい』『ビール出しいな、明日にでもオーナーにお金払うたらええやろ』そう言って二人は、取りあえず乾杯をしたのでした。

『こんな事てあるのやろか?』夕暮れ時を告げる中山寺の梵鐘が聞こえています。そんなこんなで「アプルーゼ・夢」は、静かな第一夜を迎えました。
  
道に迷ってやっとの事でたどり着いたここ中山寺周辺。瀟洒なマンション「アプルーゼ・夢」を購入して、気が付いたらもう入居している。テーブルには世界のチーズや贅沢なデリカッセンが並び、ビールやお酒、ワインまで揃っているのだ。

一体どうしたというのだ。マンションを購入して落ち着いた生活をしたいと思ってはいたが、こんな形で実現するなんてまるで『夢』のようです。

『由美、そやけどこの部屋ちょっと変なにおいがせえへんか?』『どんな?うち鼻弱いよってよう分からへん』

『なんか、獣の出す臭いのような・・・』ビールや酒が回ってきたのか、頭が朦朧として本当に良い心持ちになってきた。広いガラス窓の向こうには京阪神の夜景がまるで宝石を散りばめたかのようにきらきらと輝きながら瞬いているのです。

『おい、風呂湧かせよ』『なんかもう湧いているようよ』『そんな事ないやろ。勝手に風呂がわくか?』『せやけどもう出来てますわ』『冷蔵庫と言い、風呂と言い、このなにかプ〜ンとする獣の臭いと言い、ちょっと変やと思わんか?』

『別に、快適やないの。お風呂、ひょっとしたら時間が来れば自動的に段取りするのとちいますか?最近のオール電化方式というのがありますやろ』そう説明されると私の疑問も薄れてしまって、早速風呂に入ったのでした。

大きなお風呂場、湯船も男が足を伸ばして入っても十分な広さ。電話もある、大きなガラスがはめ込まれていて、ここからも夜景が一望。中山寺の『納骨堂』がライトに浮かび上がって妖艶な雰囲気を醸し出しています。

お風呂場には、微かな音ではあるがBGMまで流れている。耳を傾けてみたら、『しょじょ寺のタヌキ囃子』が聞こえてくる。温泉のような良い気持ちのお風呂につかってちょっと眠くなってきました。ふとガラスの向こうを見た時、なにか『獣』のような大きな何物かが動いたようでした。

(大阪弁で読むリーフノベルズ、次回で幕です)

2 件のコメント:

  1.  お早うございます

    昨日 今日と 読ませて頂きました。

    佳境です。・・・・明日は やめとうこうかな??。

    何となく 怖い 寒気がします。

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  2. 星の王子 様

    いつもお立ち寄りいただき心より感謝申し上げます。

    主に妙高高原の自然を写真と共にアップさせていただいていますが、そろそろ小説や随筆、「言葉のアーカイブス」と題して過去に発表した作品なども改稿し加筆して発表していこうと思っています。

    肩の凝らない「面白よたばなし」にお付き合いいただければこの上ない喜びであります。ではまた。

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