【流一平氏北欧に飛ぶ】
レイキャヴィーク発:2008.7.7 PM 9:00 Midnight-sun(白夜)
アイスランドに来て困ったと言おうか、驚いたことが一つあります。それは物価やタクシーを始めとする料金がものすごく高いという事でした。日本の東京並かひょっとするとそれ以上でしょうか。
ここの通貨は、アイスランドクローナです。為替レートは 1クローナ=約1.4円(当時)です。夕食をホテルでとろうとして、注文したら8,600クローネの請求でした。ざっと12,000円ですか。特にどうって事のない料理でしたがね。
今夜のマドモアゼル吉岡はなんとも素敵なバッグを持っておられる。先程から気になって仕方がありません。『先生、今夜のバッグ素敵ですね。いつものとはまた違った・・・』。『一平さん、おわかりになる?嬉しい』。『でもそれって、なんだか伝統工芸のバッグのようですね、日本製でしょう?』。『そうよ、私のお友達でこのお仕事をしている方がいらっしゃってね、別註でお願いしていたのが先日出来上がったの、それで今日・・・』
その女性用バッグは、印 傳(いんでん)といって、甲州、山梨県の誇る四百年の伝統を持つ貴重な文化財産だそうです。この名前の由来は、印度伝来を略して印伝となったと伝えられているのです。特徴は、柔らかくて強い鹿革に漆(ウルシ)で模様をつけていく、これが印伝技法のひとつだそうです。まずしっとり感と滑らかさ、そして強靭さを秘めた、これこそ『日本』を持っていると実感されるGoodsの一つだそうです。先生はフランスに生活されていて、多くのブランド物の超一流品は見たり、お持ちになったりしておられますが、そこはやはり日本人なのでしょう。
トラディショナル(伝統的)な逸品はしっかりとお持ちになられるようです。それにしても今テーブルの上にさりげなく置かれている「印 傳」のバッグ、ウオーターカラー地に白色で細かいトンボの図柄。無数のトンボが乱舞している様を一つ一つ手描きで創り上げている。
そのバッグのまわりには、微かに日本の山々を駆け回っている野生の鹿の匂いがする。谷川の水音、木々の間をすり抜けて行く風の囁きすら聞こえてくるようです。
お隣のテーブルに腰掛けている老夫婦もそれを時々眺めてなにか話しています。細かい精巧な手仕事、匠の技に感じておられるようです。
今、夜の9時をまわりましたが、まだ空には明るさが残っています。先生と私は海岸縁のレストランに食事をとりに出かける事に致しました。
真っ白いパンタレオーネ、ネイビーシルクの風遭(かぜあい)のジャケット、そして水の上を乱舞するトンボたちをデザインした印 傳のバッグ。まるでタカラジェンヌが今レイキャヴィークに立っているような錯覚すら覚える今夜のマドモアゼル吉岡でありました。
『先生、明日のご予定は?』と私は海に話しかけるように先生に聞いてみました。それほど彼女はこの海浜レストランによくとけ込んでおられるのです。『一平さん、どこか連れて行って下さる?』『そりゃ、もちろん。どこがいいですか?』『せっかくのアイスランドじゃない、温泉がいいわ』。『温泉ですか、では海のような露天風呂は如何でしょうか?』『海のような・・か、行ってみたいわ』
『じゃあ、明日行ってみましょう。そこはブルーラグーンという温泉です。とっても広い、世界でも有数の大きな露天風呂とでも言いましょうか』。『それ、男女混浴です・・・か・・?』。『もちろんそうですよ、でもご心配には及びません。そこは水着を着て入る温泉ですよ』。マドモアゼル・吉岡は、にっこりとはにかむように笑ったのです。
先生は少しお酒が入って、目鼻立ちの整った顔に赤みがさしています。明日の時間を打ち合わせた二人は先程のホテル・レイキャヴィーク・セントラムに戻ってきていました。今夜はここが宿泊場所なのです。まだ外は少し残照が漂っています。明日の先生との温泉行が楽しみな流一平です。
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