【バック・トウ・ザ・パースト(時を戻して)】第2回
日本旅行協会 『旅』一月号、昭和七年一月一日発行を読みながら。「バック・トウ・ザ・パースト(時を戻して)」
ここで、この日本旅行協会「旅」誌の編集長だと思うが、佐藤生氏の「年頭偶感」なる巻頭言を紐解いてみましょう。今から80年前の文章です。
昭和6年も惶(あわただ)しく暮れて、昭和7年を迎へることになった。何はさて置き、明けましてお目出度う御座います・・・・・と吉例の御挨拶を申し上げます。
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新しい年を迎えるといふことは、何かなしに、喜び度い氣持ちで、いっぱいになるものである。そして、お互いに、今年こそは・・・・といった氣持ちを抱くであろうと思ふ。商人なれば、不景気が何アんだの今年こそは・・・・であり、百姓なら、一反歩十俵の収穫をあげて見せるゾの今年こそは・・・・であるかもしれぬ。
と、同じことが旅行者にも言へよう。昨年は妙高、赤倉で滑らずにしまった。が、今年こそは・・・・であるかも知れぬ。
兎に角、年新なると共に、何かなし一つの希望を持つといふことは、決して惡からう筈はない。お正月を寝て暮らすも、ウィンター・スポーツを味って暮らすも、去りゆく日数に變わりはない。
とすれば、ナーニ寝正月だったヨ、といって挨拶をすることよりは、ほんの僅かな暇を見出して、それ相當のスキー場へでも出かけて雪と親しんでスキーを滑って来るなんぞは、気のきいた「愉快に正月を送る法」であると共に、尠(すく)なくとも、一張羅の羽織を失くしても、折(オリ)だけ大切に下げて帰る・・・・あの酔ひどれの錯覺は起こさずに濟むと思ふ。(佐藤生)
(庵主の一言)
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