それから数日後、久しぶりにフラナガンさんが『維摩』にやってきた。赤髭の端正な顔立ちが往年のクラークゲーブルを思わせる。
『お久しぶりですね、三ヶ月振りかな?』『そうですね、今度のイタリアは少し長かった』『なにか特別のビジネスで?』『まあ、仕事と言えなくもないのですが、恒例のヨットレースがあったもので』。『貴方のビーチのお近くで?』『はい。スタートしていくマリーナが近いのです』『大きなレースなんですか?』『世界的にもかなり名が通っています。アドリアンカップです。日本からも一艇参加していました。でもちょっと残念でしたがね』。
そのアドリアンカップのスポンサーの一人で、主催者として顔を出したとの事でした。それにしても、なかなか手広くビジネスをしておられる。
『ところで、先日女の子が訪ねていらしたようでしたが』少々気になっていたので聞いてみた。『Miss.サオリですか?』『そうです、海原沙織里さん』『あの娘は、家内の妹の子供です』『カズミ様の?』
沙織里さんはつい最近まである会社に勤めていたが、今年『アクアマリンKobe』が新しく阪急六甲の近くにフィットネスクラブを開業するので、そのインストラクターにと呼ばれたのである。彼女も『ミセス、カズミ』のお呼びとあっては断れない。それまで勤めていた会社、それも大手のフィットネスクラブであったが、辞表を出して神戸に来たとのことでした。
新しくオープンするのは『トラデイショナル倶楽部
六甲』というらしい。ここのスペシャルメニューは、フラナガンさんが、イタリアを始めとしてヨーロッパ各地のフィットネスクラブを廻ってリサーチしてきた、瞑想を主とした心の癒しと、美容対応の内容であるらしい。
『通常のエクササイズもあるのでしょう?』『そうですよ、それに加えて今海外で人気のある特別なコースがあるんです』『まだ日本では始まっていませんか?』『いや、東京の代官山、北海道の札幌、函館。ああ、それから金沢にもそれに似たのが出来たようです』。
私は、その『トラデイショナル倶楽部六甲』で始まる新しい試みについて知りたい気持ちがしていた。是非『ジャズパブ維摩』の女性客にお勧めしたい人がいた。そのひとの名は・・・。まあそれは、後ほどと言う事に致しましょう。
フラナガンさんとの話が盛り上がっていた頃、ドアーが開いて庵主様がお見えになった。『やあ、フラナガン社長お久しぶりですな〜』『こちらこそ、先生もお元気で?』社長が庵主様を先生と呼ぶ。二人の間に私の知らないお付き合いがあるようです。
『庵主様、あ、いや先生』『その先生はよしにしましょうや』『いよいよオープンですな、いつからです?』『10月10日です』『ところであの禅のBGM、如何かな?』『良いですね〜。私も一度体験してみたのですが感動しました』と社長。
ジャモウやランジェのいるジャズパブ・維摩のある煉瓦道 Imagined by Jun
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