皆さんに一通りお二人を紹介して、乾杯となった。今夜の歓迎会の主旨はと言うと、難関を乗り越えてゴールインした二人への祝福でもあり、お疲れ様の気持ちも充分入っていた。
『信二さん、あなた方は迷ヶ平(まよがたい)で初めて祇乃さんとお会いになったとか』と庵主様。『ええ、私がある組織から追われて、逃げていった所がそうだったのです。と言うより吸い寄せられたように・・・』『私もその頃、信二さんと同じように逃げていました』と祇乃さんが話す。
『なんだか良くわからんが、その迷ヶ平ちゅうのはなんでんねん』と辰兄い。ではその顛末については、二人の話に耳を傾ける事に致しましょう。
『人間、得体の知れない者から逃げるちゅうのは恐ろしいことですや』と信二。『言うほど悪い事してなかったのになんで?』『井筒先輩、そりゃ今の自分の地位がなくなるんです、それがたとえ些細な事でもあっても』。それは、一枚の茶封筒を受け取ってしまった事から始まったのであった。それでは何もしていないのにどうして『金』を貰ったのだ、と言う事になる。市会議員の立場からは、それは間違いなく汚職である。
信二が自首して出たのも、全てを話せばあとは司直の判断にまかせれば良いのではとの、祇乃の励ましに押されたからであった。逗留した大鰐温泉で二人はお互いの身の上をすべて語り合い、心の深い所で繋がっていったのだという。
『信二さん、松山での農業如何ですか?』と庵主様。『いや、最初は大変でしたが、慣れてくると楽しいというか、自分が周りの自然と一体なんだと思えて・・・』『私も農業やってみたい〜』とハヤマさん。『祇乃さんも、されるの?』とあきちゃん。『母がもう歳なので、母の秘伝を受け継ぐというか・・・』『へ〜農作業にも秘伝が?』と驚いたのは、麻実さん。『なんにでもその道の奥義と言うのがあるぞ、三味線屋にもな』と、したり顔の辰兄い。その時ジャモウがランジェを一層深く抱え込んだのを見た人間はいなかった。
『ところで信二さん、甲山詣が今回の目的の一つと聞いたが』と庵主様。『ええ、二人ともこの山をある意味で信仰の対象のように思っているもので』と信二は話す。『でもなんの変哲もない山ですがな』『甲山なら毎日見てますよ』と、ハヤマさんが力を込めて言った。西宮から宝塚にかけてどこからでも見えるまるで饅頭を半分に切ってそのまま置いたような面白い形。
そんな山に一体どんな秘密が隠されていると言うのだろうか?二人が初めて出会った秋田県十和田の『十和利山、迷ヶ平』と、知られざる甲山との驚異の関係とは・・・・。
『迷ヶ平』と書いて『まよがたい、まゆがたい』と読みます。詳細についてはまたいずれ。さて信二と祇乃さんは『甲山』をどのように訪ねると言うのか?
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