2013年3月19日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 30 <標高571m>



遅れてやってきた糀屋の看板娘さん、甲六師匠、浜ちゃん達にも、芹沢夫妻を紹介した。夫妻からは、『是非松山の農場へ』と招待を受けたのであった。それは笑い声の絶えない楽しい夜であった。夜の8時を過ぎた頃、信二と祇乃さんは今夜の宿、有馬温泉へと出かけて行った。

この席で、浜ちゃんと新谷暁子さんが1123日に結婚するとの発表があった。仲人は庵主様ご夫妻(ここで初めて庵主様に奥様がおられる事がわかった)が媒酌の労をとられる事が決まった。結婚式は地元の生田神社で行い、披露宴はここ『維摩』で開く事も決定した。この秋は殊の外忙しくなるようでありました。

もう一度皆さんの予定を整理しておきましょう。まず1010日は、フラナガンさんの新しいフィットネッスクラブ『トラデイショナル倶楽部 六甲』のオープン。1014日から、庵主様、まこっちゃん、暁子さん達が『気仙沼』へ出発。11月から、ハヤマさん達のミュージカル『港町エレジー』の公演が始まる。

1123日には、浜ちゃんと暁子さんの結婚式。12月初めには、まこっちゃんの『みちのく割烹気仙沼』の開店と目白押しである。私の体調もなんとか小康状態を保ち、この秋を乗り切る体力は付いたような感じでありました。

さて有馬温泉のホテルに到着した芹沢夫妻は、久しぶりの落ち着いた夜を満喫していた。金の湯、銀の湯に浸かりながら、信二と祇乃は、離れて生活をした3年間を振り返って、今日の幸せをしみじみと感じていた。

あの『迷ヶ平』の台地の中で男の機能を取り戻した芹沢信二は、この有馬の地で祇乃と心身ともに一体となれる歓びを感じていた。祇乃もかつての薄倖の身の上が、信二との営みの中でゆるやかに癒されて行くのを体の奥底から感じ取っていた。こうして二人は名実共にこの夜、めでたくかたちの良い夫婦(めおと)となった。

さて彼らが信仰の対象としていると話す、兵庫県西宮市の北方に美しい山容を見せている『甲山』とは、一体どんな山なのであろうか?標高は309mだが、登山口のある中腹にあるのが、神呪寺(かんのうじ)甲山大師である。名前からして奇異な感じがする。

それにしてもこの『甲山』は、同じ六甲山系の中にあって、なんて特異な形をしているのだろう。この山だけがその名のごとく甲をふせたようになだらかに整っているのだ。特に宝塚市を流れる逆瀬川上流からの眺めはまるで母の乳房のように半丸そのものの形に整っている。そこからピラミッド伝説が生まれたのかも知れなかった。

いよいよ明日、芹沢夫妻は、二人を繋いだ『神の山』甲山へ詣でる。信二も何度か頂上を究めていたが、その度に霊的な何かを感じたものだった。それは遠い祖先の呼ぶ声と言おうか、山全体が発するオーラのようなものだろうか。

その出来事は何年も前の春先の事だった。山全体が春霞に包まれていた。眺めていた信二の目に、世にも不思議な光景が映った。それは、七色の光線を発する甲山の勇姿であった。それは仏陀の光臨か、それともカタカムナの言霊(ことだま)のなせる技なのか。生まれて初めて見た『山が燃える』光景は、今でも脳裏に焼き付いて離れない。

世の中、科学で証明できない事は、出来る事よりも遥かに多い。人間にとって、そこにこそ謙虚さが求められているのではありますまいか。


阪急電車 苦楽園駅から見る 神体山・甲山 (By Jun)



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