アマン・ガマン・ゲロッポのお話 最終回
『奥ちゃん、こんにちは』『おや、アマンちゃんと、ガマン君、それにホロップさんまで。どうしたのさ』『この間は、甘い蜂蜜を有り難う。とっても美味しかったよ』『そりゃよかった。ブンブンのご自慢の蜜だからね』。
アマンは子ども達が、昨日やっと泳げるようになって、それぞれに旅立って行った事を話しました。奥ちゃんはそれを聞いていてポツンとこう言ったのです。
『アマンちゃん、寂みしいかい?でもみんないずれ自分だけで生きて行くんだよ。ボクたちだってそうだもの』そう言って、アマンちゃんの手をしっかりと握りました。真っ黒い手でしたが、とっても暖かい柔らかい小さな手のひらでした。
『そうだ、みんなサクランボ食べるかい?淳爺に今朝もらったのだよ、ほら!』ピンク色のぴかっと光ったとっても美味しそうなサクランボでした。アマンもガマンも初めて見るものでした。ホロップさんは何度か食べた事があったので、その食べ方をアマンたちに教えてくれました。
ちょっと甘酸っぱさが何ともいえず嬉しかったのです。生まれて初めてのサクランボ、小さな種がころっと残りました。アマンはお口の中の秘密の袋にまたしまい込んだのでした。
アマンのその秘密の場所には、今ではひすいの玉とサクランボの種の二つがはいっているのです。リリーパッドの上のテラスで、イモリの奥ちゃんとアマガエルのアマン、水中アマガエルのガマン君はいつまでも話をしたのです。
ホロップさんが、何か言っています。『お〜い、ゲロッポ小父さんちに行かないか?小父さん元気にしているか、見にいこうよ』三匹の仲間は、ホロップさんの柔らかい毛の上に乗っかって、ゲロッポさんの水車小屋までやってきたのです。
ゲロッポさんは、水車小屋にくっついているコケを取ってお部屋に敷いている最中でした。フワフワしてとっても柔らかい、まるで空の雲の上を歩いているようなのです。
『小父さん、お元気でした?』『有り難う、アマンちゃん。お母さんになったのだって。おめでとう』『有り難うございます。でも小父さんどうしてそれを知っているの?』『ハッツハッツハ、それはな、風の便りじゃよ』。
『風の便りって?』『ブンブンやミヤマアカネの、あかねちゃん、そしてフクロウのツバサだって風に乗ってやってくるんだ』『そうか、みんな知ってたのか』。ガマン君は大きな声で言いました。水車小屋のそばに、カルガモのお父さんとお母さんレンボリックさんがやってきました。あの時いた可愛い子ども達はもうどこにもいませんでした。
『レンボリックさんや、子ガモはどうした?』ゲロッポさんが聞いています。『もうみんな大きくなって飛んでいったよ。ちょっと寂しくなったが仕方のない事だ』と、お父さんレンボリックさんが言いました。お母さんはちょっぴり悲しそうな顔をしています。
『さあ、出来たぞ。みんなこっちにおいで。みどりコケのお部屋だ。フワフワして気持ちいいぞ』水車がゴットン、ゴットンと廻っています。ゲロッポさんを囲んで、みんなとっても楽しそうです。アマガエル、トノサマガエル、イモリ、そして野ウサギのホロップさん、カルガモのレンボリックさん。
こなひき爺さんが近い内にまたやって来るでしょう。美味しい蕎麦(そば)の粉をなめさせてもらうのは、秋が終わる頃でしょうか?アマン達の楽しい思い出がいっぱい詰まったこの野原にも冷たい風が吹いてくることでしょう。
その時でした。太陽の光の中から大きな一羽の真っ白い鳥が姿を現しました。
『あっ、白雁(はくがん)のコットンさんだ!コットンさ〜〜ん!!』
アマンは精一杯の声を張り上げて叫びました。『さようなら、アマン。元気でな〜』そう言ってコットンさんは、大きな翼(つばさ)を広げると銀色の風切羽根をキラキラ輝かせながら、遥か北の大地を目指して飛んでいったのです。
アマンはあのコットンさんの暖かい足の水かきの中で眠った事を思い出して、目に一杯の涙をためていつまでも見送っていたのでした。
終わり
近くで、アマガエルやトノサマガエルに出会ったら声をかけてやって下さい。きっと喜ぶと思いますよ。
みんな元気でな(ゲロッポ)、また遊ぼうね(アマン・ガマン)、ではお終い。庵主
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