2013年5月11日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 41 <標高 614 m>



芹沢夫妻がお着きになって、ここ「エーデルワイス」は一気に賑やかになった。オーナー夫妻は再会をなによりも喜んでいます。あの夜、お二人がここに来られた時、様子のただならぬのを感じてはいましたが、それはおくびにも出さず対応したといいます。

宇野信二は、その時を振り返って、『本当に救われた感じがしたものです。所謂、逃亡者だったのですから。それを自然に暖かく迎えて頂いて・・・』と目に涙を浮かべての回想であります。

ここで信二と祇乃の決意は固まったと言います。これ以上逃げるのはやめよう。潔く出頭して罪の償いをしよう。祇乃は信二が帰って来るまで待とう。二人の心がしっかりと繋がった夜でありました。そこには男と女の関係を越えた精神的紐帯が醸成されたのでありました。

信二はその時の事をこう言っています。

私は、祇乃の母親に会って事の全てを話し、了解を得られるまでは祇乃の奥には踏み込まない決意であった。それがせめてもの私の祇乃に対する愛の証であると思った。

祇乃の安らかな寝息と、暖かい体の温もりとを感じながらその夜は満ち足りた深い眠りに落ちていったと。

庵主様は、芹沢夫妻にご挨拶する中でこう提案された。『お二人にとって今夜は貴重な夜、決しておじゃまをするつもりはありません。折角ですので、今夜のデイナーをご一緒させて頂けないでしょうか?』と。芹沢夫妻は、気持ちよく庵主様の申し出をお受けになりました。ペンションのオーナーはそれを聞いて、早速デイナーの準備に取りかかった。

広いホールに立派なテーブルがあり、奥には暖炉があって薪の燃える火が暖かな部屋を演出している。ここ妙高高原では10月下旬はもう冬であります。外気も5度まで落ちました。暁子さんと、祇乃さんはテーブルに並ぶ料理の準備を手伝っています。マスターお手製の鴨料理が並んでいます。この土地でとれたキノコ。佐渡島より届いた鰤(ブリ)。そして暖かいシチューの香りが今夜のデイナーを一層盛り上げています。

地下のワインセラーから、よく冷えたワインが運ばれてきました。妙高高原の地ビールがおおきなピッチャーに入って持ち込まれます。

全員がテーブルに付きました。庵主様からご挨拶があって、芹沢夫妻からもお礼のご挨拶がありました。オーナー夫妻も入って早速乾杯が始まります。

新谷誠さんが乾杯の音頭をとって、白樺林の中の瀟洒なペンションでは燃える火を囲んでの楽しい夜が更けて行きました。芹沢夫妻は、明日盛岡にて一泊。そして大鰐温泉へ、その後お二人が最初に出会った十和田、迷ヶ平を訪ねての旅です。そして神戸を経由し23日には松山にお帰りになるとの事です。庵主様一行は「ジャズパブ維摩」の、いっしゅうさんに宜しくとの芹沢夫妻からのメッセージを言付かりました。そして来年は是非、松山の『芹沢ファーム』へとの招待を受けたのでした。

夜の9時、全員で『さよなら皆様』を合唱して思い出の夜は幕を閉じました。オーナーの計らいで、ツインの部屋が二つ用意されています。一つは芹沢夫妻。もう一つは、庵主様と暁子さん。この二人は今回の気仙沼旅行を共にする中で、気持ちの上では既に『父娘』の縁に結ばれているようでした。



2 件のコメント:

  1.  妙高の夜は一層風情がありますね。妙高高原ビールと美味しい野菜、新潟の海で獲れた魚とワイン、これは新潟の日本酒に並んで有名な岩の原ワインでしょうね。昨年の日本のワインコンクールで金賞に輝いたワインが食卓に華を添えていることでしょう。食卓を囲んだ登場人物の皆さんに祝福を。

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  2. 小川 洋帆 様

    こんばんは。いつもコメントをいただき感謝です。

    そうですね、新潟の食材は日本でも屈指の旨い物そろいですね。
    特に酒は最高です。ワインも岩の原ワインが有名ですね。山菜を肴に、地酒や濁り酒がボクは大好きでした。でも最近はお酒が必要ではなくなりました。

    歳をとったのでしょうか?

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