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【庵主の草枕・夢旅日記(七)】
さて蓬菜町の『定吉』をでた私は、また想像の世界で敦賀の町の散策を開始致しました。明治維新を目前にして処刑場の露と消えた水戸烈士達。武田耕雲斎率いる水戸天狗党の烈士三百数十名のことを記しておきましょう。
尊皇攘夷を旗印に挙兵。京の朝廷に自分達の志を訴えんが為に京都へ上がる途中、時は1864年、今を去ること143年前(当時)ここ敦賀の地で捕らえられ幕府によって翌年、来迎寺(松原)にて三百五十三人が斬首されました。
その水戸天狗党の首領、武田耕雲斎等の墓が、松原神社内に安置されています。毎年10月10日には鎮魂の例祭が行われているそうです。時代の流れの中で主義主張の違いから、心ならずも異国の地に魂魄を留めなければならなかった大和男子の冥福を祈る私でありました。
さてこの後は『気比の松原』に行ってみようと思います。長さ1.5km広さ約40万平方メートルという途方もない広大さ。そこに白砂青松の浜辺が残されているのです。私が数えた訳ではありませんが、なんと驚く無かれ、赤松、黒松合計17,000本が生い茂る日本でも稀有な景勝地であります。長年に亘って数多くの人々の心を込めた自然保護の努力の結晶であります。
ここでは映画の撮影なども行れているようです。ちょっと再現してみましょうか、こんな風にです。
若侍が着流し姿で懐手。小唄の一つも唸りながらの千鳥足。一方千本松原の木の蔭に隠れた怪しげな素浪人五、六人。ゆっくりとした間合いで松の木に身を隠しながら若侍の背後に迫ろうとしている。
月が今しも黒雲に隠れようとしたその時、素浪人の背の高い一人が、鞘をはらって一気に躍り出た。ヤッ!・・トオウ!と胴に切り込むその瞬間、若侍はスッと二尺余り飛び上がった。切り込んだ侍の目が若侍をさがしたその時、くるっと体を捻るやそのままズバッと大上段から『備前長船』の名刀『景清』を振り下ろした。
男の顔面が遠目にも西瓜を割ったように見えた。月に掛かった雲がその光景を闇の中に消してしまった。生暖かい風が血の臭いを運んできた。
などと言ったような世界が出現しても不思議で無いほどの素晴らしいロケーションであります。
庵主も今度は、時代物でも書きましょうか、結構面白いですね。書きながらワクワク、ウズウズしますよ。
さてさて、今夜の宿はどこじゃいな。温泉に入って早く一杯やりたいですね。やって来ましたのは、「海望グランドホテル」(仮称)であります。
ここは北陸トンネルの掘削時に湧き出た温泉であります。高台に位置していますので、入浴しながら市街地や敦賀湾の夜景が見られるのが『売り』であります。
泉質は単純硫黄泉であり、湧出温度は25.2度、それを42度まで湧かしているのです。効能はと申しますと、神経痛、リウマチ、婦人病、皮膚病、それと糖尿病にも効果があるとか。私めとしては、楽しみであります。
高台に建つ豪華なホテル (イメージ画像)by Jun
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