2011年9月22日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・言葉のアーカイブス <標高140m>


時刻表 JR全線版を使って旅に出よう!庵主の草枕・夢旅日記】

 番外編・怖いかシリーズ (その二) 女は怖いか?



『さあ、何を頼もうか、君は何が好きなんだ』『常務さんにお任せします』と言う。テーブルのベルを押したら店員がやってきた。『ビール中瓶を2本、熱燗1本』『シングルですか、それともダブルでしょうか?』と絣の女性。『ダブル、熱めに。それとカレイの煮付け、だし巻き玉子、ハムサラダ、明石焼き、そして野沢菜漬け物。以上』。

彼女がクスクス笑っています。『何がおかしいんや?』『だって、子供の好きそうなものばっかり』『これでも気を使てんねやで』と私。そうこうするうちにビールが運ばれてきました。

彼女がグラスを並べて、『じゃあ、お注ぎします、常務様』『ここでは、役職抜きだ!』『じゃあ、オー様どうぞ』なんとも男を上手くあしらう女性であります。

私が彼女のグラスにビールを注ぐ。『お疲れ様、では』といってグラスを合わせました。二人は冷たいビールを一気に喉の奥に流し込んだ。久しぶりの居酒屋。ほっとする時間が流れていく。

『オー様、タイのお話し聞かせて下さらない?』『タイの話か、ほな酒でも飲みながら話すとしょうか』。私が仕事でタイへ出張したのは、三週間ほど前の事だった。往復の航空チケットなど必要な物はすべて彼女が全て用意してくれたのだった。

私どもの製品を買ってもらっていた関係で、大手企業の現地工場見学と今後の納入打ち合わせなども兼ねていました。

『お疲れになりませんでした?』『とにかく、暑かったからな。それに生水が飲めないのがきつかったな』『それでビールばかり飲んでおられた?』『見えとったんか。その通りや、ははは・・』

『お熱いところどうぞ!』と二合徳利を両手で持って注いでくれる。

『あちらではどこに行きはったん』『パレスに行ったよ。それと夜のデスコにもな』『踊らはったんですか?』『あほ言うな。踊ったんはMr.S や』

『そやけどな、デイスコの踊り子は全くのスッポンポンやで、あれには吃驚したでほんま』『鼻の下伸ばして、いややわ、オー様!』『痛ああ〜!ひねりないな、あざ出けたらやっかいやで』

まあこんなたわいもない会話を交わしながら、久しぶりに若い女性との楽しい時間が過ぎていったのです。

その日からもう4年(当時)が過ぎました。その後私は大阪から愛媛県新居浜に転勤になりました。そして何度か現地工場の若手と一緒に飲みに行く機会があったのです。これからお話しするのは、ある秋の、月の綺麗な夜だったと覚えています。

その日は知人が洒落た割烹を開店したと言うので、みんなで集まってお祝いの飲み会が催されたのです。会が盛り上がってお酒が結構まわった頃、ある一人の女性がこんな事を言ったのです。

『元常務さん』『ええ、わしの事か?』『そうですよ。常務さんは以前、大阪のS嬢と親しくされていました?』『なんや、藪から棒に。わしはこの通り、みんなに親しいんやで。知っとるやろ』『ほんとお〜? でもS嬢には、と・く・べ・つ、でしょ!』

『そんな事あるかいな』『でも一緒にお風呂屋さんに行ったんでしょう』その時私はその意味が全く理解できませんでした。そう言った女性はS嬢と仲が良かったのです。女性二人連れでよく旅行などにも行ったらしいのです。

私はハッとしました。そこは『風呂屋・銭湯』ではなく『ゆ』の暖簾のかかった居酒屋であった事。まさに大阪人の洒落がこしらえたお店でした。それをどこでどう間違えたのか、本当の『風呂』、『温泉』に行って一緒にそこに入った事になっているらしいのです。

その時私は、敢えて釈明も説明もしませんでした。どうころんでも信じてもらえないと思ったからです。こんな事なら、本当に『温泉』にでも行ってた方がよかったのだと今でも思っております(問題発言)。それはもう10年も前のほろ苦い思い出でした。やっぱり女性は怖いものであります、いやほんま。ではまた。


 ミョウコウトリカブトの花 Imagined by Jun

0 件のコメント:

コメントを投稿