2013年7月2日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・竜の垂らした涎(よだれ)1 <標高 661 m>



【P im P Story (ありそでなさそな話、なさそでありそな話)】


「竜の垂らした涎(よだれ)」


ボクの古い友人の一人、流一平氏は前回「木漏れ日の女性(ひと)」にてお目に掛かりましたが、今回はなんとインド洋を訪ねているようです。先日突然のこと、遥かインド洋ロドリゲス島の洋上からインマルサット衛星通信を使って「インマルサットFフリート77」で妙高高原マインヒュッテ(私の山小屋)まで連絡をしてきたのです。



なんとも神出鬼没を地でいく御仁で、ボクも少なからず放浪を楽しむ方だが、一平氏は人並み外れている。彼の今回の目的は、ある物をゲットすることにあるらしい。そのためにこのロドリゲス島(Rodrigues Island)に滞在しているとのことであった。



なにはともあれ、ここからは流一平氏からのEメールを見ながら進めていくことに致しましょう。『ああ、ちょっとお待ち下さいよ。ストーブの火が落ちました。一気に部屋の温度が下がっていきます。ええ〜っと、ウヰスキーはどこだ・・・。ありましたよ、ちょっとケットルからお湯を入れてと、そう丁子(ちょうじ)はと、これを入れて、はい出来上がり』次に林檎の伐採木を薪ストーブに放り込みました。甘酸っぱい果樹園の香りが一時の安らぎを連れてきてくれます。



丁子の良い香りを嗅ぎながらホットウヰスキーを飲む。これが冬の夜の高原生活では、早く体を暖める方法なのです。さて一平氏は何を書いて来ておるのかな・・・?



ロドリゲス島とは、インド洋のモーリシャス島から北東へ560Kmというから大阪から東京くらい離れていると考えておいて下さい。そこに位置するモーリシャス領の孤島で、3つの島からなっているそうです。


火山島で最も高い山は、リモン山(Mont Limon)は、396mと言うから、かつて私の住まいするエリア(2007年当時)の南側にある甲山より少し高いのであります。島の周囲は広いラグーン(潟、潟湖で塩湖になっている)に囲まれているらしい。人口は約40,000人、州都は人口約2,000人のポート・マチュラン(Port Mathurin)である。

決して島の暮らしは裕福ではなく、牧畜、漁業、農業が中心で最近では観光産業に力を入れているとのことだ。

流一平氏は一年ほど前から、ある事に仕事の半分を割いて、勉強し調査し、そして精力的に動き回っていた。それはなんと「動物性香水の原料」についてであったのだ。先日も神戸の町で出会ったとき、外人倶楽部のマスターが、一平氏の体から発する香りについて興味深く訊ねていた事があった。

そのイギリス人のマスターは、モーリシャスがイギリス領だった1968年以前にロドリゲス島に3年間、教会の仕事で滞在していたと話していた。さて一平氏は何を求めてそんな辺鄙なと言おうか、南冥の地に出向いたのだろうか。

以前ボク(庵主)と流一平氏は京都の烏丸通二条の香老舗、松栄堂を訪ねたことがあった。その時、創業300年の老舗「松栄堂」さんにて教えられた内容をここに再録してみましょう。(2007.5


【今日はボクの友人であります、『お香おたく』の流一平(ながれいっぺい)さんに同行願い、京都烏丸二条にやってまいりました。 水辺にはカキツバタが咲きだし、古都の初夏の風情を一層色艶やかにしています。

『今日はご苦労様です。ところで一平さんはお香歴、もう長いのですか?』『そうですね、かれこれ30年になりますか』『へえ〜、すごいですね』『そんなに手間の掛かるものでもないですから、毎日気楽にやっていますよ』

『さてやって来ましたね。ここは本店が京都、産寧坂、銀座、人形町、札幌、青山香房などに支店があるのですね』『日本人のお香についての感性は殊の外豊かで深いものがあるようで、各地に出店があるのがわかりますね』


『お香と一口に言っても、色んな素材があると思いますが、ちょっと教えて頂けませんか』『ええ、それでは松栄堂のお店の方に窺っていますのでご説明致しましょう』

 『お香の原料としては、数十種類あるそうです。なかなか入手困難なものも少なくないようですよ』『そんなに沢山あるのですか?』『香木のうち代表的なものは、沈香(ぢんこう)、伽羅(きゃら)、白檀(びゃくだん)が挙げられますね』『それらの原産地はどのあたりですか?』『そうですね、主として東南アジアでしょう。ベトナムやインド、インドネシア、マレーシアそれに中国などでしょう』『それでは、今度は草根木皮については如何でしょうか?』

『桂皮(けいひ・シナモン)、大茴香(だいういきょう・スターアニス)、丁子(ちょうじ・クローブ)、安息香(あんそくこうのき・エゴノキ科)、乳香(にゅうこうじゅ・カンラン科)、竜脳(りゅうのうじゅ・フタバガキ科)などがあります。これらの中には、アフリカやアラビア海沿岸部などで採れるものもあります』『全世界から集まってくるのですね、ほんと驚きました』

『あと、動物性の香料がありますよ』『動物性ですか?』『そうです。庵主さんもよくご存知の、竜ぜん香、これはマッコウクジラから採れる稀少品です。麝香(じゃこう)、これはチベット高原に生息するジャコウ鹿・牡の香のうより採取するものです。あと貝香があります』『貝からも採れるのですか?知らなかったな』『螺属(まき貝)の蓋、中国南海、紅海に産し主に保香剤として用いるようです。現在は南アフリカのモザンビーク産の物も使われているとの事でした』

『いや〜、お香は奥が深いですね。驚きましたよ。私はホットウヰスキーに丁子を浮かべて飲んでいますよ。とっても良い香りがして最高なんですよ、あれ』『庵主さんはやっぱり飲む事に尽きますね』】

懐かしい対談です。既にこの頃から流一平氏は、竜涎香(りゅうぜんこう)に着目していたようでした。そんな経緯が今回のロドリゲス島訪問に繋がったのではいでしょうか?さてこれから本題に入ってまいりましょう。世界のお香業者が血眼になって探し求めている「竜涎香」、流一平氏の文章はまだ続きます。

(庵主の懐かしのフィクション集より)

2 件のコメント:

  1. お香というと「沈香」というコトバが想い出されますが(それしか知らないのですが)東大寺の正倉院に保管されているものは織田信長が少し切り取ってもって帰ったという故事をどこかで読みました。いずれにしても千年以上経つお香が大切に保管されているということは如何に日本の文化に古くから溶け込んでいるかを示していますね。これからはテレビでも香が嗅げる時代になるそうで、そうなると数千万台と普及しているテレビに香りの機能が付いたらものすごいビジネスになりますね。流様をはじめ香りのビジネスをされている方はますます忙しくなりますね。

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  2. 小川 洋帆 様

    こんにちは。いろいろ楽しい事になってきそうな予感がしますね。

    テレビから料理番組での良い匂いが漂って来たら、お腹が減って、ちょっと困りますね。
    でも微かにお香のかおりがしてきたら、『テレビを見ながら、お香をきく』なんとも優雅ですね。そんな時代が近いうちにくるのですか。そういえば、昔夢のようなテレビ電話が出来るニュースに、感動した記憶があります、きっと香りの機能付きのテレビ、出来るでしょうね。

    ご安全にお帰り下さい、ではまた。

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