2012年3月20日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ 言葉のアーカイブス<標高313m>

アマン・ガマン・ゲロッポのお話 8

兄弟や姉妹たちが、それぞれ自分の体を動かして小川の流れに乗って遠くに旅立っていったのです。アマンたちは多くの仲間が一つの場所では生活できないのです。それは食べるものもそこだけでは充分ではなかったからなのです。


そしてアマンはその梅雨の終わる頃、ちいさなアマガエルになって、大きな川の岸辺にあるブナの木(注:1)を住み家としていました。その時、あの怖い青大将(へび)に食べられそうになったのでした。

お蕎麦(そば)の粉を最初に舐(な)めさせてもらったアマンは、その香りと優しい味にうっとりとして、生まれた頃のことを思い出していたのです。ガマンもホロップさんも同じようにとっても良い気持ちになっていました。

ホロップさんはお空に一番星が輝き出した頃、入ってきた小さな穴から外に出てお家に帰って行きました。まあるいお尻をプルプルと揺らせて上手に出ました。
『アマンもガマンも今日は、ここに泊まっていきなさい。もう外は暗い。』ゲロッポ小父さんは優しい目をしてアマガエルたちを見つめました。


そしてもう一度その穴から長いおヒゲの顔を覗(のぞ)かせて、アマンたちを見て言いました。『じゃあ、またな。ボクんちに遊びにおいで。大きな樅(もみ)の木のありかは、ゲロッポさんに聞くと良い』そう言うが早いか、ピョンピョンと草原に吹く風のように走ってあっと言う間に消えていきました。

アマンはホロップさんがとっても好きになりました。背中にのっかった時、柔らかい毛がとっても暖かだったのと、お日様の匂いがしたのをじっと思い出していたのです。

その夜、アマンは生まれて初めて遠くのお家に泊まったのです。ガマン君はゲロッポ小父さんちには何度か泊めてもらっているようです。
夜になると、この水車小屋もちょっぴり冷えてくるのです。ゲロッポさんは、アマガエルのために蕎麦(そば)の殻(から・注:2)をたっぷりと敷き詰めた小さなお部屋に連れて行ってくれました。部屋の隅にはきれいな水も湧いています。
アマンは早速その透明の水を飲みました。なんだか体に元気が湧いてきたようでした。水車小屋の上には大きなお月様が浮かんでいます。その光が、アマンたちの部屋にも忍び込んできていました。

勉強のお部屋

<ブナの木(注:1)>
みなさん、ブナと言う木を知っていますか?それは山の高い所にはえているのですよ。海抜(海面を0mとして計算します)500m800m~1000m付近に多いのです。

この木の種子(たね)はネズミの大好物です。幹(みき)の高さは約20mにもなります。そしてこの木の根っこは、沢山の雨水を貯(たくわ)えてくれるのです。だから山にブナが多くあると水害もあまり起こらないのです。

昔から森のダムと言われているのですよ。実は食用にもなり、「ブナの油」もとることができ、木の皮は染料(布を染める材料)にもなるのです。


<そば殻(がら)注:2>

「そばがら」とは、ソバの実を包んでいる皮です。茶色の濃い色です。ゲロッポさんが、アマンたちの寝床に敷いていましたね。人間は昔からこのそばがらを使って、枕(まくら)を作っています。

大学の先生も長い間この「そばがら枕」の研究をされ、これが最も快適な睡眠が得られることを実証されました。

昔から日本では、「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」と言って、頭は冷やし、足は温めるのが健康に良いとしてきました。

そばがら枕は、私たちの頭を優しく冷やしてゆっくりと眠れるようにしてくれるのです。

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