2014年1月31日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・アサマフウロ(浅間風露)(標高 857m)


昨年の9月、山梨県八ヶ岳南麓 生長の家国際本部、『森の中のオフィス』を訪ねた時、サンメドウズ清里スキー場の中で目にした『アサマフウロ』一輪です。花の特徴は濃い紅紫色をしていて、花径は34センチくらいあります。この高山植物も準絶滅危惧種に指定されているそうです。その時写真を撮っていたのをふと思い出して、チエックしたところ出て来ましたので、花の無い今の季節に、「花一輪の癒し」を感じていただければ幸いです。



(庵主の日時計日記:自然と私)より

2014年1月29日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・雪の晴れ間の黒姫山 (標高 856m)


青空をバックに撫でやかな山並を見せてくれる黒姫山 妙高山の険しい『男山』の隣にいて まるで寄り添う女性のような『女山』の優しさです 陰陽の調和した【結びの世界】がそこには顕現しています

(庵主の日時計日記:自然と私)より

2014年1月28日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・花一輪 恋の笹舟 (標高 855m)





花一輪・恋の笹舟(四十三)


道諦・歩む・八正道・正念(しょうねん)



あれからどれくらい時間が経ったのだろう。順心は気がついた時、灯の消えた部屋の中で眠ってしまっていた自分を見ていた。いたはずの尼の姿はそこにはなかった。今、何時頃なのだろう、夕方この寂夢庵に来て、尼の心づくしの雑炊を頂いた。

その時、尼が般若湯だと言って小さな湯飲みに入ったものを置いてくれたのだった。口をつけてみると、それは酒の匂いと味がした。それを飲んで、暖かい雑炊を食べたまでは覚えている。それから後の記憶が全くなかった。

どうやらその酒に酔って、眠ってしまっていたようである。『尼様・・・春禰尼様・・』と呼んでみたが何の返事もなかった。

春禰尼は、雑炊を食べて少しの般若湯を飲んだ順心が眠ってしまったのに戸惑っていた。最初風邪でも引いてはいけないと思い、自分の薄い衣を掛けておいた。しばらくして戻ってみると、順心の額には汗が噴き出ていたのだ。



衣をのけて、そっと顔の汗を拭き取った。その汗は胸の辺りまで滴り落ちて、順心の肌着を濡らしている。尼はそっとその胸をはだけた。厚い胸の筋肉が赤く染まっている。尼は静かに目を閉じて、胸の汗を拭った。そこはかとなく男の匂いがした。


順心の胸には汗に光る黒いものがびっしりと生えていた。それが春禰尼のか細い指の間で揺れるようにもつれた。夢の中に落ちているこの修行僧に、尼は言い知れない愛しさを感じて、その手をあてたまま胸の鼓動をじっと聴いていた。

はっと我に返って、襟元をもとにもどした。自分の邪(よこしま)な心が罪深い女の性(さが)のように感じられて何度も呼吸を整えた。自分の胸の鼓動も、まるで、乙女のように乱れていた。そのまま立ち上がった尼は、心許ない足どりで湯屋にいった。

2014年1月27日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・雪の落葉松林 (標高 854 m)



雪の落葉松林は、青空をバックにした時が最も美しいと思う。じっと見ていると、冬鳥の群れがあちこちの枝を飛び回っている。そこには一足早く『春』が来ているかの様な気がして、野上彰作詞小林秀雄作曲『落葉松』を口ずさんでみた。


(庵主の日時計日記:歩き伝道の日々)より

2014年1月26日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・土の仲間たち (標高 853 m)


雪が降って、生き物の姿が見えなくなってしまうと、俄然存在感をあらわすのが、『土の仲間』たちなのです。陶芸をしている友人・知人・そして妹が、森の中で寂しかろうと作って下さった数々。ゴジラ・ふくろう・カメレオン・そして深海魚のチョウチンアンコウの香炉など。これらの『土の仲間』は、ボクに色んなことを話しかけてくれる。そしてその奥には作家たちの愛が溢れている。だから妙高山麓の冬は「暖かい」のだろう。



(庵主の日時計日記:土の仲間たち)より


2014年1月24日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・黄金の山容 (標高 852 m)

【今朝の黒姫山】

雪の落葉松林のむこうに朝日に輝く黒姫山が見えています 神々しい姿に思わず合掌したほどです外気の温度は氷点下6度です 二日間雪が降って三日目に晴れました



今日は久しぶりに町まで買物に出掛けます 大雪が降って雪道は不安定です だから貯蔵してある食物で過ごしていますが このあたりで一度補充をします 今は月に2〜3回のショッピングです雪国ではこんなものです

(庵主の日時計日記:雪国の生活)より

2014年1月23日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・花一輪 恋の笹舟 (標高 851m)



花一輪・恋の笹舟(四十二)


道諦・歩む・八正道・正精進(しょうしょうじん)



男の話が終わりかけた頃、時雨が降ってきた。それはまるで順心の胸の内を顕すかのような雨であった。柴田寛三と名乗った男も目を赤くしてじっと俯いていた。順心は男を促して、本堂の御仏の御前に坐した。



じっと目を閉じて経を唱えた。亡き父へのせめてもの供養である。海をこえて、ここ久遠実相寺を訪ねてくれた、郷里の人への感謝の気持ちもこめられていたのだ。



その晩郷里よりの訪問者、柴田寛三は寺に泊まってもらった。最近の美馬の事などを話し合って夜は更けていった。寛三は郷里に帰ったら、阿方家の墓に詣ると言ってくれた。

明くる日、男は早朝に寺を離れた。何度も振り返って、手を振りながら谷間の道を下って行ったのである。

その日から数日経った頃のこと、順心は桜の花が満開になったのを見計らって、寂夢庵を訪ねることにした。春禰尼に是非会いたいと思った。父の最後の様子もわかって気持ちの整理もついたのでそんな話もしておきたかった。

寂夢庵の横に小さな畑がある。その日はなんと春禰尼が野良仕事をしているのだった。順心が伊予に旅をしたとき、尼にと思って買ってきた伊予絣の作務衣を着て畑の土を耕していた。順心が近づいて傍まで来ているのに、気づかないほど精一杯の作業である。

『尼様、順心がまいりました』小さな声で話しかけた。尼はそっと頭を上げて、順心を見た。その顔には汗が流れている。




手ぬぐいで顔を拭いて、小さく会釈をした。その優しくも美しい笑顔に、順心は心穏やかならぬものを感じていた。尼の姿に心が迷ったというのか。とっさに尼の手よりクワを取り、畑の土を耕し始めた。



小一時間も作業をしていたようだ。一通りの仕事が終わった時そこには尼の姿はなかった。尼は少し離れた若草の土手に座って順心を待っていたのである。光りの中に座っている尼の姿は、慈愛深い観世音菩薩のようであった。二人はまるで幼い頃に戻ったかのように笑い合い、茶を飲み、菓子を口にした。



膝の傍に咲く野の花を見て明るく笑う春禰尼の心の中には、過去の忌まわしい記憶はもう残っていないようであった。山の端に朧(おぼろ)の月がかかるまで二人は話し合い、見つめ合っていた。

少し風が吹き出した頃、尼は立ち上がり庵に戻るようだ。順心も腰を伸ばし衣を改めた。その時尼が伏し目がちに言った。『もしよければお立ち寄り下さいませ。なにもありませんが、お雑炊など・・・』二人は月を背にして、寂夢庵の芝垣の中に消えていった。