2013年1月31日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・パウダースノー <標高542m>


【今朝の風景】



 

果てしなく続く粉雪のゲレンデ こんな細かい雪は久しぶりだ まるでケーキ作りに使う『粉糖』ににている

それは昨日の午後に降った雪だ 歩いているとカサカサと音をたてて降り掛かってきた
 
朝日が昇って空が青くぬけた この景色に魅せられてここに住んでいると言っても過言ではない

さあ これから歩いて温泉に行こう 神様から与えられた素敵な一日に感謝しつつ

(庵主の日時計日記:自然と私)より  

2013年1月28日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 21 <標高541m>



ドアーがあいて入って来たのは、気仙沼から来たというニヒルな男、白マフラーならぬ白スカーフの男でありました。なにやら背負っている様子。男の背中からあの優しい顔がのぞいています。

『いっしゅはん、ジャモウじゃ、ジャモウが帰ってきたぞよ!』と庵主様。私はその時、涙が流れて前がまったく見えていない。全員が白マフラーの男をとり囲んだ。お雪さんはその時その男と一瞬目があった。お雪さんの目にも一杯の涙。逃げるように奥の部屋に駆け込んでいった。看板娘さんも、『ランジェ』を下ろす。ジャモウはもうランジェの傍に行って顔を擦りつけている。

ここまでの事情は白マフラーの男が話した。都度、看板娘さんもコメントを入れる。ジャモウはいつもの薪束のそばに、ランジェを連れて行った。先に飛び上がって、さあおいでと彼女を促している。ふわっとランジェは飛び上がった。そしてジャモウの深い毛の中に身体を埋めた。

このようにしてこの猫たちは、寒い再度山の山中を生き延びていたのだろう。庵主様はちょっぴり寂しそうなお顔つきだ。私は早速お祝いの準備を始めた。ところがお雪さんの姿が見えない。いま入ってきた白スカーフの男との再会にとまどっているのだろうか。私は奥の部屋に入ってみた。泣いているお雪さんがそこにはいた。私は肩を二度ほど優しく叩いて、店に戻るように促した。

私は集まっているみんなに、乾杯用のビールを注ぎ終わるとこう話した。『皆さん、ジャモウが帰って来ました。可愛い恋人まで連れています。この子もこれから維摩の住人になります。それと嬉しいお知らせがあります』。全員ちょっと驚いた様子。『この白スカーフの方はジャモウの恩人であると同時に、ここにいるお雪さんのお兄さんです』。まわりから、ええっ!!という驚きの声が上がる。

『さあお雪さん』と私は彼女を呼んだ。『あんちゃ〜ん』と言ってお雪さんはお兄さんの胸に飛び込んでいった。またまた涙である。お兄さんが『維摩』の皆さんにお礼を言って、乾杯をした。こんな素晴らしい夜は、私もいままで経験したことは無かった。

お兄さんの名を新谷誠(しんやまこと)、妹のお雪さんは、新谷暁子(しんやあきこ)と言った。『糀屋』さんの看板娘さんも、みんなと楽しそうにやっています。甲六師匠や浜ちゃんは早速、『すじ玉丼』を食べに行く約束をしているようです。

こうしてジャモウ失踪事件は、ハッピーエンドになったのでした。新谷兄妹の出会い、浜ちゃんと暁子さんとの恋の行方。そしてハヤマさんのミュージカルはこの後どうなるのでしょうか。

もう季節は四月の半ばにさしかかっていました。そんな頃マスターこと私の体調に異変が生じたのでした。好事魔多しとはよく言います。ジャモウが行方不明になった頃から体調の変化に気付いてはいた。まず疲れがなかなかとれない。年齢からくるものだろうと思ってはいたが、午後になるとなんとなく熱っぽい。頭がフラフラする事もあった。

お雪さん(新谷暁子)は、数日して兄の住む場所に帰っていった。夜だけ『維摩』に手伝いにきてくれている。

ジャモウとランジェは睦み合って、今も眠っている。さまよい続けた疲れを彼らも癒しているのだろう。私も人生の四分の三はすでに歩いてきた。このあたりで車なら車検、人間なら人検をする時期ではあった。神戸の市民病院に検査の予約を取ったのは四月の桜が散って、若葉が芽吹いてきたゴールデンウイークの少し前であった。

あれあれ、ジャモウが帰ってきたとたんに、いっしゅはんは病院へ!『維摩』の夜はこのあと一体どうなるの?もう物語終わってしまうの?みんなの心配が、今夜も煉瓦路を行き交っています。


2013年1月27日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ほりだし君 <標高540m>


【大切な郵便ポスト】


我が家の郵便物を受けてくれるポストです ニックネームは
『ほりだし君』これは冬季限定の呼び名ですが・・・

昨日も大雪の朝が明けました ボクの最初の仕事は 町道まで歩いて行って このポストを雪の中から掘り出す事です
時には雪の下に隠れてしまって 探しながら掘り出した事も何度かあります 

今朝はどうでしょうか 『ほりだし君! もうすぐ行くから待っていてね』この子も家族の一員なんですよ

(庵主の日時計日記:生きて愛して)より

2013年1月24日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 20 <標高539m>



疾風真麻さんの、ジャモウ発見の朗報は一気に『維摩』に本格的な春の到来を思わせる明るさを取り戻させてくれたのです。今回の『ジャモウ捜索隊』の隊長は、なんと「株屋の浜ちゃん」、副隊長が「落語家の甲六師匠」渉外担当に「三味線屋の辰兄い」電話番に「マスターの私」そして後見人に「不思議な老人、庵主様」、お雪さんは「維摩のお店番」と、まあこんな大がかりな布陣でありました。

夕方から、ハヤマさんがジャモウらしき猫を見かけた三宮の北側山手、新神戸駅に近い神戸で最も人気のある観光スポット「北野エリア」へ出かけました。北野町と言えど結構広いのです。それと坂道、細い路地が至る所に走っています。

外人住宅や、大きな庭園を持つ外国施設など、なかなか一般人が出入ることもままならぬ場所も結構あるのです。それでも捜索隊は二人一組で精力的に行動しています。今では誰もが携帯電話を持っています。今どこにいるのかお互いにすぐ判ります。

もう夜も8時を過ぎていました。近くの公園に集まった捜索隊員はさすがお疲れのご様子。『あきまへんな〜、どうですちょっとこんな、まねごと』と言って、お猪口を口に運ぶまねをするのは、落語家の新在家甲六師匠。『誰が言い出すかと、待ってましたんですわ』と辰兄い。『どうでっしゃろ、ここいらで休憩、一服という事にしては』と甲六師匠。その時隊長の浜ちゃん、一も二もなく赤提灯を指さして、『あこや!!』。こんな事はほんとすぐに決まるものなんですね。

 疲れた身体に最初の一杯は堪えられません。『生き返ったで』とは辰兄いの叫びにもにた一声。『ところでジャモウやけど、どう思う?』と浜隊長。『なんちゅうても猫や、どこへでも入って行きよるで』『その通りや、甲六師匠の言う通り、奴らは人間にはでけん事しよるさかいな』。浜隊長も困惑気味。

その時、浜隊長の携帯が鳴った。『はい、浜です。いまのところ変わった事ありません』。実は大変わりや、全員沈没しています。『そうでんなあ、まあ、あと一時間ほど捜索したらそちらへ向かいます』『ロジャー(了解)』。

辰兄いが『赤い顔して維摩へ帰ったら、みんなの顰蹙を買うな』と言った。浜隊長もそこは良く心得たもの。隊員にはビール以外は飲むなと話してある。ビールなら、トイレへ一回行ったらそれで、完了と言うわけです。『そいでや、明日以降この捜索隊どうするや?』と隊長。

『もう時間の問題でっせ、きっと出てきます。ジャモウのこっちゃ』と甲六師匠。『ジャモウについてたもう一匹は確か三毛猫やったな』と、辰兄い。『あんたそれ商売にするつもりかいな。もしジャモウの恋猫やったらあきまへんで』『そんな事するかいな、あほらし』と辰兄い。ちょっと気落ちした感じである。

それから三日後の事です。三宮のセンター街を一人の男が歩いていきます。夕方の4時頃でしょうか。首には白いスカーフを巻き、ヤンピーのブレザーにジーンズ。頭にはヘリンボンのハンチング。なかなかのダンデーです。

センタープラザ西館の地下へ向かっています。彼の目的は、軽く夕食をとるためのようです。そこには、知る人ぞ知る、すじ玉丼の『糀屋』さんがあります。いろんな丼屋がひしめく神戸の地でも、ひときは異色なお店です。今まで何度も雑誌や地域のコミニテー誌に掲載され、テレビの取材も受けています。なにしろ楽しい明るいお店ではあります。味は一度食べたらやみつきになるのは必定。

白スカーフの男は、暖簾を分けて入りました。美形の女性がお客さんをみて『いらっしゃいませ〜〜』と言った笑顔がなんとも良い。おばさん風の優しそうなお母さんが、すじ玉丼を作っている。

白スカーフの男は、この店は初めてのようであります。注文した丼をしゃくしゃくと音を立てて食べています。その時でした、外で『ミヤ〜〜ア』と猫の鳴く声。男は身体をその声の方に振り向けた。男はその猫こそ、年末に『維摩』に立ち寄った時、自分の傍で眠っていたシャム猫、名をジャモウだと確信した。

しかしどうしてここにジャモウがいるのだろう。確かあの時マスターは『この子はほとんどここから出ないんです』と言っていたはずだ。ひょっとして何かあったのか?いずれにしてもこの猫はすぐ届ける必要がある。そう思った白スカーフの男は『糀屋』の娘さんに話しかけた。

 『リュックのようなものがありませんか?』『リュック?ええ!なんで?』そりゃそうだろう、突然初対面の男性よりこう言われると、だれしも怪訝な気持ちになるもの。

その時お母さんが、『奥に二つほどあったよ。でもあれはリュックでないよ、小さなデイバッグだよ』『それお借りできませんか?』そう言って男はかいつまんで事情を話した。毛がモジャモジャの猫がカウンターのあるお店に入って来た。

男は屈んで、猫を抱いた。『もう一匹いますよ、こっちは三毛猫だよ』二匹の猫は寄り添うようにうずくまった。どちらもアバラ骨が浮くほど痩せている。『糀屋』のお母さんがパンの耳を持ってきてくれる。外の通路で二匹の猫はそれを貪るように食べた。三毛猫の首に『すみれ色』のリボンが巻かれてある。泥で汚れているが、『ランジェ』と刺繍がされている。この子の名前であろう。どこから来たのかは誰も知らない。

二匹の猫、二つのデイバッグ。白スカーフの男はジャモウをデイバッグに、『糀屋』の看板娘さんが、三毛猫の方をそれに入れて背中にしょった。ちょうど店じまいの時間であり、海岸通りまで一緒に行ってくれる事になった。道行く人が二人を見て指さし、笑った。

近所の子供達が後ろを付いてくるのには閉口した。『糀屋』さんから『維摩』まで歩いて20分程度か。背中で、もごもご動く猫が殊のほか柔らかく暖かであった。

その頃『維摩』では仲間、常連が集合して、ああでもない、こうでもないと協議中であった。『看板娘さん、もうすぐですよ』と白スカーフの男。ジャモウが首を伸ばして、いつもの屋根を見つめた。スズメが3羽、驚いたように飛び立った。

『さあ着いたよ』そう言って男は、木製のドアーに手を掛けた。中から話し合う声が聞こえている。その時男は、聞き慣れた声に一瞬はっとしたようであった。



2013年1月23日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・雪ガマガエルだ! <標高538m>


『雪の山姥』が戸隠山の奥に帰ってしまったと思ったら
今朝は 『雪ガマガエル』のお出ましだ 

『オラオラ 雪ガマガエル様のお出ましだぞ それにしても雪神さんはごっつ降るのう 雪かき頑張れや 上から見とるぞ 気付けてやれや』

この『雪ガマガエル』は お日様が照ってくると 笑い顔になったり 泣き顔になったりまるで百面相のように変わって行く 話しかけてやるといろんな事を教えてくれるんだ

(庵主の日時計日記:自然と私)より

2013年1月22日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ぼたん雪 <標高537m>


ぼたん雪が たえまなく グングンと落ちてくる朝

通る人の影もなく 鳥の姿もみえない沈黙のひととき

高い杉の木がウエデングドレスを纏って行く面白さを

じっと眺めている私の心の中にもこの雪は積もって行く

(庵主の日時計日記:今朝のポエム)より




2013年1月21日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・白の世界 <標高536m>


【落葉松林のむこうには】



部屋の窓を開けて 南の景色を眺める
この遥か遠くには暖かい地があるのだろうか

今朝の太陽はまるで一点に留まっているかのように 日差しは心変わりもせず  温もりは体を包んでくれる 

開け放った窓から 初春の香りを感じる
微かに ほんの微かに・・・たしかに

(庵主の日時計日記:自然と私より

2013年1月19日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 19 <標高535m>



私はジャモウなら雌猫に付いていくだろうと思った。春先のことでもある。猫族の恋の季節である。さあこうなると一体何処へ行ってしまったものやら全く探しようがない。それでも一時間半ほどみんなで探しただろうか。

あたりが薄暗くなって来た。取りあえず女性と庵主様は車で一足先に山を下りた。あと私、甲六師匠、辰兄い、浜ちゃんの4名は庵主様の車が戻って来るまでジャモウを探す事にした。

もう辺りが真っ暗になった頃、四輪駆動車が戻って来た。しかしジャモウはまだ見つかっていない。私は後ろ髪を引かれる思いでやむを得ず修法が原を後にした。涙が頬を伝う。猫でもずっと一緒にいるとそれは家族同然である。無性に悲しかった。しかしひょっとして、直接『維摩』に帰っているのではとの一縷の望みを持って帰路に付いたのであった。

夜の8時頃全員が『維摩』に帰り着いた。しかしジャモウの姿だけがそこには無かったのである。彼が迷い込んできた木枯らしの泣く夜以来、初めての出来事であった。今日はみんなお疲れの様子。後は私に任せてもらいたいと云って皆さんにはお帰り願った。

庵主様の肩ががっくりと落ちて、夜の煉瓦路を影法師となって歩いていた。それからはお雪さんと私の二人だけの夜。なんとも寂しくも哀しい『維摩』であった。

その日から一週間が過ぎた。その間もジャモウの行方は杳として知れなかった。その週の土曜日、常連が集まって情報交換が行われた。庵主様、辰兄い、甲六師匠、浜ちゃん、そしてお雪さん。

皆一様に、暗い感じで、いつものような陽気さがない。そんな時、疾風真麻さんこと、ハヤマさんが入ってきた。『皆さんこんばんわ』いつもの元気なその明るさに『維摩』の中にポッと光が点ったようだ。

『ちょっと、みんな!私ね、昨日北野の外人倶楽部の近くを通ったのよ、そう車でね』『どうしたの?』と私。『その時、猫のような生き物が歩いているのをみたの』『それ、ジャモウか?』と庵主様。

『車でしょ、す〜っと一瞬通り過ぎただけ。はっきりとは判らなかったの。でも毛がジャモウちゃんのようにモジャモジャしていた』『有り難う!それはひょっとしたらジャモウかもな』と私。

『それ一匹だけだったかい?』と庵主様。『そう言われてみれば、もう一匹の猫がいたかも・・・』『まず、それはジャモウじゃな』と庵主様。どうやら山から下りてきて、街中をさまよっている。ジャモウは余り外に出たがらなかったから、土地勘がない。北野界隈からここまでが帰れないんだ。とみんな思った。

『よし明日、捜索に行きましょう』。そう言ったのは三味線屋の辰兄いでありました。何かよからぬ事を考えているのでしょうか?

なんだかほっとした雰囲気が『維摩』に一気に流れました。私は『銀河高原ビール』を開けて、早速皆さんと『ジャモウ捜索隊』を結成したのです。