2012年11月30日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・キャラバッシュ・パイプ <標高504m>



イギリスの作家、コナン・ドイルの創作した名探偵こそシャーロック・ホームズである。彼が愛用したパイプがキャラバッシュ・パイプであった。またの名をゴード・パイプという。ゴードとは「ひょうたん」のことである。それは「ひょうたんとメシャム(海泡石)」が合体した、パイプの中でも特殊なカテゴリーに属しているのである。妹がロンドンで買って来てくれたボクの宝物だ。でも今となってはタバコを吸わなくなったので、パイプの展示スペースに飾ってある。

1129日朝8時、久しぶりの太陽が昇って来た。その日はキャラバッシュ・パイプを飾ってある背後の木窓(きまど)がたまたま開けてあった。杉の木を通して今しも陽の光が射し込んでいる。むかし子供の頃に見た「幻灯」さながらに、壁に映し出されたキャラバッシュ・パイプの映像は、冬にむかう太陽が残して行った、せめてもの癒しの一枚だったのだろうか・・・


(庵主の日時計日記:自然と私)より

2012年11月29日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・雪の朝 <標高503m>


【朝の出来事】



11月にしてはめずらしく20センチもの雪が積もった さしずめ山中では50センチは下らないだろう 朝から黒姫山上空でヘリの飛ぶ音が聞こえている このエリアもあのオスプレイの訓練ルートになっているので カメラを持って雪原に飛び出したのである


オスプレイではなかったが ヘリが機材のようなものをつり下げて山腹を目指して飛んで行く なにか雪害でも発生したのか それともスキー場に機材を運んでいるのか

いずれオスプレイの機影はボクがキャッチするぞ!との闘志が湧いて来た朝の出来事でした

(庵主の日時計日記:空を見上げて)より



2012年11月28日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 8 <標高502m>


イブの夜もすでに10時を過ぎようとしています。外はちょっとした雪国状態。ビルとビルの間が作り出す独特の空気の流れが一種のつむじ風を生み、雪を巻き上げてブリザードのようになる。そこを歩いていると一瞬周りが見えなくなってしまう。もしこれが山の中なら完全に遭難するのである。ホワイトアウトである。

街中でも初めての人間は、パニックに襲われる。顔に吹き付ける密度の濃い雪で呼吸が出来なくなる事もある。それはほんの短い間だけれど、まず路上にかがみ込む事になる。その上に雪は容赦なく落ちかけ、巻き上げ、うっすらと積もる。

もしそれが女性だとすれば、周りから見たとき『雪女』と見える事もある。そんな『雪女』が煉瓦路西入の迷路に現れた。時間は私の記憶では、夜の10時を少し廻っていた頃だと思う。ちょうどジャモウがいつもその時間にオシッコをするのでまず間違いなかろう。

ドアーがコンコンとノックされている。常連なら、ぱっと開けて入ってくるがノックとは珍しい。私はドアーまで行って開ける。雪がさ〜っつと吹き込んでくる。その雪を連れて一人の女性が迷い込んできたのである。

私は女性を店に入れると、ドアーを急いで閉めた。一気に部屋の温度が数度下がったようだ。その女性は、長い髪の毛に雪を纏い、薄いベージュ色のロングコート、小さなバッグ一つ、靴はハーフブーツを履いていた。

体の雪を払って、私にこう言った。『遅くから申し訳ありません。食事は出来ますでしょうか?』『はい大丈夫です、それよりも寒かったでしょう』。 そう言ってまず暖かいおしぼりを出した。女性はしばらくの間、そのおしぼりを両手で包み込むようにして指先を温めている。

とりあえずストーブの近くの席に座ってもらう。傍にはジャモウが寝ている。もう耳を動かし、髭を振るわせ、鼻をぴくつかせている。どうも女性には特にめざといのだ。しばらくすると大分暖まったようで、薄ベージュ色のコートを脱いだ。

『なにか、お飲み物は?』と私。『焼酎のお湯割りお願いできます?』『はい、承知致しました』 そう言って一歩下がろうとして私は彼女の手に血の痕が残っているのに気付いた。が、さりげなくカウンターの中に戻った。

『どちらさんも、お休み、ええお年を』 と言って、師匠が帰って行った。浜ちゃんはしきりにパソコンを触っている。庵主様はカウンターにうっぷして、お休み中である。雪は一層ひどくなって来ている。ラジオからは、兵庫県南部に大雪警報が出されたと告げている。神戸の街はホワイトクリスマスを通り越して、スノウフル・ナイトになってしまった。

私は暖かい『にゅーめん』を女性のテーブルに運ぶ。軽く会釈をしたが、お湯割りを持った手が心なしか震えていた。そこへ入って来たのは五十そこそこの男。ごま塩頭を短く刈った頭領風。『庵主様お迎えに』 と言った。『庵主様お迎えでっせ、さあ、起きて』 と体をゆすった。目を覚ました庵主様は、その男を見て軽く手を挙げた。

その男は煉瓦路を出た広い通りに車を止めている。大きな四輪駆動車が雪灯りの中に浮かび上がっている。庵主様はその男に抱えられるようにして車に向かった。その姿は昔、児玉なんとかと言う右翼の大立て者がいたが、私には庵主様にそんな姿を重ね見たのであった。


Imagined by Jun

さあ今夜も遅くから、『雪女』ですか。白い雪と、手には赤い血の痕跡。いずれにしても10年に一度の大雪です。 このあと維摩には何が起ころうとしているのか?

グッニャオ〜ン(ジャモウ語で、今夜は早寝だ。)zzz・・



2012年11月26日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ファンタステイック <標高501m>


【木がしゃべっている】


『なんて素敵なお衣装ですこと 落葉松さん とってもよくお似合いよ』

『あなただってあんなに高いところまで真っ白にお化粧して 杉さんもお奇麗ですわよ』『ごめんなさい 白樺さんのこと忘れていましてよ』『どうせそうでしょうよ 白い木に雪がかかってまるで雪女のようでしょ』

『みなさん ホラあそこに雪かきをしている人がいるわ 雪の粉を振りかけてやりませんこと』『面白いわね きっと驚くでしょう かけてやりましょう』


そんな話をしながら 木は私の頭の上から金色に輝く雪の粉をかけてきたのです 私は顔をあげてその粉のシャワーをしっかりと受けとめました

周りの木もみんな一緒になって笑い合っている声が朝の空気を震わせています


 








(庵主の日時計日記:自然と私)より

2012年11月24日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 7 <標高500m>


『せんせ、今度のミュージカルお願いしていい、ね、ね、庵主先生!』 なんかもう決め撃ちの感じである。ジャモウがノッソリ起きあがって、庵主様の膝に飛び乗った。庵主様が困っているのが分かったらしい。彼なりのパフォーマンスである。膝の上で、ゴロゴロと喉を鳴らしている。ジャモウがご機嫌斜めの時の仕草である。普通機嫌の良い時そうするのが、猫の世界での一般的傾向であるが、それを一切無視しての振る舞いではある。

『いっしゅうさん、どないしたらええんぜよ、困ったきに』 苦笑いの庵主様。それもその筈、実はこの庵主様と呼ばれている御仁、またの名を「船坂 長庵」というペンネームで知る人ぞ知る、脚本家である。若い頃は、結構レビユーの台本も手がけている。新在家甲六師匠が知っているのは、人情話の世界の事であろう。

『ハヤマさん、それでは考えておく事にしましょうわい』 どうもこの御仁、愛媛、新居浜にも関係があるような方言を使う。神出鬼没である。ハヤマさんは、もう庵主様が引き受けてくれたかの様な歓声を挙げながら今夜のクリスマスチャリテーに出かけて行った。残ったのは、庵主様、甲六師匠、ジャモウ、そして私。なんとも変な取り合わせである。

スイスの名品ヴィルレイが夜の八時半を告げた。ジャモウが耳を幽かに動かした。その後、鼻にキュッとシワを寄せた。誰かが近づいてきているらしい。その時ドアーが開いて、ラルフローレンのハンチング、ヤンピー(山羊皮)のジャンパーにジーンズ姿の『浜ちゃん』こと『浜 裕次郎』が入ってきた。

『ども、おばんです。ども、ども』と言って、カウンターの端に腰掛けた。『久しぶりでんなあ、浜ちゃん』『いっしゅうはん、おひさ』 と言って手に持っていた包みを出す。『蛸ちゅうのママとこで、たこ焼き買うて来ましてん、アツアツでっせ』。 ジャモウの鼻はこの匂いを察知していたようだ。

私は礼を言って、たこ焼きを舟ごとカウンターに並べた。何とも言えない良い匂いである。ソースとマヨネーズのはんなりとした色。青のりの醸し出す海の潮香。ジャモウは早速、庵主様のお膝の上でありついている。が彼は蛸は絶対に食べない。腰を抜かすからである。先祖代々受け継いだ生活の智慧である。さてこの青年、年は三十五、六か、まだ独身らしい。仕事は、定職なし。何で食っているのかと言うと、今流行りの『デイトレーダー』である。

まあ個人の『株屋』とでも言いますか。パソコン一台で、株のネット取引をしてその利益で生活しているらしいのです。私には全く理解できない世界ではある。しかしこのネット取引をバカにしてはいけない。一年間に2兆円近い金が動いているらしいのです。辰兄いなどは、ちょくちょく、浜ちゃんにご教授願っているようだ。どこを買うたかて? 『日本皮革』なんちゃらかんちゃら言う会社らしいのです。なんでも猫の皮を扱うている(?)との本当か嘘か分からん話を聞いたからなのです。

その株どうなったかて、詳しい事は知りまへんが、『猫の皮』だけにニャンともならんらしい。会社自身が『猫かぶっていたんやて』『おい、おい、そんな面白いネタ、ワイもろたで』 と落語家の新在家甲六師匠。

『浜ちゃん、酒何にする』『そやな〜、梅酒もらおか』『梅酒!?』 これも立派なお酒や。一応置いています。あの『うめ〜しゅ』ちゅう奴ですわ。浜ちゃんは、小型のパソコンをカウンターに置いて、早速画面を見ている。

私はパソコンの事はなにも分からんのですが、浜ちゃんに、たってと頼まれて維摩でインターネットが出来るように契約したんです。ネットパブの魁でありましょうか。さっきまでウトウトされていた庵主様がいつの間にか、浜ちゃんの背後からパソコンを覗いている。なにやら、浜ちゃんに指さしながら話している。へ〜とか、なるほどとか、浜ちゃんの感心する声がしている。

あの御仁、株もやるのだろうか。いよいよ得体の知れない人物である。外はもう煉瓦道にも真っ白に雪が積もっている。ビシビシ冷え込んできていて、酒でも飲まなおれんクリスマスイブになりましたんで。



2012年11月23日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・勤労感謝の日に思う <標高499m>


今日1123日は勤労感謝の日です。働ける事に、また働いて下さる方に限りない感謝の心をあらわす、これが勤労感謝の日の意義でありましょう。もう少し堅く定義づけるとすれば『勤労をたっとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう日』という事になるのでしょう。この祝日は昭和23年よりかつての「新嘗祭(にいなめさい)」より名をかえて祝われる事となって広く国民の間に定着しています。

それまでは『新嘗祭』として、古くから天皇がその年に収穫された新穀や新酒を天照大神をはじめ天神地祇にお供えし、農作物の恵みに感謝する最も大切な宮中祭祀であり、現在も昔のまま承け継がれて厳修されています。その歴史は皇極天皇元年(642年)に日本書紀に新嘗祭の記述がありますから、1,370年の歴史と伝統を継承しているのです。

明治36年・明治天皇御製

『豊年の 新嘗祭 ことなくて つかふる今日ぞ うれしかりける

アメリカ合衆国ではThanksgiving Day(収穫感謝日)と呼ばれ11月の第4木曜日になっています。国家安泰、国民の安寧、五穀豊穣を祈り感謝する気持ちは、民族が違っても、人類が持っている純真な願いなのでしょう。

2012年11月22日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ストーブ出番です <標高498m>

【薪ストーブに火を入れた朝】

 

昨日の朝 落葉松の林に雪の花が咲きました OK牧場(自称)も白銀の世界にお色直しです



そんなわけで 煙突の掃除や薪ストーブにもブラッシュアップをほどこし この冬最初の火入れ式を行いました このストーブ一つで家屋のほとんどが暖房出来ます 一律20℃程度の温度が保持出来るのです 毎日の灰処理やガラス窓の拭き掃除などが必要ですが それも楽しみの一つです 小さなECO活動の実践と 格好の「大人の火遊び」といった一面も少しはあるのかなと思えるのです

(庵主の日時計日記:自然と私)より




2012年11月21日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 6 <標高497m>



港神戸の細い煉瓦道に夜の帳は下りました。外は相当冷え込んでいるようです。
お客は、新進気鋭(?)の落語家、新在家 甲六さん。賑やかな人です。『いっしゅうはん、熱いのつけてや。早やまくで頼んまっせ』 とうるさい事。

『今晩は、庵主様。それから、ええ〜と、あんたはんは誰やったかいなあ。う〜んそやシッペはんや』『師匠、いややわ、シッペとちがいます。しっぷうと書いて、ハヤカゼと読みますの。ハヤカゼ マオです』『いやあ〜堪忍、堪忍。わたいいつも高座でしっぺえしてるさかい、つい』。

『師匠、熱いよ、気いつけて』『おおけ、有り難う』。そう言いながら、甲六さんは猪口を口に運んだ。まるで、高座でやっているのと同じ仕草である。『うわ〜、きゅう〜っと五臓六腑に染み渡るで、ええ酒や。庵主様一杯どうです』『私はこれですよって、気持ちだけ』『その透明の酒、なんだんねん?』『これか? ジンや』『ジンて、あの松ヤニのジン?』『そうや、松ヤニのジンじゃで』。

『これ燃えまっしゃろな』『そら火はつくじゃろう、けっこう度数が高いからな』。この男、 師匠とは呼ばれているが、それはこの『維摩』の中だけである。普段は、『甲六!』と周りから呼ばれている。まだ一人前にはなっていない。

私は、殻付牡蠣を二つ取りだして、口を開けて海水を落とした。ほんの少しケチャップをのせて師匠の前に出す。仄かに汐の香りがする。的矢から今朝届いたばかりの上質の牡蠣である。今から大寒の頃までが、一番美味い時節である。師匠はまた落語の仕草でその重厚な牡蠣の身を頬張った。ケチャップの酸味が的矢の牡蠣の風味と絶妙の和合(ハーモニー)を奏でる。

今師匠の前に出した酒は、大阪は池田郷の銘品、『呉春』の特選である。この酒の旨さは、味わった者しか分からない。当然であるが、深い地面の底から自然に湧き出したかのような切れがある。それでいて地酒の持つ『頑固さ』は堅持している。色んな酒を扱って来たが、ここに納まったような気がする。とは言え、これは私個人の肩入れが、大ではあるが・・・。

『先生』と 突然甲六師匠が庵主様を見て言った。『私が、先生?バカなことおっしゃるな』。庵主様は気色ばんで答える。『先生でっせ。なんでて? わたいら、色んな人と付き合うてまんねや、庵主様が本書いてはんの知ってまっせ』『師匠それ、ほんま?』 とハヤマさん。『ほんまも嘘もあるかいな。先生これで結構有名でっせ』。庵主様は、黙して語らず、だんまりを決め込んでいる。

庵主様は、ただの隠居の身なのに若いのが二人してああでもない、こうでもないと勝手な話。ジャモウはオシッコに行ったのか薪束の上にいない。外ではどうやら雪が本格的に降り出したらしい。『元気でジャモ〜レ』(ジャモウ語で軽い挨拶、またね〜)。

2012年11月19日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・越後富士・妙高山 <標高496m>

【今朝の妙高山】


すっきりと晴れ上がった空に越後富士・妙高山は神々しい姿を見せてくれました この雄大な景色が見たくってここ妙高市に住まいを移したと言っても過言ではありません


氷点下1℃の身を切る様な霊気が 体内の細胞全てを浄化してくれるのを感じています 霊峰に向かって今『神想観』を実修しています

『山河草木国土悉皆成仏有情非情同時成道』

12月8日 暁の明星を見ながら粥を口にされた釈尊の最初のお悟りを何度も声に出して称えます 嗚呼有り難し 感謝合掌

(庵主の日時計日記:自然と私)より 

2012年11月17日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・薪の準備完了 <標高495m>



2年前に薪割りを完了して 乾燥させていた木をデッキに竝べました 薪ストーブを焚く始まりの時期(12月〜年末)に使います

年が明けて1月からは 地下室に収納した比較的大振りの薪を使う予定です これは楢や櫟(クヌギ)や栗等の堅い木が主力です燃焼時間が長く 熱量も多い良質の木なのです
化石燃料を出来るだけ使わず CO2の発生を抑えます

ちなみにボクがストーブに使用する木の種類はこうです

1 コナラ・ミズナラ  8 桧(ヒノキ)
 2  クヌギ       9 柳
 3     樫           10 アカマツ
 4    ホオの木      11 スギ
 5    リンゴ
 6    白樺
 7    栗

註)1〜9 までの木は薪割りをして1年〜2年乾燥させます
   10〜11  までは3年乾燥させると油脂やヤニは減少します

(庵主の日時計日記:自然と私)より 

2012年11月16日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 5 <標高494m>



さて今頃、ジャズパブ維摩ではどんな事が起こっているのでしょうか。ジャモウは何をしているのでしょうか。そっと覗いて見ましょうか。

実はこの庵主様、不思議な霊能力と言うのか、神通力と言うのか『木』と話をしたり、犬や猫の気持ちが理解できるらしいのである。先日も六甲山の森林植物園に出かけたお客の一人が、途中大きな木に抱きついている庵主様の姿を見たと話してくれた。

『だけどじゃ、今夜は冷えるきに、ここからは出んと、こやつは言うとる』。その瞬間、ジャモウがニコッと笑ったのを見たのは庵主様だけであった。もうジャモウはその膝に顔を擦りつけている。相変わらずよだれが糸を引いている。

疾風真麻さんと庵主様が、止まり木に並んで腰を掛けている。ビールを少しだけ飲んでハヤマさんは結構口が滑らかである。ちょっと二人の会話を聴いてみましょうか。

『庵主様、来年だけど、今の素人劇団でミュージカルをする事になったの』『へ〜ミュージカルねえ、どんなお芝居?』『まだ、決まっていないわ、来年の秋だから。でももうそろそろ決めないと・・・』そう言ってハヤマさんは、残ったグラスのビールを飲んだ。

『庵主様、なにか良いアイデアないかしら?』『そのミュージカルのかね? 私に言ったってねえ〜』『でもどなたかから聞いたわ。庵主様は、物書きだって』『誰が、そんな事』 と庵主様は当惑気味である。でもそれは、当たらずと言えども遠からずである。私も知り合いの新聞社のある人から聞いた事があった。なんでもある大学の客員講師をしていたとか。しかしそれ以上の事は何も知らない。

『ところで庵主様、お住まいはどちらですの?』『う〜ん、私の隠れ家かね?』『隠れ家って?』『ハヤマさん、私には決まった家はないんじゃよ』『ブルーテントですか?』 庵主様は笑いながら、白い髭に手を当てた。ジャモウがひとつクシャミをした。どうやら、ストーブの火が落ちたらしい。私はジャモウを抱き上げて、カウンターの椅子に移した。クヌギの薪束から太目の木を二本、ストーブに放り込んだ。

パ〜ッと周りが明るくなる。ジャモウはもう自分の定席に飛び移っている。それにしてもなんともしなやかな身のこなしである。確かに猫のジャンプ力には驚嘆させられる。体長の十倍くらいの塀にも、一伸びの跳躍で飛び上るくらいは朝飯前である。ぐうたらジャモウもその能力はまだ衰えてはいないらしい。

『ブルーテントじゃないが、あちこちから風や月の光は入って来るな』『格好いいじゃ〜ん。それって京都の嵯峨野にある落柿舎みたいなの?』『ホッホッホ、落柿舎か、ハヤマさんなかなかの風流人じゃな』 と庵主様は感心している。左手指が、ロイヤルコペンハーゲンのジングラスに追加を求めて音を立てた。今回はジャモウは目を開けずに、薪ストーブの暖かさの中で、庵主様の『隠れ家』の夢を見ているようだ。

『いやあ、どなたはんも今晩は。それにしてもよう冷えまんな。こりゃ半端やおまへんで』 そう言いながら飛び込んで来たのは、この頃ちょっと売れ出した落語家『新在家 甲六』(しんざいけこうろく)さんである。今日も大阪千日前の寄席の客席整理係の仕事が済んで神戸に帰って来たとか。冷え切って、細面の顔が青白い。

またこんな変なのが現れましたよ。これから今夜のクリスマスイブ一体どうなるのでしょうね。ウウ〜〜寒う〜、おしっこ、おしっこ。ではまた、ジャモネンコロ(ジャモウ語で、おやすみ)。


Imagined by Jun



2012年11月15日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・懐かしの電車をスイーツで <標高493m>



ここは阪急電車宝塚南口駅前に建つ『宝塚ホテル』のロビーです昔の電車の1/15のスケールが飾ってあります
これはパテが作った全てお菓子で出来ている模型です


この電車は明治43年当時走っていた箕面有馬電気軌道(現阪急電鉄)1形です 全長1m、重量10Kg(車体部分)の阪急電車です
ボクはこの『宝塚ホテル』が気に入っていますので 暇があるとよくここでコーヒーブレイクをしたものでした

(庵主の日時計日記:歓びの発見)より



2012年11月14日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・今雪が降り出した <標高492m>


【今冬の初雪です】

とうとうやってきました 杉の木のてっぺんから

ハラハラとまき散らす様な雪が降って来ました

ドームの屋根もまもなくうっすらと化粧をするでしょう

11月14日 水曜日 朝8時10分 今からなが〜い白の世界が

始まるのです まずは記録に残しておきましょう

(庵主の日時計日記:自然と私)より



去年は11月22日が初雪でした その日の景色です



2012年11月13日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 4 <標高491m>



北の地方ではもう雪が降ってストーブの暖かさが部屋の中で睡魔を誘っていることでしょう。神戸海岸通り旧居留地 煉瓦路西入る、ここ『ジャズパブ維摩』にもいよいよ北風の吹く季節がやって来ました。

そろそろ街では、歳末商戦が始まる頃になった。神戸の街ではあのいまわしい阪神淡路大震災の後、傷ついた人々の心の癒しと、速やかなる復興を願って、『ルミナリエ』が始められた。この時期、光のシャワーの中を歩む人々は五百万人を越える。この『ルミナリエ』は年末の神戸の街によく似合っていて素晴らしい。

そしてクリスマスがやってくる。大震災で壊れていた、神戸大教会も来年には再建されクリスマスのミサはさぞ荘厳にして、信者の皆様の歓びで包まれる事でしょう。『維摩』のある旧居留地は、繁華街から少し離れているのでその賑わいは直接伝わっては来ない。船の汽笛と、霧が流れていく囁きのような波動が部屋の隙間から忍び込んでくるだけである。

チロチロと青白い炎を上げながら燃える薪の火に、厳しい冬の訪れを感じて、ホットウヰスキーに浮かべたチョウジの香りが脳細胞の一つ一つに酒精を運んで来る。今日は12月24日、クリスマスイブである。朝から北の六甲連山には雲が厚くかかって、冷たい六甲おろしが元町からこの煉瓦路までビルの間の風道を吹き下ろしてくる。

ジャモウはストーブの横で、眠ったままウンともスンとも言わない。そんな午後、冷たい風に押されるかのようにドアーが開いて、作務衣姿の庵主様が入って来られた。その瞬間、ジャモウの耳はピンと立ち、長い髭が震えた。そしてもう起きあがっている。

『いらっしゃいませ、今日はお早いですね』『ああ、ちょっと用事があってね。途中寄り道をしておった』『外はお寒いでしょう?』『いっしゅはん、今夜はまっこと雪になるぜよ』。庵主様は、父方が四国高知の出であるとの事で会話の中に土佐弁が混じることもままあるのだ。

『ホワイトクリスマスを迎えるわけですね』『ずいぶん昔のことじゃが、学生の頃あれは原田の森の上筒井学舎でのイブの礼拝、懐かしい良い時代じゃったな』。そう言いながら、庵主様は膝をなめ回しているジャモウを撫でている。まるで自分の孫をいたわるかのようにである。

『寒いよ〜〜、ううさむ』。と大きな声でドアーを開けたのは、ハヤマさん事、疾風真麻さんである。『いらっしゃい、どうしたのこんな時間に』『阪急六甲の近くの孤児院で今夜クリスマス会なの』『へえ〜、ハヤマさんえらいんだ』『あっ、今晩は庵主様、お久しぶりです。毎年の事なんですよ』 と疾風真麻は、ほっぺたを真っ赤にして子供のように笑った。優しさと清らかさを兼ね備えた素敵な女性である。今夜その孤児院でクリスマス劇を上演するのだと言う。

『いっしゅうさん、今夜の劇、ネコが出るんだけどジャモウ借りれないかしら?』『ジャモウを!そらあかんわ、こんなグウタラ猫、なんの役に立つかいな』『そうお・・駄目え?ジャモウ君だめだってよ!』 とジャモウの耳元で話す。

『ワイも孤児やで、なにするのか知らんけど、なんな様なら行ったろか』と言っているのだが、それは誰にも聞こえない。『いっしゅうさん、ジャモウまんざらでもない顔しとるぜよ』『庵主様そんなん、わかるんですか?うっそう〜』 と大げさな身振りは、ハヤマさん一流の宝塚バージョンである。


Imagined by Jun

2012年11月12日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・森の友人を訪ねて <標高490m>

【信越国境を越えて】


JR信越本線の妙高高原駅を越えて少し走るともうそこは長野県に入る ここは『国境の街』である むかし東海林太郎の歌った歌に出てくる『凍り付くよな国境(くにざかい)』なのであります
ブルーベリーや野菜作りのボクの師匠 S氏の友人で 一人森の中に住んでキノコの栽培をしているW氏を訪ねました


約1000坪の敷地はクヌギ、ミズナラ、ほうの木、柳、落葉松などで覆われています ここらで冬は4mの雪が積もりますから W氏は12月には新潟市内の実家に帰って行きます
とても山道には車も人も入れないからです













その日は雨上がりの朝でした 『こちらに来て下さい』とのW氏の案内で森を歩きますと 倒木にたくさんのナメコが出ているではありませんか 『一雨の後のナメコは ほらこんなに美しいのです まるで宝石のように光って』とW氏

ナイフを借りて一つづつ丁寧に切り取っていきます 少し根を残しておくとまた出てくるとのことでした
なかなか手に入らない新鮮ナメコを沢山頂いてきました 丹波の黒豆仕立ての味噌を使ったみそ汁に入れて食べましたがその『ぬるしこ感覚』は一生忘れる事の無い美味さでした 日本の国って良いですね〜 しみじみそう思いましたよ

(庵主の日時計日記:自然と私)より

2012年11月11日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・妙高高原混声合唱団定期演奏会 <標高489m>

【妙高高原混声合唱団定期演奏会 第2部報告】

第2部はゲストによるピアノ演奏より始まりました
古川 真侑さんによる 
1.『ピアノのために』より「プレリュード」 作曲:ドビュッシー
2.『無言歌集』作品19-1 「甘い思い出」    作曲:メンデルスゾーン

古川 彩音さんによる
1.『星の伝説』「オルフェウス」       作曲:古川 彩音
2.『ロマンス』変二長調 作品24-9       作曲:シベリウス

古川 奏音さんによる
1.『あの空の彼方へ』                             作曲:古川 奏音
2.『アラベスク』ハ長調 作品18         作曲:シューマン

ピアノ連弾 古川 彩音 奏音さんによる
〜ラフマニノフ〜 連弾のための6つの小品  作品11より
1.『スケルツ
2.『スラヴ


妙高高原混声合唱団の当日披露した歌曲
指揮:古川  郁   ピアノ:池田 祐子
第1部
1.峠の我が家          アメリカ民謡
2.むかしむかし         作曲:不明
3.『リボンの歌』〜オーロラ〜  作曲:黒沢 吉徳
4.合唱組曲 くびき野より「春」 作曲:富澤 裕
5.県民の歌より「故郷の春」   作曲:岩河 三郎

第2部
混声合唱組曲 「母の手」より
1.たんぽぽ           作曲:大田 桜子 作詞:星野 富弘
2.いのち
3.母の手
4.木のように

ご来場の皆様のご支援とご協力を得て 今年も定期演奏会を開く事が出来ました 団員一同心より感謝申し上げます
これからも皆様に喜んでいただけるよう頑張ります なにとぞ宜しくお願い致します 雪のシーズンが始まります どうかお体を大切に又のお目もじを楽しみに致しております

2012年11月10日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 3 <標高488m>


世の中、以前に比べて住みにくくなったというのが、ここに来る連中のトータルな意見であります。中でも『庵主様』、月に二、三度顔を見せるが、何をして生活しているのかは誰も知らない。本人がよく『年金生活者の我々は』、などと枕詞を使うので、みんなそう思っているだけで本当のところは未だに誰にもわからないのです。

今夜も7時半を過ぎた頃でした。杖をついてふらりと入って来ました。『庵主様こんばんは』とハヤマさんが挨拶をしている。『どうされたのですか?杖なんか持って』『アホ、杖じゃなか、マウンテンストック! ん〜ん これでもドイツ、レキ社の優れ物じゃで』『杖とどう違うんですか?』『杖はただの棒じゃ、これはシャフトの中に、スプリングが仕込んであって、歩いていて、疲れがうんと少ないのじゃ』

『ああ、山に登る人が持ってるあれ?』『そうじゃ、ワシにとっては、階段も坂道も山みたいなものじゃよ、まったく』。

『庵主様、お元気でしたか?』『いっしゅうさん、元気でしたよ、気持だけはね』『その後お体はどうなんです?』『はい、小康状態を保っとります』『そりゃ、まずまずですね。お寒いからお風邪にはご注意を』。
庵主様はおしぼりを手に取って額のあたりを拭いておられる。

『なに差し上げましょ』『ジンをもらおか』『どうなさいます』『ストレートで』。
『ええ〜っ、ジンストですか?』『そや、パンストとは違いまっせ』『いややわ、庵主様』。ジャモウがムクッと起きあがって、庵主様の膝のところに近寄って行く。じゃれつくように、体を擦りつけている。庵主様の紺色の作務衣がジャモウのヨダレで濡れて光っている。

『こらジャモウ!』と私が叱るが、離れない。それもその筈、庵主様のお家にも猫がいるらしい。それは本物のシャムネコらしいのだ。それも血統書付きの雌猫。ジャモウがじゃれつくのも、無理はない。そんな時・・・

『じゃまするぜ』と一人の男。ヤンピー(山羊皮)のブルゾン、白いマフラーを小粋にまいて、革の長靴を履いている。カウンターの隅に腰掛けておもむろにタバコに火を付けた。私はメル・トーメの『ナイト・アンド・デイ』をピックアップした。
『ようこそ、お酒は?』『ビールを』『領事館ビールでよろしいでしょうか?』『いいな』。余りしゃべらないニヒルな雰囲気である。ジャモウはもう庵主様の雌猫の臭いをかいだのか、安心してまどろんでいる。ダッチウエストの優れものが、良い火を揺らしている。

『失礼ですが、こちらの方ではございませんね』『ああ、気仙沼です』『遠いところから、ようこそ。庵主様、こちらの方、気仙沼からお越しだそうで』『ほう、そうですか。こんばんは、私も昔、気仙沼に二年ほどおりましたよ・・・良いところでした』。

庵主様がそう言った時、その男の顔に一瞬、なにか分からないが、戸惑いの影のようなものが過(よ)ぎった。その男はそれ以上しゃべる事なくビールを飲み、タバコを吸っている。ジャモウがのっそりと起きあがり、背を伸ばして弓反ると、おもむろにその男の傍に近寄っていく。ジャモウは人見知りが激しく、そう簡単には人間に寄りつかないのだが・・・。

特に三味線屋の辰兄いの傍へは、全くと言っていい程である。それは殺されていった三毛猫の断末魔の叫び声が彼には聞こえるとでも言うのだろうか。ところが庵主様には、まるで猫がアケビに酔うように擦り寄っていく。シャムの雌猫は絶大なる影響力を発揮するものである。その時のジャモウは、発情している事さえあった。それを見て、疾風真麻さんは、『キャー』といって赤面したのであった。

『お前そんな、年か!?』と言って辰兄いが揶揄した。ジャモウは、いつまでも庵主様の膝を離れなかった。私は、庵主様こそ日々その雌猫を『猫かわいがり』しているのだろうと思った。いやはやまことに霧に包まれたようなお人である。

白マフラーの男は、ジャモウを気にもかけず飲んでいる。私は明石蛸の薄造りとわさび醤油を酒の肴に出してみた。男はそれをじっと見ていたが、舌の上にのせて大きく頷いた。小一時間ほどいただろうか、金を置くと軽く会釈をして逃げる様に出て行ってしまった。

さあ、ちょっと人生の裏街道を歩いているような、こわもてのお兄さんが登場です。庵主様と気仙沼の関係は?その白マフラーの男の引きずっている影とは?『ジャズパブ 維摩』に港町神戸のクリスマスが近づいています。



2012年11月9日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・妙高高原混声合唱団定期演奏会 <標高487m>


【 第33回 妙高高原混声合唱団定期演奏会第1部のご報告 】

『妙高高原音楽の夕べ』と題して 混声合唱団の定期演奏会が11月8日 妙高高原支所にて夜6時30分より開催されました
午後から雲も切れ 暖かい日差しが周りの紅葉を一層際立たせていました 今回は賛助出演として男声合唱 メイル・クワイア 3 1/2の皆様方と 私どもの合唱団指揮者 古川 郁先生のご令嬢 三姉妹によるピアノ演奏が素晴らしい華を添えて下さいました 心より感謝申し上げます


妙高高原支所より遥か妙高山を眺めますと 谷筋には雪が積もりいよいよ本格的な冬の到来を感じる夕方でした


第一部は混声合唱団の出演で幕を開けました 平日の夜にもかかわらず多くの方々のご来場を得 厳しかった練習の苦労も吹き飛んでしまいました
各パートの持ち味を生かして精一杯歌ったつもりですが果たして如何だったでしょうか?

メイル・クワイア3 1/2         指揮:福田 伊治

1. いざ起て戦人よ       作曲:グラナハム  作詞:藤井 泰一朗
2. 里の秋           作曲:海沼 実   作詞:斉藤 信夫
3. 男声合唱組曲「旅」より 旅立つ日(アカペラ)作曲:佐藤 眞 作詞:田中清光
4. からたちの花        作曲:山田耕筰   作詞:北原 白秋
5. バイカル湖のほとり ロシア民謡 訳詞:中央合唱団 編曲:小山 章三
6. アヴエ・マリア   公教会祈祷文(ラテン語) 作曲:アルカデルト
 
男声4部合唱 メイル・クワイア3 1/2の演奏は 重厚なハーモニーに聴くもの全てが痺れたことでした 混声合唱とはひと味もふた味も違ったハーモニーの素晴らしさに酔いしれました 友情出演まことに有り難うございました

次回は第2部のご報告をアップする予定です
(庵主の日時計日記:歓びの発見)より

2012年11月7日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・JR大阪駅周辺 <標高486m>

【生まれ変わったJR大阪駅】

阪急電車 大阪梅田駅からJR大阪駅に広がる一大商業エリアは素晴らしい景観に生まれ変わっていました
従来からある大丸百貨店の近くには三越伊勢丹が進出していました。人気のルクア大阪 ヒルトンプラザウエストや阪神百貨店 ヨドバシカメラなども元気いっぱいでしたよ


センスの良い店が並んだ回廊を歩いてJR大阪駅の方に向かいますそこにはアトリウム広場や時空の広場が訪れた人たちに非日常の世界を提供してくれるのです まさにサプライズの連続でした



JR大阪駅をまたぐように大阪ステーションシテイーがあります イベントが開催出来る空間と ライブショーなどの舞台もあり中心にはカフェテリアが出来ていました



JR大阪駅を見下ろすかたちで レストランの野外席に座ってみました ひっきりなしに出入りする列車や電車を眺めていると 乗降客ひとりひとりの行動が 人生の『一瞬の今』を切り取っているかのような『厳粛な営み』に感じられたものでした 

(庵主の日時計日記:歓びの発見)より

2012年11月5日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 2 <標高485m>


『いっしゅはん』、辰兄いは私の事をこのように呼ぶ。『ジャモウはいつ来てもワイには懐きよらんな』『そらそうやろ、三味線屋ちゅうの、よう知っとるさかいな』と私。『せやかて、こいつは三毛とはちゃうで』『三味線ちゅうのは、シャムではあかんのかいな?』『あきまへんな。三味線の胴には三毛がピカ一や、それも雌の腹の皮でっせ』。

ジャモウは二人の会話に耳をピクピク動かしながら聞いていたが、どうやら安心したのか眠りについたらしい。クヌギの薪束の上に小さな毛布を敷いてもらって彼はシシリーの港町の夢でもみているのだろうか。
『いっしゅはん、デーク・エリントンのA列車で行こう頼むわ』。彼のお気に入りの一曲である。ジャモウがうっすらと目を開けて、『またか』というような仕草をしたが、辰つあんは気付いていない。

『酒は?』『ハイボールやってんか』私が準備する間にいつものパイプを取り出して、もうくゆらしている。ジャモウは不思議と煙草の匂いは嫌がらない。それよりも、まとわりついてくる煙を追う仕草さえ見せる。
ひょっとしたらシシリーの港のバーもこんな感じだったのではと、あらぬ幻想を抱いて私は一人頷くのである。

Good Evening.ハ〜イ』と言いながら、薔薇の花束を持って入ってきたのは、自称タカラジェンヌ『疾風真麻』(はやかぜ まお)さんである。『いっしゅうさん、こんばんは。あれもうやってんの、辰兄い』『悪かったなあ、ハヤマさん』。辰兄いは疾風さんの事をこう呼んでいる。
『は〜い、マスター。プ・レ・ゼ・ン・ト』。と言って、深紅の薔薇を恭しく差し出す。まるで、ヴルサイユの薔薇の芝居のようにである。『メルシ、オスカル・ジェルジュ』とすかさず辰兄いが受ける。
三人が揃って笑ったものだから、ジャモウが驚いて頭を擡げてこちらを見た。『ごめんね、ジャモウちゃん。ほら君にもおみやよ』。と言ってハヤマさんは、ポケットからビーフジャーキーを取り出して鼻先に持って行く。

ハイボールが出来たところで、ハヤマさんは辰兄いにもジャーキーを渡す。『おおきに、しゃあけんどワイは猫と一緒かいな』『辰つあん、猫と仲良うしいや。来世の事もあるんやで』『いっしゅはん、怖いこと言っこなしや』。いつの間にか『A列車で行こう』が終わって、また維摩に優しい、静けさが戻ってきていた。

疾風さんは、なにか台本のようなものを取り出して読んでいる。辰兄いは、パイプのボウルの中をダンパーで押さえながら、競馬の出馬表に赤鉛筆を走らせている。私はドアーを少し開けて煉瓦路を眺めた。

暗い路地に街灯がポツンと一つ灯っている。潮の香りとともに、船の汽笛が聞こえて来る。明日も天気だろうと勝手に決めて店に戻った。ジャモウはまだ、ジャーキーにじゃれついている。

二人目のお客さん登場。疾風真麻さん、いい娘ですよ。是非一度会いにいらして下さいよ。ああ、その時、ビーフジャーキーをお忘れ無く。皆さん今日も一日ご安全に。維摩(ゆいま)、主人敬白。

2012年11月4日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・雑木林の紅葉 <標高484m>



急激な冷え込みで 白樺林の紅葉もすすみました


今朝5時20分の気温です 室内が15.2℃ 外気温度は1.1℃
いよいよ本格的な冬に入って行くようです 来週中にはわが家の周辺にも雪が降るでしょう

(庵主の日時計日記:自然と私)より

2012年11月3日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・秋彩の道 <標高483m>


この道を通って貴方は訪ねて来てくれましたね 幾度か立ち止まって深呼吸をしながら 一歩づつ

高原にはミヤマアカネが飛び交い空には鷹が遊弋していましたね あの日は高原にしては珍しく暑い午後でした 一緒にオープンデッキに座って ハーブテーを飲みながら来年の春の話をしたものです 笑いながら 頷き 森を指差し 大きく息を吸って 風が頬を撫でて過ぎて行くのを感じていましたね

でも貴方はもうこの世にいません 昨日お別れをしてまいりました ランをいくつか手向けながら はからずも泣いてしまいました 春の約束どうしようか・・・と呟きながら傍を離れました

あのあと妙高山は真っ白に変わりましたよ 雪が麓まで降りて来たのです カップ酒をひとつ買って 坂道を一時間かけて歩きました ほんとは貴方とこうして歩きたかったのです

でも春の約束はきっと果たしますから 心安らかにお眠り下さい
合掌 信仰の友に捧げる詩

(庵主の日時計日記:生きて愛して)より




2012年11月1日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 1 <標高482m>



旧居留地煉瓦路 西入る  『ジャズパブ 維摩』

【プロローグ】

『ジャズパブ 維摩』(ゆいま)と読みます。釈迦の弟子で、在家のままで悟りを得たと言われている『維摩居士』。その名前を付けた神戸の小さなジャズパブで繰り広げられる人間模様。涙あり、笑いあり、ちょっと怖いお話、それに男と女の色模様。どの様な展開になるかはボクにもわかりません。一週間に2回程度のアップです。全てフィクションです。それではどうかお楽しみ下さい。(平成19年秋)

☆ ★ ☆

私は、『旧居留地煉瓦路 西入る』でジャズパブ維摩(ゆいま)の主人と言うのでしょうか、まあ外人さんにはマスターと呼ばれています。いずれにしてもそこの『あるじ』であります。自己紹介をしておきましょう。年齢は61歳。名前は、井筒 修(いづつ おさむ)、常連は『いづしゅう』と呼ぶ。略して『いっしゅうさん』が通り名であります。

この神戸海岸通りの小さな一隅に店を構えたのは、今から35年程前の事でした。地元の大学を卒業して、しばらく大阪の大手薬品メーカーに勤めていましたが、ある事情で会社を辞めて、生まれ故郷の神戸の地で小さな『隠れ家』の様な店を持つことにしたのです。

この話には、実を言うとスポンサーがいたのです。この神戸の地で手広く真珠の商売をしていた私の叔父がその人でした。叔父は私を大学まで出させてくれたまさに親代わりでありました。と言うのは私の両親は、今から45年ほど前にある事故で帰らぬ人となったのでした。

その時から叔父は私を自分の家に引き取って、高校、大学と全ての面倒を見てくれたのです。彼の奥さん、私にとっては叔母になりますが、人偏に善人と書いた様な優しい女性でした。市の孤児院などにも物心両面の援助を欠かない陰ひなたのない人でした。
そんな中で育った私は、今から思うと幸せ者でした。両親と若くして別れましたがその寂しさ、悲しさを、カバーして余りある叔父と叔母の愛に守られてここまで来た男でした。まあ自己紹介はこれくらいにして、相棒を紹介しておきましょう。

ほら、そこの薪ストーブの傍で一際長く寝そべっているのがそれです。『おい、ジャモウ起きてご挨拶だ』。そう言ってわたしは、ジャモウに声をかけた。変な名前だとお思いでしょうが、毛足が長く、モジャモジャであるから『ジャモウ』と呼んでいるのです。本人(?本猫?)も気にいっているようで、私が声を掛けると一回目はまず無視をする。二回目にやっと眠そうな顔を上げる。シャムがかかった雑種ではあるが、お客の中の猫オタクに言わせると、とても珍しい猫だとの評価を頂いている。彼(言い忘れていましたが雄です)は、ある寒い木枯らしの吹く夜、閉店間際の『維摩』にソ〜ッと忍び込んできました。私が木のドアーを締めようとしたその時、まるで忍者のように音も立てずに入り込ん出来たのです。

この寒さに追い出すのも忍びないので、一晩だけと思いドアーに鍵を下ろしました。その時からジャモウの定席が、薪ストーブの横にある薪の上という事にあいなったのです。

どこで飼われていたのだろうか。港町には外国航路の客船や、商船が出入りします。これは私の想像の域を出ないのですが、そこで船員に飼われていたのが迷いだして、神戸の街に不法入国する事はないとは言えない。

客の中の猫オタクがこんな事を言った。『マスター、俺が船に乗っていた頃、南イタリアのシシリーに上陸したのよ。その時港町の居酒屋にいたのにそっくりだぜ。ひょっとすると、そいつじゃないかね』って。

まさかとは思うが、聞いていて面白い話である。出入りする客の中には、なにか訳ありで、影を引いているのもいる。それを癒しにここを訪ねてくるのかもしれない。ジャズの音色と、酒、煙草に痺れたい連中ばかりであります。

ジャモウは、彼らを睥睨しながら『しっかりしいや』とでも言っているような面持ちでじっと眠ったふりをしている。その時です、ぶ厚いドアーを押して『辰つあん』が入ってきました。ジャモウはもう構えています。ちょっと嫌いな人種らしい。なぜなら『辰つあん』の商売は、ここ三宮で三味線屋を営んでいるからであります。