2013年5月31日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・この緑はどうだ <標高 628 m>

【フィトンチッドを浴びながら】


雨を受けて一日で一気に緑が濃くなった落葉松林 森の奥からも香(かぐわ)しい空気が放出されて ボクの体内に浸透して行くのを感じている 



妙高高原の梅雨時は最高の季節かもしれない しっとりとした自然 温泉もペンションもこの時期はゆっくりと滞在出来て 絵を描くのもバードウオッチングにも良いですよ

まだ春の山菜がいっぱい 川ではイワナが釣れますよ 囲炉裡に炭をいこして イワナの塩焼きと骨酒も楽しめますしね

是非この雨の季節にいらして下さい 心身ともに癒されるでしょう 高原の住人 庵主よりのおすすめです

(庵主の日時計日記:自然と私)より


2013年5月30日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 45 <標高 627 m>


兵庫県警の刑事が二人、「ジャズパブ維摩」を訪ねてきたのです。コーヒーカップを皿の上に置いた安永刑事が、ゆっくりと顔をあげて訪問の目的を話し出しました。

『実は一ヶ月ほど前に、宮城県である事件が発生しました。殺人未遂なんですが、その犯人とおぼしき男の行方が分からないのです』『それが私どもと何か関係でも?』と私。

『その手配中の男はですね、ああ井筒さん、気仙沼はご存知ですか?』『行った事はありませんが、知っていると言えば知ってはいます。ただ話に聞いた程度ですが』『その男は気仙沼に住んでいた人物らしいのです。もう何年か前に妻と別れて今では一人身らしいのです』。

『その男が一体・・・?』『宮城県警の捜査によると、以前別れた女性の名前が新谷暁子と言うのです』『新谷暁子?』『井筒さん、ご存知ですか?』『同姓同名の女性は知っています。その人も宮城県気仙沼出身と言っていました・・・』。

『我々もある程度調べております。その女性がここ神戸に出てきているという事もね』『それでまたなぜ?』『いや、実はその男がかなり危険でしてね、前科もあるのです。逃げる途中で身よりを頼ってですね、ひょっとして新谷暁子さんを探し出して、訪ねて来るかも知れないと考えています』。

私はその話を聞いて驚きもしたが、ひょっとして彼女を訪ねて来るどころか、大いにその可能性があると感じた。逃亡者の感覚には鋭いものがある。もし今彼女のところへその男が現れたとしたら大変なことになる。暁子さんの結婚式は1123日なのである。

なんとしてもその殺人未遂の犯人を捕まえてもらわねばならない。私は刑事にこういった。『私の知っている新谷暁子さんはきっとその人でしょう。昨年のクリスマスイブの夜、ここに倒れるようにして入ってきました。確か気仙沼で結婚した相手がギャンブル狂いで借金地獄。自分が夜の街に働きに出て体を壊し、行き着くところが離婚。とまあそんな話でした』。

『そうですか。ご協力有り難うございます。ではもしその男がここを訪ねてきたら速やかに連絡願います。これが顔写真です』。そう言って一枚の写真を取り出して私に見せた。

瘠せた顔に鋭い目つきが印象的だった。私は新谷暁子について知っている事は全て刑事に話した。そして保護して貰うよう頼んだ。警察は当然そこまで考えているとの返答だった。

二人の刑事は礼を言って帰って行った。私は、さてどうしたらいいか迷っていた。そうだまず庵主様に相談をして、新谷誠さんと会おう。彼に今日の事を話し、暁子さんにどう伝えるか相談しよう。

早速庵主様に電話を入れた。簡単に用件を話すと、庵主様は今夜ここへ来るとおっしゃった。その時誠さんも連れて行きましょうとのご返事。どうやら割烹『気仙沼』の内装の件で、今日まこっちゃんと会うらしいのです。

私は庵主様を信頼している。普段は飄々としておられるが、あれでなかなか度胸が据わっている。昔は神戸の町でもちょっとは顔が売れていたらしい。その道の男達からも一目置かれていたと友人のぶん屋(ぶんや=新聞記者)から聞いた事もあった。

さて庵主様、新谷誠さんを交えての対策会議。大きな事件に発展しない事を祈らずにはいられない私でありました。


2013年5月28日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・なんて可愛い! <標高 626 m>

【こんにちは アマガエルのアマンちゃん】


おやっ そこにいるのは アマンちゃんじゃない?

庵主さん お早うございます あたたかくなったので アマン起きてきちゃいました  


でもまだ君たちの仲間の姿は あまりみかけないねえ ところで あしたの天気はどうなの わかるかい?

う〜ん おなかのあたりがちょっと冷たいから 雨もよう!

有り難う じゃあボクも薪の整理をしますよね そうそうこの前ね 薪の上でシマヘビのスイングさんが日向ボッコをしていたよ

スイングさんはやさしいからアマン怖くないよ ともだち

暖かい陽の光を受けて アマンちゃんは笹の葉の上でまた眠ってしまいましたよ 横を流れる川には 二輪草の群落があって白い小さな花がいっぱい咲いています イワナのハヤオ君が渓流を遡って行きます 春と初夏が一緒にきた妙高高原杉野沢からのレポートでした


(庵主の日時計日記:自然と私)より

2013年5月26日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 44 <標高 625 m>


それは、海岸通り煉瓦路に木枯らし一号が吹き通って行った11月の初めの事でした。

10時にお店を開けて、門先の掃除をしたのです。どこから飛んで来たのでしょうか、沢山の色づいた木の葉が、吹きだまりや溝の中に積もっていました。

 小半時が経って、お店の準備をしていた頃、ドアーを開けて二人の男性が入ってきたのです。一人は50歳台半ば位でしょうか、鳥打ち帽をとった時、頭の毛が少し薄いように見えました。

 もう一人は、目鼻立ちのハッキリとした、彫りの深い顔立ちでした。目つきが鋭く、年齢は40歳前後でしょうか。こう見えても男の年齢は案外と分かるものなんです。自分が同性だからでしょうか? それに引き替え女性はよくわかりません。

 それはさておき、中年の男が黒い手帳のような物を背広の内ポケットから取りだして、ちょっと控えめな感じで私に示しました。

『朝から失礼いたします。私どもは、県警の安永と岩城と申します』『ああ、ご苦労様です。私は、このパブの経営者、井筒 修です。今日は何のご用件で?』と応対致しました。

『ちょっとあそこのテーブルお借りしてもいいでしょうか?』と安永と名乗った男が言った。二人をテーブルに案内して、私はカウンターの中に戻った。ちょうど朝のコーヒーが入った時だったので、お茶でも飲みながら話を聞く事にしたのです。

 ジャモウとランジェはストーブの薪束の上で丸くなって眠っている。でも私には彼らが眠っているとは思っていない。これでも『維摩』に5年もいるジャモウなどは、ここに入って来る人間を見ただけで、彼らにとって好ましいかそうでないかを瞬時に判断する能力を持っている。

 私にはその仕草を見ただけで、アニマル・インスピレーションが見て取れるのです。今まで何度も彼らの直感力に助けられた事があった。それは良きに付け、悪しきに付けではありましたが・・・。

 今日の彼らは、『警戒ランクC』を表しています。ちょっとおっかない人達とでも言いましょうか。私は、コーヒーをテーブルに運んだ。『何もありませんが、私の朝の一服に入れました。どうぞ』とさりげなくすすめた。

『いやあ、申し訳ありませんなあ。ご迷惑を掛けたようで』そう言って安永氏はコーヒーを引き寄せた。岩城と名乗った若手の男は、そのままじっとしている。安永氏が一口飲んで、今日の訪問の主旨を告げる事になる。

 果たして県警の刑事と名乗ったこの二人は、「ジャズパブ維摩」を何の用件で訪ねて来たのでありましょうか。その雰囲気からすると、なにやら『事件』のにおいがするのです。ジャモウやランジェの目と耳も、じっとテーブルに注がれています・・・・。

2013年5月25日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・生まれたてのキアゲハ <標高 624m>

【キアゲハのおでまし】



この子が飛んで来たのは 昨日の朝8時頃でした暖かい日差しの中で ちょっと心もとない飛び方でした 

焼いた芝生の上に舞い降り じっと羽根を休めています よく見ると前翅(ぜんし)がまだ完全に伸びきっていません 羽化して間が無いようでした

『ゆっくりと休んで朝の太陽光を受ければ 大丈夫だよ』とこえを掛けてやりました 写真を撮り終えたとき この子は初夏の風に乗って舞い上がったかと思うと 一気に屋根を越えてOK牧場の方に飛んで行きました 良かった!

(庵主の日時計日記:自然と私)より

2013年5月24日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ガーデンの仲間たち <標高 623m>

【みんな仲良し】


庭のなかにはいろんな仲間が住んでいます 雪ウサギの夫婦
の『カナヤマ』さんです まだ冬毛がそのままのようですよ


ここには野ウサギの『ホロップ』さんがみんなを守るように庭を見つめていますよ 雪ウサギさんと話しているようですよ


あらっ! ニホンカナヘビの子供の『ホノカ』ちゃんも春の陽気につれられて遊びに出て来ましたよ
可愛い手が見えていますね お母さんは木の根っこの穴にいるって言っていました 

そういえばさっき シマヘビの『スイング』さんが 薪の上で日向ボッコをしていました 縞模様がとっても美しいのに感心して じっと見とれちゃいました

(庵主の日時計日記:自然と私)より



2013年5月22日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・画廊【馬岩(バロック)】 <標高 622m>

親しくおつきあいをしているGorou N 氏より素敵な写真が届きました それは新潟県十日町市 星峠の棚田の風景です
余りの素晴らしさに写真を眺めていて 思わず「合掌」したほどでした

そこで画廊【馬岩(バロック)】に展示し 『にほんの里100選』に選ばれた星峠の棚田の荘厳なる美を残したいと思います






(拡大写真はクリックをして下さい)

2013年5月21日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・春の香りが顔を出した <標高 621 m>

【山ウド(独活)】


雪が消えて半月が過ぎた ウドが生える場所に地面を割って
山ウドが姿を現した 朝露を浴びて一気に葉を開き 陽の光をいっぱい受けてグンと伸びる


柔らかい羽毛をまとって茎は日ごと太くなっていく 放っておくとあっという間に背丈は1mにもなるのだ 


地面より30センチくらい伸びたところで根を掘って収穫する

独特の香りと苦味 そのシャキッとした歯触り

茎は酢みそで食べてよし すまし汁の具にも最適 葉は天ぷらにする ちょっとおしゃれに茎を短冊に切って 「山ウドのスパゲッテ」もなかなかのもの 

これも全部穫らずに残しておくのが来年の収穫に繋がるのです

(庵主の日時計日記:自然と私)より  

2013年5月20日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 43 <標高 620 m>



『暁子さん、気仙沼如何でした、楽しかった?』とハヤマさん。『とっても、でもちょっぴり哀しかった』『哀しかったって!どうして?』。

そう言いながらハヤマさんは、庵主様の方に目をやった。『ちょっと、庵主様、あきちゃんを泣かせたの?どうして』『いやあ、あたしは何にも、していませんよ。ただ・・・』『ただ・・って?』『一緒のお部屋でね、フフフ、これにやあ 困ったね』。

『違うんですよ、ちょっとだけ庵主様のお世話をさせて頂いたの』と暁子さん。『私から言おう。実は私の旅行の目的は、お墓詣りだった』『庵主様のご先祖の?』といっしゅうさん。

『いや、そうじゃあないんだ。昔のしりあいのな』『ああ、お友達?』と麻沙美さんがニコッと微笑みながら言った。『若気の過ちじゃ、女じゃよ。面目ない』と庵主様。

『そんな事ないは!庵主様は、しずさんを心底愛しておられたわ』とあきちゃんが言います。『しずさん?その方は庵主様の・・奥様?』と、ハヤマさんがちょっと小声で庵主様を下から見上げるように聞きます。

庵主様から一通りのお話しを聞いて、なんだか「ジャズパブ維摩」にはメランコリックなムードが漂いました。

『みなさん、私からお話しがあります』と、マスターのいっしゅうさん。『1123日には、ここにおられる浜ちゃん事、浜裕次郎さんと新谷暁子さんが結婚されます』二人に向かって一斉に拍手が贈られました。

二人が立ち上がって深く礼をしました。『仲人の労を庵主様ご夫妻がおとりになります』そこでまた大きな拍手がおくられました。

『もう一つおめでたのお話しです。新在家甲六師匠と疾風真麻さんが来年の春に、これもめでたく結婚のご予定です』みんなの驚きの歓声が維摩に響きました。『さあ、皆様グラスをあげましょう。乾杯の音頭を不肖、わたくすがとらせて頂こう』そう言って、庵主様はグラスをもって『カンペ〜イイ』と妙な掛け声を上げられた。

『皆様、私からもお知らせがあります』とまこっちゃんが言います。『来る1210日、日曜日。みちのく割烹、「気仙沼」を開店致します』『それは、おめでとう』。といった祝福の声。

『お店はどちらで?』と興味津々の甲六師匠。『はい、宝塚の清荒神の近くです。小さなお店ですが、とってもしっとりとして、これは長年の僕の夢でした』『庵主様のお住まいの近くでしたか?』とマスター。

『ああ、すぐ近くじゃ。以前より仕事場にと思って蓬莱山清澄寺の麓の林の中に置いてあった家屋に、誠さんがちょっと手を入れたのじゃ』『あそこならさぞ静かでしょうね』とマスター。

『まあ、隠れ割烹とでも言おうか、自然の中で四季の移ろいを感じながら、酒を酌み、陸奥(みちのく)の食を味わい、楽しい会話をする。まあ割烹の神髄じゃろう』とは庵主様の解説であります。

『開店の前日、129日は内覧会として前夜祭を予定しています。皆様に是非お足を運んで頂きたいと思って』とまこっちゃん。『やった!』と女性陣が一斉に声をあげた。

そうこうする内に、気仙沼より届いた鰤のお刺身がテーブルに並ぶ。誠さんの差し入れで三陸王酒『両国』の純米大吟醸酒『亀鶴』が提供される。まるで、今夜は気仙沼での『青葉』の再現である。ジャモウとランジェはちゃっかり、庵主様のお膝の上にいます。ランジェを『よいしょ』と看板娘さんが抱き上げました。

ランジェは、看板娘さんのリュックの中で、揺られながら歩いた「迷い猫」の日を思い出していたようです。『みゃ〜う』とないて、胸の中に顔を埋めた。庵主様のお膝の中から、ジャモウがおじゃこを舐めながらそれを眺めています。

幸せ一杯の「維摩」の夜でありました。そんな事があって11月がやってきた或る日の事、目つきの鋭い、コート姿に鳥打ち帽を被った二人の男が、海岸通「ジャズパブ維摩」のドアーに手をかけたのです。