2013年7月5日金曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・竜の垂らした涎(よだれ)2 <標高 664 m>



【P im P Story (ありそでなさそな話、なさそでありそな話)】

「竜の垂らした涎(よだれ)」



『庵主先輩、私がここインド洋に来ていますのは、世界的にみても極上のお宝であり、世界の香料カンパニー垂涎の的であります、竜涎香(りゅうぜんこう)を何としてもGetせねばならない宿命的なものを感じての行動なのですよ』

なんとも前時代的な表現ではありますが、充分彼の気持ちは伝わってまいります。私も少しは調べてみました。昔から中国では龍(りゅう)は深海の中でも最も深い深淵と呼ばれるところで寝ていると言われています。その龍がうたた寝をしている時に垂らした涎(よだれ)の香とかいて竜涎香と言われています。

ところが実は竜なんてのは、架空の動物ですから涎を垂らすはずはありません。その実体はなんと病気を持ったマッコウクジラが造り出す、特殊な脂肪、人間で言うと胆石のようなものなのです。

みなさん、マッコウクジラは今や世界で一番大きな肉食ほ乳動物ですね。その保護には特に留意されております。このマッコウクジラが食べているのがあの巨大・お化けイカの「ダイオウイカ」なのです。海洋冒険物語によく出てまいります。

マッコウクジラとダイオウイカの果てしのない死闘。誰も見ることの出来ない水深3000mの超深海での出来事なのです。このマッコウクジラは、海面から3000の深さの光の届かない深海まで、なんと一時間ほどの潜水時間で潜っていくのです。

そして大好物の10mもあるダイオウイカを探して、長時間の格闘の末なんと口から呑み込んでしまうのです。ダイオウイカもそう簡単にやられはしません。あの長い足を使って、マッコウクジラを責め立て、締め付け、その巨大なシンバルのような吸盤はマッコウクジラの体のあちこちに、生々しい傷痕を残すのです。



呑み込んだダイオウイカなどの身は消化されますが、竜涎香の塊にはときどき「カラストンビ」と呼ばれる、イカやタコのあの固い口の部分が入っている事があるのです。マッコウクジラの肛門から排泄しずらいカラストンビを、なにがしかの分泌物が包んでしまい、その塊(脂肪、ロウの様なもの)として出来た可能性もあるのです。



もしそのまま消化系に残ってしまいますと、カラストンビの尖った先で、腸を傷つけ潰瘍などを引き起こすかもしれません。詳しいことはまだ判っていないのです。


このマッコウクジラ、特殊な能力を持っていまして、エコーロケーションと言って潜水艦のように音で獲物を探す能力があるのです。また音を圧縮してダイオウイカに当てると大きなダイオウイカがしびれて動きを鈍らせて、食べてしまうという秘密兵器も持っているのです。すごい生き物なのですよ。

さてそのマッコウクジラの体内で長い時間かけて作られた「竜涎香」と呼ばれる物質は、なにかのひょうしにマッコウクジラの体内から排泄されて、大海原を漂い始めるのです。20061月のこと、オーストラリアの南部で15Kgもある「竜涎香」が発見されました。当時の相場で、1グラム当たり20米弗(ドル)しましたから、ざっと見積もっても当時のレート換算で言いますと、日本円で三千万円もするお宝を得た幸運な人がいたのです。

まさに金に匹敵する貴重品なのです。それがなぜ人間の目に触れるところに出現するかと言いますと、海流に乗って海を漂っているからなのです。そしてある日、海岸に打ち上げられるのです。その期間は、数年から十年余りを海面に漂っていて太陽にさらされて、空気にふれて酸化し、波に揺られてその品質が徐々に良くなっていくのです。

ですから長く漂っていた「竜涎香」ほど高値で取引されるのです。Getされるものは、海面に浮いているものが拾われるケースと、海岸に打ち上げられたものが拾われる場合があるのです。

私(流一平)は、このロドリゲス島周辺の海域に人知れず流れ続けているその「超お宝」を求めて今日もクルーザーを走らせて、じっと海面をみているのです。この暑さ、ビールなど飲んでも即汗になってしまうのです。

やっぱり日本の「麦茶」に限りますね。ちょっと塩を放り込んで煮出した麦茶、このお茶の威力で念願の「竜涎香」を見つける事が出来るでしょうか?この続きはまた後日。遥かロドリゲス島より流一平がお届けしました。

(庵主の懐かしのフィクション集より)

2 件のコメント:

  1. ウーンまさに壮大な冒険ですね。大海原にただようマッコウクジラの排泄物を探して麦茶を飲みながら舟でただよっているなんて普通の男ではヤル気にならないですね。然し拾い上げることが出来たら数千万円になるわけですから、金鉱探しのようなものですね。男のロマンに生きられる人もこの世にはいろいろいらっしゃるものですね。

    返信削除
  2. 小川 洋帆 様

    こんばんは。

    今日も一日、雨が降っています。
    アジサイの鮮やかなブルーの色に、はっと驚いたことでした。
    竜涎香を求めて世界の海へ出かけて行く、これも男のロマンと言えばそうなんでしょうね。

    ボクなどは「ルリボシヤンマ」の写真を撮るのに注力しているのですから、なんとスケールの違いなのでしょう。でもそこには、お互いに夢を追い求めるという感動のStoryがあるのですから、なんでも有りなのでしょうね。

    ではまた、お元気で。

    返信削除