2013年3月31日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 33 <標高580m>



さて話を『維摩』に戻そう。庵主様一行が気仙沼に向けて出発していった後、疾風真麻さん達の劇団は、安曇川麻実さんの演出で最後の追い込み練習に入っていた。今夜も二人は練習が終わった後、『維摩』にきてカクテルを飲みながら頭と体を休めている。

その傍でジャモウとランジェが気持ちよさそうに眠っている。海岸通りの楓の葉もそろそろ色着いてきていた。

そんなところへ珍しく『アクアマリンKobe』のフラナガン社長と海原沙織里さんがやってきた。『ミナサマ、コンバンワ』そう言いながら、社長は沙織里さんに入って来るよう促した。『紹介しておきましょう。新入社員の海原沙織里です』

小麦色の肌、ショートカットのヘアースタイル。目が大きなキュートな女性である。集まっているみんなにペコッと頭を下げた。小さなカメオのペンダントが胸元に揺れた。『どうぞこちらへ』とハヤマさんと麻実さんが彼女を挟むように座った。カウンターに美しい三つの花が咲いたようである。

『トラデイショナル倶楽部 六甲、開店おめでとうございます』。と「維摩」を代表して私がご挨拶をした。フラナガン社長は、赤髭を振るわせてビールのグラスを上げた。みんなでお祝いの乾杯をする。

 グレンミラーの『茶色の小瓶』が、優しく酒とパイプタバコの香りを運んでくる。三人の女性はさっきから『倶楽部六甲』の話で盛り上がっている。ここで新しいレッスンが始まった事が話題になっている。沙織里さんがその責任者として会員の指導に当たっているとの事だ。

『メデイテーション ビューラー マインド アンド ボデイ』と称している。『M.B2』とみんなは呼んでいる。『心と体を美しくする瞑想』とでも言ったらよく判るだろうか。

海原沙織里先生にその一端を説明願いましょう。『そうですね、今までも瞑想を取り入れた、心と体のケアーはありました。でもこれは根本的に違っているのですよ』『へ〜そうなん』と麻実さん。

『例えばM.B2-Zを説明します。これは日本の座禅を取り入れた瞑想空域なんです』『瞑想空域?』とハヤマさん。『そうです。座禅を厳修する禅道場とその空間をバーチャルで呼び出し、その空域に超入して癒しを得るのです』と沙織里さん。

『なんだかめっちゃ難しそう』『難しくありませんよ。ガイダンスにそってリラクゼーションすればOK』とフラナガン社長が身振りを交えて話す。私も急に興味が湧いてきて、沙織里先生の話をカウンターごしに聴く。

ジャモウとランジェも目を覚まして、じっとカウンターを眺めている。そこへ『すじ玉丼糀屋』の看板娘さんも入って来て、沙織里先生の課外レッスンをダイジェスト版として受ける事になった。

さて『アクアマリンKobe』のフラナガン社長の導入した『M.B2』とは。そしてその癒しの効果と評判とは? 沙織里先生曰く・・・。

メタフィジカル ヒーリング(心的治癒力)と訳すようです。心の持ち方で体調を整え、病があればそれを本来あるべき姿に戻す。即ち『癒す』のです。時には、奇跡的な事象が顕れて『医学を超えた世界』などとテレビの特番などで紹介される事もあります。

でもそれは決して『奇跡』ではありません。『三界唯心所現』(さんがいはゆいしんのしょげん)と言う仏教の言葉がありますが、まさにその真言(真理)が心の中を通って、この現象界に投影したに過ぎないのです。このメカニズムについては次回にお話し致しましょう。そう言って沙織里さんは胸の前で合掌した。まるでタイの女性の様に。


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