2014年1月2日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・花一輪 恋の笹舟 <標高 835 m >



花一輪・恋の笹舟(三十七)

道諦・歩む・八正道・正見(しょうけん)



しばらくした頃、富子婆が寺にやってきた。梅の花が咲き出し、ウグイスが初鳴きを聞かせてくれた気持ちの良い朝であった。かすりの野良着とモンペを履いて頭には姉さんかぶりをしている。



『和尚様、お早うございます。尼様はお元気になられましたよ』『富子さん、その節はまことにお世話になりました。あの熱では一つ間違うと、肺炎などになるのではないかと心配しました』『もう朝晩のお勤めも、畑にも出ておられるようで、順心様になにとぞ宜しくとのことでございました』。



この村の中で、男と女の違いこそあれ日々御仏につかえる身は同じ。尼の体の具合をこれほどまでに心配したことはなかったのだ。春禰尼もそれについては同じであった。順心の存在を今までにも増して頼りにしたのである。そこには御仏に仕える一人の人間を超えた男と女の「愛」の萌芽でもあった。



そんな麗らかな春の日が続いていた頃、一通の書状が送られてきた。差出人は、松山市砥部町、厳修山・真言宗、永聖寺内、慈恵と書かれてあった。この手紙の主は順心が昨年の秋訪ねた永聖寺で、一週間を共にした壮年僧の名前であった。あの時、是非一度、順心の寺を訪ねたいと熱っぽく語っていた慈恵であった。
松山の寺と違って、ここ久遠実相寺は山の中の小さい寺である。周りには36軒の家があるだけである。こんな辺鄙なところに彼を迎えるのは心苦しい気持ちがしたが、そのまま、あるがままを見て貰おうと順心は考えていた。できれば村の住人に集まって貰って、慈恵の法話を是非とも聞いてもらおうと考えたのである。

2 件のコメント:

  1. 良き友人を持つと、折に触れて自分以外の魅力ある法話を村人に聴かせることが出来て一層仏法を広げることに役立ちますね。有難いことだと思います。

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  2. 小川 洋帆 様

    お早うございます。今朝は冷えましたね。此の冬一番の冷え込みです。いまの外気温度は−4.7℃です。外に出て震えました。でも良いお天気です、放射冷却でしょう。

    風邪など引きませんよう、充分ご注意下さい。

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