2014年12月10日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・【男達の黄昏・・そして今(13)】(標高 1034 m)


【男達の黄昏・・そして今(13)】

 その週の土曜日の午後、いつものメンバーが『明石屋』に集まってきました。今日は久しぶりに周さんを囲んで、土曜競馬を楽しもうという事になったのです。それと同時に今後の『黄昏斑』の行動計画の打ち合わせをする目的でした。とは言え飲み会が目的のような感じもプンプンするのですが。

 最初に哲じいが報告をします。『島田巡査はん、最近よう会いまっせ。結構頻繁に巡回してくれてます』『そういやあ、パトカーもちょくちょく見るなあ』と沼ちゃん。泥棒もそれを察知して、動きがとれないのではないかと言った楽観論で盛り上がっているようです。たった一人、周さんはじっと聞いていましたが『ちょっと気になる事があるのですが』と言いました。それはこんな事なんです。

 『盗みに入られた家から縫いぐるみが持ち去られている事、どう考えても腑に落ちないじゃん』『たしかにけったいな事ではありますな』と哲じいが言いました。『ウ〜ン』と腕組みをして周さんは天を仰いでいます。『まあ、あんまり深刻にならんと!一杯いきましょや』と徳さんが合いの手をいれました。ビールをお互いに注ぎ合ってグラスをあげたところで、『周さん、今日の甲山特別、ええのおりますのか?』と沼ちゃん。『このレースは相当難しいじゃん』『あんたでも難しい事おまんのか?』と哲じいが驚いたように言った。周さんが、持参のパソコンを開いてインターネットを立ち上げました。『明石屋』の鶴さんもパソコンを使っているのでインターネットが出来るのです。画面には、今日のメインレース『甲山特別』の出馬表が色鮮やかに映っています。

 出走時間はPM3:40分、まだ時間は十分にあります。きょうはじっくり周先生の解説を聞いてみたい、それがみんなの気持ちでありました。鶴さんがワラビの煮物、若竹の煮付けなどを肴に出してくれます。徳さんが振り向くようにして『熱燗もらおか、こんな結構なあてが出てきたらやっぱり酒やで』と一人盛り上がっています。その間、周さんのパソコンには彼のコラム『馬にきけ』に、沢山のコメントが寄せられています。周さんの『今日の掘り出し馬』のコーナーは特に人気があるのです。黄昏斑のメンバーも、スポーツ新聞や専門紙に目を走らせています。ビールもお酒もこうして楽しく、ゆっくりと飲むと健康に繋がると言うもの。これで競馬がうまく当たったら最高なんですがね。その時、暖簾を分けて一人の女性が『明石屋』に入ってきました。年の頃はと言うと、さあて40歳前後でしょうか。

 外の景色が見えるテーブルに付きました。鶴さんが大きな湯飲みにお茶を入れて運んでいます。髪の長い目鼻立ちのはっきりした所謂『宝塚ジェンヌばり』の容貌であります。じっと外の景色を眺めていましたが、『ビール下さい』とカウンターに声をかけました。鶴さんがビールと山菜の煮物をテーブルにはこんでいます。女性は美味そうにビールを飲み干しました。そして手に持っていた本を広げてじっと読んでいます。さて黄昏斑のメンバーはと言いますと、それぞれが競馬の予想に余念がないようです。

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