2015年1月6日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・【男達の黄昏・・そして今(19)】(標高 1050 m)


【男達の黄昏・・そして今(19)】

 『バラバラの出来事がなんか繋がっていくようですな』と沼ちゃん。その時アマミヤ マチコと名乗ったジェンヌがこんな事を言った。『市の保育園、それも山麓保育園をわざわざ選んで縫いぐるみを寄贈する、ほかにも近い民間の保育園もあると思うのですが、なにかそこに関係のある人物かも・・・』『アマミヤさん、いや〜鋭い観察力、恐れ入りました。』と哲じいが感動したように言った。この女性、なにか不思議な感じがする。あの周さんを囲んでの土曜競馬の日と言い、今日の黄昏斑の集まりの日と言い、偶然とは思えない出会いなのです。なにか私達の行動を見透かしているようなのです。

 金曜日の午後、哲じいは久しぶりに3丁目の交番に島田巡査を訪ねていました。最近頻繁にパトロールをしている巡査への激励と感謝を込めて庭に咲いた花を持参していました。そしてその翌日には『明石屋』さんで、黄昏斑の打ち合わせ会を開くので今日までの情報を聞かせて貰うのが目的でした。島田巡査は土曜日は他の用件で参加出来ないとの事でした。彼の言うには、最近は特に変わった事がないとの報告でした。

 ただ市警察の香山雄三部長刑事が、この黄昏斑の活動を好意をもって見ており『何とか犯人検挙を勝ち取りたい』と言っていますと伝えてくれました。そんな話の合間に普段の四方山話などをして交番を後にしたのでありました。島田巡査はたしか未だ独身でした。あのような真面目な男性を世の女性はどうして放っておくのだろうか、などと思いあぐねながら坂道を上って行きました。最近はこの坂を上るのが結構大変なのです。途中で一息付かなければ家までたどり着けないのも度々でした。四月のあの日、この坂道を傘を差して上ってきた男も途中で一休みしていたに違いないのです。鶴さんがその男を見たと言ったのはその時だったのです。彼も寄る年波には勝てない中年の男性であったのでしょうか?

 『こちら夕陽丘3丁目交番の島田ですが、香山部長おられますか?』『はい、香山です』『島田ですが、先ほど5丁目の山岡さんが来られまして、明日明石屋で皆さん集まられる予定とか』『よし、判った、ご苦労』。哲じいが交番を後にした頃、こんなやり取りがあったようであります。

 『山麓保育園に縫いぐるみを寄贈しているという事は、ここの市民なんでしょうな』と徳さん。『断定は出来ませんが、おそらくそうでしょうね』と周さんも同意しました。『もしその保育園に行った男と、鶴さんが見かけた男とが同一人物だと仮定しての話ですが、キーポイントはそのデイバッグね』とアマミヤさんが言った。『またまた、さすが〜〜。』と哲じい。なんかアマミヤさんに下心でもあるのでしょうか?『じゃあ、みなさんこれから、三つの要素を頭に置いて周りを眺めてみませんか!』『三つの要素、なんだす周さん、それは。』と哲じい。

『はい、まず中年の男性、中肉中背、いつもデイバッグを背負っていてそれにはマスコットが付いている。』全員で今日から、このファクターを満足する男性を見つけようと言う結論になったのです。夕方、黄昏班のメンバーは三々五々と帰って行きました。アマミヤマチコさんも歩いて坂道を下って行きます。明石屋の鶴さんがボソッと独り言を言いました。『なんか鍛えてるような歩き方やな、ただ者ではないで・・・。』

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