2012年4月2日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ ・言葉のアーカイブス <標高317m>

アマン・ガマン・ゲロッポのお話 9

ゲロッポ小父さんが、アマンとガマンに話しかけました。それは小父さんがアマンたちと同じ子供の頃のことでした。
ゲロッポさんは10年ほど前にこの水車小屋の近くの水たまりで生まれました。兄弟は全部で5匹いましたがそのうちの3匹は生まれて直ぐに死んでしまいました。
あとの1匹は今も元気で、ここから少し離れた泉のそばに棲んでいます。たった1匹の妹のトノサマガエルでした。

トノサマガエルは大きな強いカエルでした。ゲロッポさんもその様に、大きく強いカエルとして育っていきました。この水車小屋に住み出してもう長い年月が過ぎましたが、とっても怖い経験を何度もしていました。

青大将には何度も食べられかけたものでした。最も怖かったのは、あのヌートリア(注:1)との戦いでした。ヌートリアは大きなネズミのような生き物です。それはある夏の暑い午後の事でした。これからはゲロッポさんの話口調で再現してみましょう。

『ワシはその日、ここから少し上流の小川で体を洗っとったのじゃよ。その時すぐ近くの葦(あし)の蔭でガサゴソという音が聞こえた』。アマンもガマンも喰い入るようにゲロッポさんを見つめています。

『その時風が吹いてきてな、なにか獣(けもの)のにおいがしたのじゃ。それはみんなが怖れている、あのヌートリアじゃった』。アマンもガマンも初めてきく名前でした。聞いただけでもゾッとする名前でした。

『しかしワシは、そのけものに見つかってしまった。そいつは全身の毛を逆立てて、鼻のあたまにいくつもの筋をたてて大きな二本の歯をむいてうなりよった』。ゲロッポさんは、まるで自分がヌートリアになったかのように怖い顔をして見せたのです。

『きゃ〜、怖い!』とアマンは叫んで、ガマンの後ろに隠れたほどでした。ガマンも怖かったのですが、その名前の通り、我慢(がまん)していたのです。

『そのヌートリアはワシに向かって迫ってきよった。鋭い爪を立てて、二つのカミソリのような歯をこう剥(む)いてな。ワシはとっさに飛び上がって奴の後ろに廻ったのじゃ』。アマンもガマンも手に汗を握る感じでその話を聴いています。

『ところが奴もくるっとこちらを向いて真っ赤な大きな口を開けたのじゃ。もう少しで喰われるところ、とっさにワシは側にあった葦(あし)の茎を取るが早いか、それをそいつの口の中に差し込んでやった』『それで・・・どうな・・ったの』。ガマンが震えるような小さな声で聞きました。

ゲロッポさんは、一歩前に乗り出してこう言いました。『その葦の茎が奴のノドチンコに当たったのじゃ。たいそうなクシャミを始めよってな、ワシを襲うどころでなくなったのじゃよ』『よかった・・。おじさん』。アマンがガマンの後ろで小さな声で言いました。

『それからじゃ、ワシがヌートリアを怖くなくなったのは。あのノドチンコを葦の茎で突いてやれば奴らに勝つのじゃよ。お前達もよ〜く覚えておくのだ。きっといつか役に立つ時があるからな』そう言ってゲロッポさんは、横にある小さな泉の水をゴクリと飲みました。

勉強の部屋:ヌートリア(注:1)

この動物を見たことがある人、手を上げて!と言いますとほとんど手が上がらないのです。ヌートリアはビーバーに似た大型のげっ歯類なのです。簡単に言うとネズミの親分のようですね。

全体の大きさ(尻尾を別にした長さ)は43〜64㎝ほどになります。体重もなんと6〜10Kgにもなるようです。大きなオレンジ色の前歯はネズミと同じように伸びています。

棲み家は、湖や沼地や川の岸辺です。日本で一番多く棲んでいるところは岡山県といわれています。大阪・兵庫 京都・奈良などにも棲んでいますよ。寿命は6〜10年だそうです。毛皮はカワウソのように上質で以前は襟巻きに使われたとの事です。

人間に噛みついたり、悪ふざけはしないようです。飼育している人もいるとのことです。

食べる物は草が主ですが、魚やカエルなどを食べている所を目撃する事があります。

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