2012年7月10日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・言葉のアーカイブス <標高399m>

【バック・トウ・ザ・パースト(時を戻して)】第3回


日本旅行協会 『旅』一月号、昭和七年一月一日発行を読みながら。「バック・トウ・ザ・パースト(時を戻して)」

ここで松浦泉三郎氏の「旅のインチキ點景」なる文章をご紹介します。昭和711日発行、日本旅行協 「旅」より。

客間も新築、風呂場も新造、女中も美人揃ひと、眞しやかに述べたてる客引きの巧言につられて、ではと投宿してみると、何から何まで嘘八百だったのに憤慨して、オイ最前の言葉は?と詰問すれば、番公いけ酒亜々々(しゃあしゃあ)と、ヘエ、あれは隣のことで、ヘッヘッヘッ・・・で揉手叩頭。

是は、勿論今でも類似のことがないではないが、小咄に名残を止める、昔の宿屋の、明かなインチキ振りだ。では現代(昭和7年当時)では?に答えて、旅に絡る、そして、旅で遭った、インチキの微苦笑風景を二ツ三ツ、御披露しておあとと交替といふことに・・・。

この眞理・・・

暑中休暇を目前に控えた中學の上級時代のこと。新聞紙上にこんな三行廣告を發見した。

▲ 告満天下學生諸君 全國無旅行の新發見秘訣無料傳授
 
即刻乞問合 返信料實費拾錢封入要す 東京小石川區小日向臺町xx番地 大日本無錢旅行研究會本部

暑休利用旅行費用捻出に就いて頭をひねってゐた最中のことでもあり、早速二錢切手五枚封入紹介・・・待つこと三日、返信来、取る手おそしと開封したら、ポロリ、一枚のザラ紙が落ちた。そして、嗚呼、その新聞ザラには、なんと次の如く、謄寫版刷りの、拙い文字がかすれてゐたではなかったか・・・・!

 無錢旅行秘伝傳虎之巻
錢にて往復なし得る範囲を旅行すべし

但し是は斷じて筆者の創作ではない。同種のものに、「水泳秘訣傳授」「難病全治秘訣傳授」等々の廣告詐欺もあった。恐らく、何れも同一人の所爲であろう。驚いたことに、この詐欺漢は、拾錢切手の掻集めに依て、一時相當の財を積んださうな。濱の眞砂と共に、盡きざるインチキ廣告の一ツ。


ちょいと一服




【庵主の一言】

いつの時代でも、インチキ、◎◎詐欺なるものが横行していたようです。やっぱりそれに引っかかる、気の良い人もいるようで・・・。

この文章をタイプアップする時の最も難点は、本漢字を入力する事でした。でもやってみて当用漢字より遥かに心地よい深みのある文字であることを感じたのであります。

(庵主の思い出日記:時を戻して より) 続きます



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