2012年12月9日日曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 11 <標高511m>




『コングラチュレーション、ハッピーニューイヤー!!』と叫びつつ入って来たのは、今年も自称タカラジェンヌ、ハヤマさんこと、 疾風真麻さんです。
細身の黒のスラックスにエナメルの靴。ミンクの毛皮の襟巻きの付いたロングコートと言った格好。センスは抜群との評判である。

『いっしゅうさん、辰兄いさん、庵主様、明けましておめでとうございます』。そう言いながら、下げていた袋を差し出した。年末から海外旅行をしていたとか。行き先は『ハワイ』。まあ独身の女性は今一番のリッチな人種なんですね。

『ジャモウちゃんには、ハイ!』 と言って本場のビーフジャーキーのプレゼント。その時奥の方から『みゃ〜ん』といってジャモウが声を上げた。『ほらおめでとうと言っとるぞ』 と庵主様。ジャモウ語が解るお人である。

『いっしゅはん、今度の土曜日ここ空いてるか?』『藪から棒にどないしはったんです』『いやこの前ちょっと株で儲けてな、一席もうけよ思てえな』『正月早々景気のええ話やないですか、夕方から貸し切りでんな』『そないしてくれるか。いつものメンバーに寄ってもらお』 と辰兄いはまんざらでもない様子だ。

『庵主様、土曜日ご都合如何です?』『私は、サンデー毎日でっさかい・・・』『私も参加していいんやろか?』『何言うてんのや。綺麗どころが来な面白い事ないやないか』『嬉しい〜。辰兄い、好きや!』『ほんま現金なおなごやで』と、辰兄いがあきれた顔をして笑った。

ジャモウはビーフジャーキーを貰って、舐めたり、咬んだりせいだい楽しんでいる。ガラス窓にスズメがとまってジャモウを見ている。外には冷たい風が吹いている。生田神社の方から、お神楽の音が風に乗って聞こえてくる。『維摩』の中はまるで春のような暖かさ。辰兄いと庵主様は、『呉春』の一斗樽を開けて桝酒で飲み出した。私は明石の魚棚(うおんたな)の初買いで仕込んだアナゴを早速炭火で炙った。この世のものとは思えんええ匂いがして、『ジャズパブ維摩』の七草正月は今始まったのです。私は毎年の恒例により、年初のBGMは、ベニー・グッドマンの『Don’t Be That Way』をピックアップした。

昨年の11月、メーカーに依頼していた『真空管プリメインアンプ』が、なんとか今日の日に間に合ったのである。特別仕様のため一ヶ月以上の日数はやむを得ない。みんなには種明かしをせずのオープニングである。やはりハンドメイドの良さ、音の温度と性質が違うのである。

まず暖かい音、そして聞く者の心に訴えかける優しさ。これこそがこの種の真空管仕様の売りである。特にジャズピアノの音をひろい出す迫力と、ピュアー感は最高である。Benny Goodmanのクラリネットから流れ出すその音色はまさに神技であろう。Don’t Be That Way. 1955325日、New York City.のライブ演奏である。

まず音が出たとき最初に気付いたのは、誰あろうジャモウであった。その毛で覆われている耳がピンと立ったのである。『マスター、音変わった。どしたん?』 と言ったのは、自称タカラジェンヌ、疾風真麻(はやかぜ まお)さん。『分かった?』『何となく優しい、真空管アンプ!』『どんぴしゃ!』 と私。

楽しい会話が飛び交う『維摩』の初春。このお店の素敵なところは、マスターこと『いっしゅはん』のお人柄でっしゃろな、とは辰兄いの言。嬉しい事を言ってくれる。それと疲れた体と心がほっと癒される。ここがみんなの、優しさと、暖かさのトワイライト空間なのでしょうか。

庵主様と辰兄いは、甘い蜜に寄ってくる昆虫のように『呉春』の薦被りにかぶりつき。いやはや困ったもんだ・・・。ジョルジュ・オシャッケ(ジャモウ語で、お酒飲みたいよ)。ジャモネンゴロ・・・zzz・z(おやすみなさい)



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