2012年5月21日月曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・言葉のアーカイブス <標高353m>


アマン・ガマン・ゲロッポのお話 25

さすがのツバサ君もこの上昇気流(注:1)には手も足も出ませんでした。風の吹くままにただ羽根をいっぱいに広げてただよっていたのです。


その時でした。なんと山のてっぺんによく出る乱気流(注:2)にツバサ君は巻き込まれてしまったのです。ツバサ君は大きく上に持ち上げられたかと思うと、また一気に真逆(まっさか)さまに、ものすごい勢いで落とされました。

アマンもガマンも必死でツバサ君の背中の羽毛にしがみついていますが、その風の力はとても小さなアマガエルの手ではどうにもならないほどの強さでした。

『アマ〜〜〜ン』とガマン君が必死で叫んでいます。なんとアマンがその風の力で浮き上がって、大空に吸い込まれてしまったのです。少しの間小さな手と足が動いているのが見えていましたが、それもやがて雲や霧の白い流れの中に入ってしまって何も見えなくなってしまいました。

『ツバサ君、アマンが飛ばされてしまった!!』と背中でガマンが大きな声で叫んでいます。でもこのうず巻きのような乱気流は、まだ若いフクロウのツバサ君の力ではどうする事も出来なかったのです。

その時ツバサ君にはお父さんの声が聞こえて来ました。それはこう言っています。

『風の力にさからうな、そのままじっとしているのだ。そのうちにきっと抜け出せる時が来る。それまでじっと待つんだ』。それはツバサ君が飛ぶための訓練をお父さんから受けていた時になんども教えられていた事だったのです。

ツバサ君は大きな目をしっかりと開いて、雲の流れを見ています。ガマンもツバサ君の背中にしっかりとつかまって、空一面をぐるっと見渡していました。

勉強の部屋] 上昇気流(じょうしょうきりゅう)注:1

上に向かっての空気の流れを言います。この空気の流れの中では、天候が崩れやすいと言われています。ツバサ君達を吹き上げたこの気流は、空気が山に沿って上昇する時に起こるのです。

乱気流(らんきりゅう)注:2

この気流は、強い風が山頂を超えるとき、上空の風下側によく発生します。時には、強い渦(うず)の中心に、一瞬、雲が発生することもあります。その周辺ではなんと風速6080メートルという突風が吹くこともあるのです。飛行機の事故はこんな時に起こります。(富士山自然探訪参照)

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