2012年5月24日木曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・言葉のアーカイブス <標高356m>


アマン・ガマン・ゲロッポのお話 26



アマンはその頃、ふわっとした雲の中に浮かんでいました。どうやらそのあいだ気絶していたようでした。アマンの体はとっても小さくて軽かったので、風や雲に流され包まれて、まるで海の波間に浮かんでいる感じだったのです。

その時アマンの前にお母さんが現れました。アマンに優しくこう言ったのです。

『アマンや、大丈夫だよ。きっとうまく助かるからね。風や雲に逆らうのじゃないよ、じっとしておいで。きっとその時が来るからね・・・そう信じて・・・』そう言って、お母さんは、す〜っと消えていきました。

ツバサ君は風の静まるのをまっています。ガマンもあちらこちらとアマンの姿を探しているようです。その時でした。山の陰から大きな一羽の鳥が現れたのです。

それはツバサ君のお父さんの友人で、白雁(はくがん)のコットンさんでした。コットンさんはツバサ君を見つけるが早いか、すごい早さでグングン近づいてきました。

『ツバサじゃないか。こんなところでいったいどうしたのだ!』と大声で言いました。体じゅうの羽根が強い風でバサバサと毛羽だっていました。ツバサ君は今までの事をコットンさんに素早く話しました。

『よ〜し、私がそのアマンちゃんとやらを探してこよう。お前達はあの谷間の蔭に入っていなさい。あそこなら大丈夫だ』そう言って、コットンさんは雲のなかに飛び込んでいったのです。

その頃アマンは急に体が冷たくなってくるのを感じていました。この空の上は、まるで氷の中にいるようでした。このまま凍って死んでしまうのではないかと思ったりしたのです。

でもお母さんが、きっと助かると言ってくれた言葉を何度も思い出していました。

しばらくすると急に雲のなかに小さな穴があいて、下の景色が見えました。そこには今まで見たこともないような深くて黒い森が広がっていました。相当風に流されてしまったようです。そして今度は森の方に引っ張られるように落ちて行ったのです。




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