2012年8月18日土曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・言葉のアーカイブス<標高426m>

日本旅行協会 『旅』一月号、昭和七年一月一日発行を読みながら。「バック・トウ・ザ・パースト(時を戻して)」  第 


國旅行心得帳」なる小能四點氏の文章を拝見する事に致しましょう。日本旅行協會「旅」昭和七年一月號より。

北海道——奥様、無頼漢には等々

奥様にとっては炊事が苦痛なところで、漬物石は寒いし、中味は凍ってゐるし、まるで泣面をして漬物を出して來るといふ圖はよく見受けられる。美味求眞組所謂惡食家には、アザラシの肉から馴鹿(トナカイ)の胎兒こいつは素的にうまい、せわた背の腸だ鮭の背骨についてゐる黒血で、この鹽辛で熱いところをキューと一杯やるときは舌の行衛が怪しまれる。鮭のハラワタの鹽辛めふんこれまた捨て難い。

寫眞好きには、嚴冬の霧華は是非旅行家の記念の撮影をして帰る値打ちがある。樹が白く結氷した状景は、花咲爺ではないが手を拍ってその美觀を讃へずにはおかないだろう。

ナンセンスな諸君にとっては、冬の北海道は實に退屈なところであり、無頼漢にとってはこんな自由な天地はない、狩獵家にとっては下手でも多少の獲物はあるし、勇敢であれば熊は何時でも狩獵家諸君を大掌を擴ろげて待ってゐて呉れるし、野菜好きには、キャベツや、殊に馬鈴薯の美味しさは北海道が天下獨歩だ。

スポーツマンにとってはなだらかな斜面、至るところに純白な處女地あり、冒險家にとっては大雪山頂にコロボックル(蕗の葉の下の人種)と格闘するのも興深いものであるだらう。

<庵主からのお知らせ>

さて次回から新しい記事をご紹介致しましょう。とは申せ、昭和7年1月1日発行、日本旅行協 「旅」より、棟方銀嶺氏の「静かな奥伊豆温泉」なる一文をご紹介致します。早速棟方銀嶺氏の経歴などを調べてみましたが、私の浅い知識では見つけ得ませんでした。ではお楽しみに。



オオハンゴンソウが晩夏をつげています

(庵主の思い出日記:時を戻して より)続きます






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