2012年9月25日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・言葉のアーカイブス<標高 456m>


日本旅行協会 『旅』二月号、昭和七年一月一日発行を読みながら。「バック・トウ・ザ・パースト(時を戻して)」 第 13 



日本旅行協會「旅」、昭和七年二月號より

「鼻に梅ヶ香、舌に名物」二月から三月へ掛けての散策                         近藤 飴ン坊



梅の水戸には名物が多い、曰く、梅ようかん、水戸の梅、紫錦梅(しきんばい)などが梅に關するもので、其他吉原殿中。工藝品では好文亭燒、寒水石細工、萩筆等々、名物の多いのでは全國都市中屈指であらう。梅ようかんは別に特色がないが、水戸の梅は餡を紫蘇巻にしたもので、外辛く内甘く、オツな菓子である。



吉原殿中と五家寶



吉原殿中は名前だけでは、どんな菓子か想像がつかない。熊谷で賣ってゐる五家寶と同じものである。水戸で吉原殿中熊谷では五家寶、そこに如何なる關係があるかと云ふに、熊谷の五家寶屋が水戸屋を名乗ってゐる通り、先祖は水戸から出たのである。水戸の藩士で仔細あって兩刀を捨て熊谷で五家寶の店を開き町人になった、製品五家寶は水戸の吉原殿中を模したもので、原料は全く同一、熊谷の方が形が大きいだけである。


天狗納豆も名物である。小粒納豆とも云って小粒だ。水戸から平、湯本、仙臺、ずっと先の盛岡の寺町納豆まで豆は小粒になる。名物と誇る値打ちのある程天狗納豆は納豆好きによろこばれてゐる。

好文亭燒は偕樂園燒ともいふが、現代の窯では良品は製しない。黄門様が民の困苦を忘れぬ記念にと燒かせて座右に置いたものを耕作人形といひ、それを模した農人形を今も賣ってゐるが玩具に過ぎない。

常磐公園の好文亭に賣店があるので好文亭燒とも云ふのであるが、此の賣店では偕樂園燒のほかに笠間燒も賣ってゐる此の方に上物がある。花瓶、急須、抹茶々碗に雅到(がち)あるものがある。郷土人形は千葉せんなり屋子の考案で、一名漫彫とも云ひ彫刻へ漫畫味を應用したもので、磯節人形などはイササカリンリンとして好評を博してゐる。

鰻と待合とアンカウ

鰻は老舗なか川がある、江戸前の鰻を材料として東京の一流どこに匹敵する味を提供して呉れる。大工町の加奈女(かなめ)、みやこが鮨の方の大關。天ぷらは振るわない所。

待合の多いことと大きな構へをしてゐる事も名物の一つであろうが、アソビは高い所と言はれてゐるので、こないだ値下問題から料理店待合と藝の對抗争議があって、女將と藝が口をとんがらかして大いに揉めた。

水戸の鮟鱇料理は全國に冠たる名物料理で梅見ごろがシーズンである。鮟鱇のトモ酢と云って、肝味噌で食べるのだが此の肝味噌が傳授事で、その上手下手で名物にもなるし、名物でもなくなる。

鮟鱇の肝を味噌で伸ばすのだが、最初に味噌を竹の皮へ薄く伸ばして火で焙り、それと肝を摺鉢であたるのである。鮟鱇はチリにして、そのトモ酢を附けて食べるのだが實に珍味無類。東京で作らせて見たが、どうも水戸で食べるやうにいかない、そこが又郷土料理の値打であらう。梅を見に行ったらば試食を是非お勸めする。

水戸銘菓 吉 原 殿 中 (2)

水戸藩の奥女中、吉原が作らせたと言われる、水戸古来の銘菓です。米の餅を焼いて膨張させかるいあられにして、飴で柔らかく丸い棒状にかたちづくり、きな粉をまぶした香ばしいお菓子です。

<庵主よりの一言>

簡単につくり方を紹介しよう。五家宝

 材料は、もち米ときな粉と蜜(水、砂糖、水飴)。添加物などは一切使わない。もち米は一晩水につけてから蒸し、搗いて餅にし、それを薄くのばして2mm角に切り、釜で焦がさないようにふっくら煎り上げる。ちょうどポン菓子のポンのようにしっかり膨らんでいる。そして蜜とからめて“種”の出来上がり。種を包む皮は“着せ皮”といい、これはきな粉と蜜を合わせたしっとりしたもの。
まず種をラグビーボールくらいの大きさにまとめ、のばした着せ皮ですっぽり包み込む。そしてのし板で直径2cm弱まで、着せ皮は1mmほどの厚さになるよう、時折きな粉をふりかけながら細い棒状に伸ばす。その後5.5cmの寸法に切り、たっぷりきな粉をかけて一晩置いて味を落ち着かせる。そして包装して出荷、というのが全工程だ。

(庵主の思い出日記:時を戻して より)続きます

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