2013年4月30日火曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・ジャズパブ維摩 39 <標高 605 m>



割烹『青葉』は玄関を入ると、小さな庭が設えてある。京都の精進料理の店にあるようなしっとりとした感じの庭である。通された部屋はその庭がガラス障子越しに眺められる十畳ほどの和室に、大人が8人は座る事が出来る『掘り炬燵』が切られてある。欅の一枚板で出来たテーブル、そこに二つのガスコンロ。

大きなテーブル型掘り炬燵で、鍋を囲める特別仕様である。少し離れたところに、長火鉢が置かれてある。すでに鉄瓶からはお湯が湯気をあげて部屋の空気をちょうど良い具合に加湿してくれている。

まこっちゃんは今夜、割烹『青葉』の、にわか板前さんとして、ご主人の手伝いをしている。12月にオープンする宝塚清荒神のみちのく割烹「気仙沼」の事前勉強かも知れない。あきちゃんも、ご主人とは知り合いらしく、『おさんどん』をかって出ていた。

大きめの土鍋と南部鉄のすき焼き鍋が用意された。一つは魚すき用。もう一つはなんと仙台牛と松茸のすき焼き。岩手がすぐ近いので、前沢牛も出される。気仙沼は松茸の産地だとは聞いていたが、今日のお料理がそうだとは・・・。みんな感動している様子。

魚すきの魚はというと、牡蠣、あかまんぼう、鯛、きちじ(きんきとも言う)、手長エビなどが大皿に山盛りになってドンと置かれた。どれも地元で獲れた活け物である。この中でも逸品の『きちじ』、500メートルをこえる深海で獲れる珍しい魚である。関西ではまずお目に懸かれない。赤い鯛に似ている。

手長エビ、これも最近では多くは獲れない。やはり魚は新鮮そのものである。お酒が運ばれてくる。三陸王酒『両国』の純米大吟醸酒『亀鶴』、大吟醸酒『喜祥』の最高級が並ぶ。

青葉のご主人、山際清之助(やまぎわせいのすけ)氏が末席にお着きになった。庵主様、新谷誠さん、新谷暁子さん、運転手の源さん。総勢5名が今夜のメンバーでありました。今夜のホスト、庵主様が座り直されてご挨拶を述べられる。流石に年の甲、行き届いたご挨拶に一同身が引き締まった。やはり若い頃この気仙沼にて生活をされていた心模様がそこかしこに窺い知れるのである。

庵主様は、一升瓶を横に置いて大振りのぐい呑みになみなみとそれを注がれた。それに習って、全員それぞれに酒を酌んだ。乾杯の音頭を、まこっちゃんが取った。掘り炬燵の柔らかい暖かさが、何とも言えず心身をリラックスさせてくれる。

今夜は大いに呑み、かつ食べましょうと一気に盛り上がっていった。もどり鰹の刺身が運ばれて来る。あぶらが乗ってとろけるような旨さである。『ほや』が庵主様の前に並ぶ。『海のパイナップル』と言われている。よく似ているからでしょう。ここ宮城県が全国シェアーの7割を占めていると、清之助氏の説明である。

東北に旅をされた時は是非『ほや』を肴に酒を飲んでもらいたいと清之助氏は話す。ホヤは夏場が最も美味いのだそうです。その味覚を形容するならば、爽やかな潮の香りと、すっきりとした甘味と飽くのない苦味のコラボレーションが口一杯に広がりみずみずしい旨みだけが最後に残る味わいとでも表現しましょうか。

外はもう冬の夜になってしまった。鍋からあがる湯気でガラス障子が曇っている。松茸の素敵な香りと、大吟醸酒の絶妙の取り合わせ。こんな幸せな夜は皆経験したことがないようでした。

庵主様は、「しずさん」と「仙太郎ちゃん」の事を思っているのか、口数は少なく黙々と酒を口に運んでおられるようだ。そんな中にも、まこっちゃんは新規開店のお店の事を、山際清之助氏に色々と相談をしています。

あきちゃんと運転手の源さんは、食味倶楽部に徹している今宵でありました。


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