2011年9月21日水曜日

酔花 風酔 自然法爾のおきどころ・言葉のアーカイブス <標高139m>

時刻表 JR全線版を使って旅に出よう!庵主の草枕・夢旅日記】

 番外編・怖いかシリーズ (その一) 女は怖いか?

湖西から若狭路を旅してきました。福井県敦賀市を散策したあと、実はある場所を訪ねたのです。そのご報告を忘れておりました。山陽路の旅を始める前に一通りの顛末について記しておきましょう。 それは武生市であります。敦賀市から福井市へ抜けていく間にある町武生。海岸線が美しい越前の市の一つでありました。2005101日をもって、武生市と今立郡今立町が合併して『越前市』になったのです。




さてこの旧武生市出身のある女性の話であります。彼女は私の関係しておりました会社に勤務しておりました。もとは大手の銀行のカウンター嬢として支店の顔でもあったのです。私が会社に勤務しておりました時は、総務課にいて社員のお世話係のような仕事に加えて、経理の事務も担当していました。心の優しい聡明な美人でした。

さてある日の夕刻、私が仕事を終えて地下鉄の駅に着いたときの事、彼女が突然声をかけてきたのです。

『常務、お帰りですか? お家はどちらですの』『阪急沿線だ。T市だよ』『じゃあ、私とは反対ね』『君は?』『天王寺方面、まだそこから乗り換えです』

そう言ってクスっと笑った。そこには会社で見る彼女の姿とは全く違ったキュートな感じの女性がいたのです。『君、時間は大丈夫かね?』『時間って?』『お茶でもどうかと思ってさ』『良いんですか?嬉しい〜!』そう言って手を胸のところに組んで首をすくめて顔を振った。

地下鉄を本町で下車。地下道を通って、とある店の前に着いた。そこにはこんな暖簾が掛かっています。『ゆ』・・・。

『ええ〜っ、ここお風呂屋さん?私困ります』不安そうに私を見上げた。私はそのまま暖簾を分けて中に入ったのです。正面には下足入れが設えられています。昔の銭湯にあった、木製の下足用鍵の付いた下駄箱なのです。

彼女も後ろから付いてきています。私は15番の扉を開けて靴を入れました。手にどっしりとした木製の下足札が握られています。彼女はお隣の16番。ガラス障子の戸を開けて中に入ると、少し薄暗いが、カウンターがあります。

『いらっしゃいませ、何名様でしょうか?』と、かすりのモンペをはいた若い女性が声を掛けてきました。『2名です』『掘り炬燵テーブルで宜しゅうございますか?』『それが有り難いな』と答えると、係の女性は後ろも見ずに、小走りに前を行きます。

私達は部屋の奧にある静かなテーブルに案内されました。手荷物を隅に置いて、早速掘りごたつに足を入れて座ったのでした。

『ははは・・驚いたろう』『いやですわ、てっきりお風呂屋さんかと思っちゃった』と屈託無く笑う彼女にの顔には、まだ少女のような面影が見え隠れしている。

(次回に続きます。お楽しみに)




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